●会社に対する責任追及も可能
なお、報道(日経新聞、10月24日)によれば、本件では、女性は元同僚男性だけでなく、使用者である佐川急便に対しても使用者責任(民法第715条)に基づく損害賠償を求めて提訴したようです。
使用者責任とは、使用者は被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う、というものです。
今回の裁判で、佐川急便は女性と和解したそうで、裁判所による具体的な判断は示されていません。
● まとめと注意喚起
弁護士ドットコムにも「男性上司から、常に下の名前で『ちゃん付け』で呼ばれるほか、頭を撫でられたり、『抱きしめてあげようか、これセクハラになるかな?』と言われたりといった行為を受け、鬱っぽい症状が出ています。これはセクハラになるでしょうか?」という相談が寄せられています。
相談者の具体的な事情ははっきりしませんが、上の裁判例に照らせば、セクハラとして慰謝料請求の対象となる可能性が高いと思われます。
職場におけるハラスメントが多くの職場で起こりうる身近な問題です。発言者に悪意がなかったとしても、受け手が不快に感じたり、心身に影響を及ぼしたりすれば、それは違法なセクハラとして法的責任を問われる可能性があるのです。
ご自身ではセクハラかどうかの判断が難しかったり、セクハラだと思っていてもなかなか強く「NO」とはいえないものだと思います。会社内の相談窓口や労働基準監督署などのほか、場合によっては弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。
(弁護士ドットコムニュース・弁護士/小倉匡洋)

