
今田美桜が主演を務める連続テレビ小説「あんぱん」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。同作は、「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかしと妻・暢をモデルにしたオリジナル作品。戦前から戦後と激動の時代を生きた“ハチキンおのぶ”こと朝田のぶと、夫となる柳井嵩があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでの人生を描いた愛と勇気の物語だ。
「あんぱん」の物語も第25週の放送を終え、いよいよ最終週の放送を待つのみとなった。WEBザテレビジョンでは、主人公・柳井のぶを演じる今田美桜にインタビューを実施。クランクアップしたばかりの今田に、役柄、そして「あんぱん」への思いを語ってもらった。
■のぶと嵩の2人のシーンで終われたことがすごく良かったです
――クランクアップした瞬間のお気持ちをお聞かせください。
最後のシーンはカメラが3台ある中、一連を一回で撮りました。嵩とのぶにとってとても大事な、涙があふれ出てしまうようなシーンでしたので、感情がすごく高まって。最後に「OK」をいただいた瞬間はホッとしましたし、のぶと嵩の2人のシーンで終われたことがすごく良かったなと思っています。
――クランクアップから一週間がたちましたが(取材時)、心境の変化はありますか?
撮り終えたという達成感は感じていますが、1年間ずっとキャスト、スタッフの皆さんと会っていたのでまだまだ撮影が続くような感覚もあって。終わった時はどういう感情になるのか、実感はあるのだろうかと撮影中からみんなで話すこともありました。ですが、先日クランクアップしたことをニュースにしていただき、そしてそれを見たたくさんの方から「お疲れ様」と連絡をいただいたんです。そうしたお言葉をいただき、いまは心晴れやかな気持ちになっています。
――一年間を振り返ってみて、長かったですか?それともあっという間でしたか?
撮影中は、クランクアップを迎える2025年8月末が遠いなと感じる瞬間もありましたが、振り返ると本当にあっという間で、全部ひっくるめて楽しかったです。
■のぶは、本当にその言葉に救われたと思います
――第25週、「アンパンマン」のミュージカルが大成功。それまで「アンパンマン」の人気が出ない中でも、のぶは「アンパンマン」の物語を何度も子供たちに読み聞かせしてきました。読み聞かせをし続けたのぶの気持ちをどのように感じていましたか?
やはりのぶは、“おじさんアンパンマン”の時からアンパンマンの一番のファンなんですよね。誰に何を言われようとも、嵩さんの描いたものが素晴らしく、みんなに知ってほしいという一心だったと思います。最初の頃はなかなか受け入れられないものがあり、お芝居ではありますが、子供たちの演技もとてもリアルでグサッと刺さる瞬間もありました。
そんな中、私自身、撮影を通し「アンパンマン」は大人向けの作品でもあるということをすごく感じて。一方で、子供たちも純粋に「アンパンマン」の優しさを感じている。子供も大人も一緒なんだということを実感し、アンパンマンのすごさを改めて感じました。
――のぶと嵩、晩年の夫婦の関係性をどのように捉えていましたか?
一つ、のぶにとってのターニングポイントがあったと思っています。子供ができなかったこと、何者にもなれなかったことなど、のぶが抱えてきた葛藤を嵩に吐き出すシーンがありましたが、それを嵩さんは「のぶちゃんは、そのままで最高だよ」と受け止めてくれた。のぶは、本当にその言葉に救われたと思います。その言葉があったからこそ、のぶは自分らしく生きやすくなり、“ここが自分の居場所なんだ”と思えたのだと。晩年は、嵩さんを支えるということが自分の誇りとなっていったのだと感じています。
――のぶと嵩の夫婦像から感じた夫婦の理想の形などはありましたか?
のぶと嵩はお互いに、自分にない部分を認め合って尊敬し合っていて。だからこそすれ違う瞬間もありますが、“お互い思い”な部分は本当にそっくりだなと思いますね。私の理想像を考えた時も、やはりお互いを尊敬し合うことがすてきだなと思いますし、自分自身が尊敬してもらえるように頑張りたいと思える、そんな二人はとてもすてきで理想だなと「あんぱん」の撮影を通して思いました。そしてのぶも嵩も、自分のためよりも誰かのために、という愛が大きい。結婚生活というものに限らず、人として誰かに思いやりと愛を持って接していきたいなと感じました。

■北村さんの新しい一面を知ることができたのかなと思います
――嵩を演じた北村匠海さんとは共演歴もありますが、“朝ドラ”を通して感じられた印象をお聞かせください。
今回は、幼なじみから夫婦になっていく役どころで共演させていただき、距離感が一番近い役だったと思います。だからこそ、これまでに見てきた北村さんの印象とは違う瞬間を見ることができました。すごく大人で何事も俯瞰でクールに見ていらっしゃる印象があったのですが、もちろんそういう部分もありつつ、意外とひょうきん者なんだと知りました(笑)。幼なじみであり、夫婦となる距離感だったからこそ知れた部分でもありましたし、“朝ドラ”という1年間の撮影だったことでより新しい一面を知ることができたのかなと思います。
――改めて、柳井嵩役が北村さんで良かったと感じた瞬間を教えてください。
1年間撮影をしてきた中で、もちろん楽しかった瞬間もあれば、迷ったり、難しいなと感じたりする瞬間もありました。そんな中で、北村さんはすごく周りを見ていらっしゃる方なので、自然とサポートしてくださいました。シーンについて迷い、「ここはどう思う?」と聞いた時も、いろいろと一緒になって考えてくださって。そういう時もとてもさりげなく助言してくださる方なので、尊敬していますし、最初から最後まで本当に支えていただきました。
――阿吽(あうん)の呼吸のようなものも出てきましたか?
そうですね。後半の方がよりアドリブなどもありましたし、(阿吽の呼吸が)あったと信じたいです(笑)。
■のぶと登美子は似た者同士だと思います
――嵩との結婚後、登美子との接点も多くなりました。のぶにとって登美子はどんな存在だったのか、また登美子を演じる松嶋菜々子さんの印象をお聞かせください。
のぶと登美子さんは、考え方は違う面もありましたが、のぶは登美子さんのバイタリティーの強さをとても尊敬していたと思いますし、登美子さんの気持ちも全く分からないという訳ではなかったと思うんです。口ではいろいろと言いつつも、登美子さんも嵩のことを思っている。その気持ちはのぶと一緒なので、アプローチの仕方は違いますが、似た者同士だなと思いました。
松嶋さんはすごくかわいらしい部分もあってとてもすてきな方です。物語前半で、登美子さんもいる中、嵩と千尋(中沢元紀)がけんかをして殴り合いになり、のぶが嵩をビンタするシーンがあったのですが、すごくいい音が鳴ってしまって(笑)。松嶋さんに「いい音が鳴ったね」と言っていただいて、うれしくなったのを覚えています。
――のぶ、蘭子(河合優実)、メイコ(原菜乃華)の3姉妹の関係性もとても印象的です。共演して刺激を受けたことはありますか?
3姉妹で過ごす時間は本当に楽しかったですし、2人ともすごくかわいく、のぶとしても癒されている部分がたくさんありました。河合さん、原さんお2人とも年齢は下ですが、年下には思えないほどしっかりしていますし、お芝居も、現場での佇まいでも刺激を受ける瞬間がたくさんありました。

■ のぶとして生きられているんだなと感じました
――“朝ドラ”のヒロイン、座長として意識していたことや心掛けていたことはありますか?
「あんぱん」という作品がとても優しく温かい作品なので、現場もそうでありたいなということは心掛けていました。以前、連続テレビ小説「おかえりモネ」(2021年)に出演させていただいたのですが、その時は1年間ずっと出演していたのではなく、撮影している期間とそうではない期間があり、そしてまた現場に戻るという形で参加させていただいて。その時に、久しぶりに行った現場で『おかえり』と温かく迎え入れてくださることがすごくうれしかった思い出があります。「あんぱん」も、久しぶりに現場にいらした方がホッとできるような空気にできたらと思っていました。
――のぶを1年間演じられて、のぶと一体化しているような、近付いているような感覚はありましたか?
たくさんあったと思います。カットがかかっても涙が止まらず、これはのぶとしてなのか、私自身としてなのかということが分からなくなる瞬間もあって。本当にのぶとして生きられているんだなと感じました。それはキャストの皆さん、スタッフの皆さんがそういう空気や環境にしてくださったことも大きいと思いますので、とても感謝しています。
――最後に、「あんぱん」を通じて、今田さんの中で変わったこと、成長したことを教えてください。
きっとこれから「あんぱん」の現場を離れ、違うお仕事に入った際に、成長したところや自身の変化を実感していくのかなと思います。1年間という長い期間、一つの役と作品に向き合うということはこの先もなかなかないことだと思いますし、「あんぱん」を経て自分に対しての自信が少しついたかなと思っています。

