●「店からすれば、全部がオススメ」
同様に「オススメは?」という質問も、好意的に受け取れないと、ある洋食屋の店主が明かす。
「オススメを聞かれるたびに、『自分の食べたいものがオススメです』と返しています。店からすると、全部のメニューがオススメなんですから。注文くらい自分で決めてほしいですね」
実にさまざまな意見があったわけだが、「おまかせ」「オススメ」を歓迎するお店では、当然のことながら大前提があると、店主たちは口を揃えた。
それは、提供したメニューに対し、もし客が文句を言ったとしても、交換や返金には応じられないということ。確かに、自分で「おまかせ」「オススメ」と言ったのだから、クレームを付けるのは理不尽極まりない。
筆者にはこんな経験がある。以前に焼き鳥屋で「おまかせで5本」を頼んだとき、5本中3本が皮だったのだ。少し困惑したが、もちろん何も言わずにいただいた。仮に5本すべて皮だったとしても、文句は言えない。「おまかせ」にはこのようなこともあるのだと学んだものだった。
●店と客の関係性は見直されている
「おまかせ」「オススメ」を歓迎するお店も、そうでないお店もあることがわかった。後者の場合、客側の姿勢に問題があることも推察できた。「おまかせ」「オススメ」は、店側に全権をゆだねているように見えて、客側の無責任かつ自分本位な頼み方にもなりかねないのだ。
お客様は神様だと長らく言われてきたが、カスハラに屈しない気運の高まりや条例の整備によって、店と客の関係性が見直されていると感じる。
どちらが上・下ではなく、互いに歩み寄って、良好な関係を築ければ一番いい。今度「おまかせ」「オススメ」で注文するときは、お店への配慮や敬意を忘れずに伝えようと、取材を通じて強く思った。

