完璧主義への警鐘
しかし本書の真価は、完璧な母親像を押し付けるのではなく、むしろそこからの解放を促している点にあります。「完璧な母親になる必要はありません。私だって今でも感情的になることがあります」という告白は、多くの母親にとって救いとなるでしょう。
松谷さんは「大切なのは、自分の言葉が持つ力を知り、意識すること、そして間違えたときは素直に謝ること」と結論づけます。この現実的で実践可能な指針が、本書を単なる理想論に終わらせない重要な要素となっているのです。
文体は親しみやすく、まるで友人との会話のような自然さがあります。専門用語を避け、具体的なエピソードを豊富に盛り込んだ構成は、育児に疲れた母親でも最後まで読み通せるでしょう。
一方で、やや感情的な表現に偏る傾向があり、客観的なデータや専門家の見解がほとんど引用されていない点は物足りなさを感じます。また、母娘関係に焦点を当てているため、息子を持つ母親や父親にとっては応用しにくい部分もあるかもしれません。
読後の余韻
本書を読み終えた後、多くの読者は自分の言葉遣いを振り返ることになるでしょう。それは決して自己嫌悪に陥るためではなく、明日からの子育てをより意識的に行うためです。
「7つの習慣」から始まり、最終的には「母から娘へと受け継がれる、最も尊い贈り物」という希望的なメッセージで終わる本書は、母親たちに勇気を与える一冊として評価できます。
特に思春期の娘を持つ母親、日々の子育てに疲れ果てている母親には一読をお勧めしたいです。完璧を求めず、意識することから始めるという、この現実的なアプローチが、多くの母親の心を軽くしてくれるはずです。
