楽しかった、あのころ
仕事を終えて家に戻れば、またドタバタが待っている。
「ママー、今から変身するから見てー!」
「ママー、抱っこ!」
「ママ、今の見てたっ?」
「ママー、金曜日飲み会になったからメシいらないわ」
幸せだけど、自分自身のことだけを考える時間が、最近あまりにも少ない気がする。
帰宅すると、義母が煮物を作って冷蔵庫に入れておいてくれていた。その煮物を温め、市販の餃子を焼き、ごはんをよそう。ミリには幼児向けの肉だんご。
これで十分だ、と思う一方で、チサトの豚バラ大根が頭をよぎる。うちはうち、よそはよそ…。夕食を終え、子どもたちを寝かせてから食器を片付け、洗濯物を畳む。
時計の針はあっという間に23時。
「…週末、来るんだよなぁ」
寝室に入る前に、もう一度スマホを確認してしまう。チサトからのメッセージは、間違いなくそこにあった。チサトとは幼なじみで、小学校に入る前からの友達だ。中学校まで同じで、チサトが大学進学で地元を離れるまで、毎日一緒だった。それでもしょっちゅう遊んだし、社会人になってからも、年に2回くらいは旅行をした。文字通りの親友だった。
チサトが念願の赤ちゃんを授かった時は、抱き合って喜んだ。なのに。
…今は少し、煙たい。しんどい。
私が彼女を迷いなく親友と呼べてたのは、いつのころまでだったのかな。…何言ってんだろ、寝なくっちゃ。明日も早いんだから―――。
あとがき:お弁当に重ね見る、余裕のない自分
自分のお弁当は、ありものを入れただけ。会社員としての自分には自信があっても、主婦としての自分には自信が持てないナツミさん。親友の手間のかかったお昼ごはんが、彼女の心をかき乱します。比べたくないのに、比べてしまう。あなたにも覚えがありませんか?
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: 光永絵里
(配信元: ママリ)

