医療技術の進化により、卵子凍結の成績も向上しています。今回は少しでも卵子凍結による妊娠成功率をあげるための注意点について、 Shinjuku ART Clinicの阿部先生に詳しく教えてもらいました。

監修医師:
阿部 崇(Shinjuku ART Clinic)
平成12年川崎医科大学医学部卒業。平成13年日本医科大学付属病院女性診療科・産科 入局。平成21年医学博士号取得。平成22年日本医科大学付属病院生殖医療主任。平成23年加藤レディスクリニック勤務。平成26年Shinjuku ART Clinic 院長就任。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医、日本医科大学付属病院非常勤講師。
編集部
卵子凍結を行うには、どのような注意点がありますか?
阿部先生
まず理解しておいていただきたいのは、卵子凍結が必ずしも将来の妊娠や出産を約束できるものではないということです。年齢や個々の条件により異なりますが、海外の研究によると、採卵から出産に至るまでの推移は採卵率(89.9~96.9%)、凍結融解後に受精に臨める率(86.0~96.8%)、受精率(71~79%)、着床率(17~41%)、胚移植当たりの妊娠率(36~61%)となり、最終的に卵子1個あたりの妊娠率は4.5~12.0%と報告されています。そのため、卵子凍結を行っても、確実に将来の出産へ辿り着けるわけではないということには注意しておく必要があります。
編集部
ほかに注意点はありますか?
阿部先生
卵子をどれくらいの数凍結すると、赤ちゃんを得られるのかはわかっていません。凍結保存しておいた卵子数と一人以上の赤ちゃんが得られる確率を年齢層別に見ると、凍結保存卵子の数が多いほどその確率は上昇していきますが、年齢によってその確率は変わります。36歳未満であれば、20個の卵子があれば70%、25個あれば95%の確率で一人以上の赤ちゃんを得ることができます。しかし36歳以上なら、20個の卵子でも一人以上の赤ちゃんを得ることができる確率は50%ですし、それ以上卵子があっても出産率はあまり高くなりません。
編集部
まだわかっていないこともあるのですね。
阿部先生
そうですね。若い時に凍結した卵子で妊娠しても、高齢妊娠の場合、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった母体の合併症や、それに伴う胎児の発育遅延や早産などのリスクも高まります。また、凍結することは多少なりとも卵子への負担となりますし、費用の問題も重要です。そうしたこともすべて考慮して、卵子凍結を選択することが大切です。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
阿部先生
現時点で妊娠する予定はなくても、卵子の質と量は時間とともに低下していきます。卵子凍結は将来の妊娠を約束するものではありませんが、正しい知識を持ち、卵子凍結も自身のライフプランの一つとして捉え、考えていきましょう。
※この記事はMedical DOCにて<「卵子凍結の妊娠」と「自然妊娠」の成功や流産の確率に違いはある?【医師解説】>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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