発達障害を理解するうえで欠かせないのが、認知面や行動面に現れる特徴です。注意力や記憶、感覚の特性、そして日常での行動パターンに共通点が見られます。ここでは、発達障害の方によく見られる特徴を整理し、それらがどのように生活に影響するのかを説明していきます。

監修医師:
三浦 暁彦(医師)
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
発達障害の主な特徴
発達障害の特徴を理解することは、適切な支援や環境調整を行うために不可欠です。ここでは、認知面と行動面の特徴について詳しく説明します。
認知面での特徴
発達障害の方の認知面での特徴は、情報処理の仕方に独特なパターンがあることです。まず、注意の向け方に特徴があり、一つのことに過度に集中してしまう「過集中」と、逆に注意が散漫になってしまう状態を繰り返すことがあります。過集中の状態では、周囲の声が聞こえなくなったり、時間の経過を忘れてしまったりします。
記憶に関しても特徴的なパターンがあります。興味のある分野については驚異的な記憶力を示す一方で、日常的な約束や予定を忘れやすいという傾向があります。また、聴覚的な情報処理が苦手で、口頭での指示を理解することが困難な場合があります。視覚的な情報の方が理解しやすいため、図やイラストを使った説明の方が効果的です。抽象的な概念の理解も苦手とする方が多く、比喩的な表現や曖昧な指示を理解することができず、具体的で明確な指示が必要になります。
時間の経過を適切に把握することが困難で、5分のつもりが30分経っていたり、1時間の作業時間を3時間と見積もったりすることもあります。また、同時処理が苦手で、複数のことを同時に行うことが困難です。
感覚過敏や感覚鈍麻も認知面での特徴の一つです。音や光、触覚などの感覚に対して過敏に反応したり、逆に鈍感だったりします。これらの感覚の特性は集中力や学習能力にも影響を与えます。
行動面での特徴
行動面での特徴は、日常生活において目に見えやすい部分です。多動性のある方は、じっとしていることができず、常に体のどこかを動かしていたり、落ち着きがなく見えたりします。大人になると身体的な多動は減少しますが、内的な不安感や焦燥感として現れることがあります。
衝動性も重要な特徴の一つです。思ったことをすぐに口に出してしまう、行動する前に結果を考えることができない、買い物で計画的でない購入をしてしまうといった行動が見られます。これにより、対人関係でのトラブルや経済的な問題を抱えることもあります。
ルーティンへのこだわりも特徴的です。決まった順序や方法で物事を行わないと不安になったり、予定の変更に強いストレスを感じたりします。このこだわりは安心感を得るための方法でもありますが、柔軟性に欠けるという面もあります。
社会的なルールや暗黙の了解を理解することも困難で、場に応じた適切な行動を選択することができず、周囲から浮いてしまうことがあります。また、自分の行動が他人にどのような影響を与えるかを予測することも苦手です。
まとめ
発達障害は決して珍しいものではなく、適切な理解と支援があれば、その方の持つ能力を十分に発揮することができます。大人になってから発達障害に気づいた場合でも、遅すぎることはありません。自分自身の特性を理解し、適切な環境調整や支援を受けることで、より良い生活を送ることが可能です。周囲の理解と協力も得ながら、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現が重要です。
参考文献
厚生労働省 発達障害の理解のために
厚生労働省 発達障害の特性(代表例)
日本発達障害学会

