「30分の運動」で心筋梗塞リスクを大幅低下? 医師が教える“心臓を守る運動習慣”とは

「30分の運動」で心筋梗塞リスクを大幅低下? 医師が教える“心臓を守る運動習慣”とは

定期的な運動は心筋梗塞の予防において極めて重要な役割を果たします。有酸素運動により心肺機能が向上し、冠動脈の血流が増加することで心臓の健康が保たれます。筋力トレーニングと組み合わせることで、より効果的な予防効果が期待できます。適切な強度と頻度で運動を継続し、心臓への負担を軽減することが大切です。

滝村 英幸

監修医師:
滝村 英幸(医師)

【経歴】
2006年3月聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業
2006年4月聖マリアンナ医科大学病院初期臨床研修医
2008年4月済生会横浜市東部病院循環器内科
2016年12月総合東京病院循環器内科
2022年4月総合東京病院心臓血管センター循環器内科心臓血管インターベンション科科長
【資格】
日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医

心筋梗塞予防のための運動習慣と身体活動

定期的な運動は心筋梗塞の予防において極めて重要な役割を果たします。適切な運動により心肺機能を向上させ、動脈硬化の進行を抑制することができます。

有酸素運動の心血管保護メカニズム

有酸素運動は心筋梗塞の予防に効果的な運動形態です。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を継続することで、心臓の収縮力が向上し、冠動脈の血流が増加します。また、運動により冠動脈の側副血行路(バイパス血管)の発達が促進され、心筋への血液供給能力が向上します。

有酸素運動の心血管保護効果は、多面的なメカニズムによるものです。運動により血管内皮機能が改善し、血管の拡張能力が向上します。また、血液中のLDLコレステロールが低下し、HDLコレステロールが増加することで、動脈硬化の進行が抑制されます。さらに、運動はインスリン感受性を改善し、血糖コントロールにも良い影響を与えます。

効果的な有酸素運動を行うためには、適切な強度と頻度の設定が重要です。目安として、中等度の強度(心拍数の50〜70%)で、週に150分以上の運動を行うことが推奨されています。これは、1回30分の運動を週5日行うことに相当します。

筋力トレーニングと心臓への負担軽減効果

筋力トレーニングは、有酸素運動と組み合わせることで、より効果的な心筋梗塞予防効果を発揮します。筋力の向上により日常生活動作が楽になり、心臓への負担が軽減されます。また、筋肉量の増加により基礎代謝が向上し、体重管理や血糖コントロールにも良い影響を与えます。

筋力トレーニングの心血管への効果は、血圧の改善、血管機能の向上、炎症マーカーの低下など多岐にわたります。特に、筋力トレーニング後の血管拡張反応の改善は、動脈硬化の進行抑制に寄与すると考えられています。また、筋力トレーニングは骨密度の向上にも効果があり、高齢者の転倒予防や生活の質の向上にもつながります。

効果的な筋力トレーニングを行うためには、適切な重量設定と実施方法が重要です。初心者は軽い重量から始め、正しいフォームで8〜12回反復できる重量を選択します。週に2〜3回、主要な筋群を対象とした筋力トレーニングを行うことが推奨されています。心疾患のリスクがある方は、運動開始前に医師に相談し、必要に応じて運動負荷試験を受けることが重要です。

まとめ

心筋梗塞は生活習慣と密接に関連した疾患ですが、適切な知識と継続的な予防策により、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。症状の早期認識、危険因子の把握、生活習慣の改善を通じて、一人ひとりが自身の健康を守ることができます。
定期的な健康チェックと医療機関との連携により、心筋梗塞の予防と早期発見に努めることが、充実した人生を送るための重要な基盤となるでしょう。

参考文献

厚生労働省令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 厚生労働省:循環器疾患について 日本循環器学会:急性冠症候群ガイドライン

国立循環器病研究センター:心筋梗塞とは

国立循環器病研究センター:糖尿病

日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン

配信元: Medical DOC

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