食生活の改善は心筋梗塞予防において基本的で効果的な対策です。バランスの取れた食事により動脈硬化の進行を抑制し、心血管リスクを大幅に軽減できます。特に、野菜や魚を豊富に取り入れた食事パターンや適切な塩分制限は、血圧やコレステロール値の改善に直結し、心筋梗塞の予防に大きく貢献します。

監修医師:
滝村 英幸(医師)
2006年3月聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業
2006年4月聖マリアンナ医科大学病院初期臨床研修医
2008年4月済生会横浜市東部病院循環器内科
2016年12月総合東京病院循環器内科
2022年4月総合東京病院心臓血管センター循環器内科心臓血管インターベンション科科長
【資格】
日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医
遺伝的要因と家族歴の重要性
心筋梗塞の発症には遺伝的要因も大きく関与しており、家族歴がある方はより注意深い予防策が必要です。
家族歴が示す遺伝的リスクの評価
家族に心筋梗塞の既往がある方は、そうでない方と比較して発症リスクが1.5〜2倍高いとされています。特に、一親等の血縁者(両親、兄弟姉妹、子ども)に心筋梗塞の既往がある場合、遺伝的リスクは顕著に高まります。
遺伝的要因による心筋梗塞のリスクは、単一の遺伝子異常によるものではなく、複数の遺伝子多型の組み合わせによる多因子遺伝が関係しています。これらの遺伝子は、コレステロール代謝、血圧調節、血液凝固、炎症反応などに関与し、動脈硬化の進行や血栓形成のリスクに影響を与えます。
家族歴がある方は、若い年齢から生活習慣に注意し、定期的な健康チェックを受けることが重要です。また、家族の発症年齢よりも10歳早いときから積極的な予防策を開始することが推奨されています。遺伝的リスクは変更できませんが、生活習慣の改善により発症リスクを大幅に軽減することは可能です。
先天性疾患と心筋梗塞の関連性
特定の先天性疾患や遺伝性疾患は、心筋梗塞のリスクを高めることが知られています。家族性高コレステロール血症は、LDL受容体の遺伝子異常により血中コレステロール値が著明に上昇する疾患です。この疾患では、若年期から動脈硬化が急速に進行し、30〜40代で心筋梗塞を発症することも珍しくありません。
そのほかの遺伝性疾患として、糖尿病の家族歴が強い家系などがあります。これらの疾患では、血管構造の異常や代謝異常により心筋梗塞のリスクが高まります。また、血液凝固異常症や血小板機能異常症なども、血栓形成リスクを高める要因となります。
先天性疾患や遺伝性疾患が疑われる場合は、専門の医師による遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けることも検討されます。これにより、個人のリスクをより正確に評価し、適切な予防戦略を立てることができます。また、家族全体での健康管理やスクリーニング体制を整えることも重要です。
まとめ
心筋梗塞は生活習慣と密接に関連した疾患ですが、適切な知識と継続的な予防策により、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。症状の早期認識、危険因子の把握、生活習慣の改善を通じて、一人ひとりが自身の健康を守ることができます。
定期的な健康チェックと医療機関との連携により、心筋梗塞の予防と早期発見に努めることが、充実した人生を送るための重要な基盤となるでしょう。
参考文献
厚生労働省令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 厚生労働省:循環器疾患について 日本循環器学会:急性冠症候群ガイドライン国立循環器病研究センター:心筋梗塞とは
国立循環器病研究センター:糖尿病
日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン

