「男の性欲、まぢキモい」… 令和の女性たちが 【性嫌悪】 をさけぶ “もう一つの理由” とは マチアプ時代が生んだ「階級意識」と「実利的戦略」

「男の性欲、まぢキモい」… 令和の女性たちが 【性嫌悪】 をさけぶ “もう一つの理由” とは マチアプ時代が生んだ「階級意識」と「実利的戦略」

性欲を毛嫌いする女性たち、その心理は

 「性欲のない彼氏が欲しい」「交際相手に性欲を自分に向けないでほしい」「付き合ったら絶対セックスしなきゃいけないの?」――。匿名で意見を発信できるSNSでは昨今、自身や他者の性欲を忌避する若年女性たちのつぶやきが散見されます。ただ遠ざけるだけでなく、強く嫌悪する主張が少なくないのも特徴。彼女たちが性欲を“汚いもの”“唾棄すべきもの”と捉える背景にはどのような心理があるのでしょうか。

 X(旧ツイッター)のタイムラインで見られるのは、「イチャイチャは好きだけど“やる”のは嫌い」「外に女作ってもらっていいので」と、セックス抜きの関係を望む声。また「プラトニックな恋愛がしたい」「私に性欲を向けない人しか好きになれないジレンマ」と、性欲を感じさせない相手に引かれる複雑な心境の吐露も見られました。

 これらの投稿は、性欲の介在しない恋愛こそ理想であり、あるべき姿と位置付けるもの。同時に「男の性欲キモい」と、他者(異性)の性欲へも嫌悪を向ける声が少なくありません。

 女性のこうした心情を端的に表す議論が2025年4月に勃発しました。通称「メロシコ論争」です。

 若い女性を中心に近年使われるようになった新語「メロい」(メロメロになるほど魅力的)を、男性の露骨な性欲表現「シコい」と同一視する意見を有名男性アカウントが発信したところ、女性ユーザーたちが一斉に強い嫌悪を表明したのです。「メロい」は胸キュン、憧れ、ロマンチックな魅力を指すもので、直接的な性的興奮や消費的な視線を向ける「シコい」とは全くの別物だとする意見が大勢。「断じて一緒にされたくない」「男の感覚で女性の心情を単純化するな」などの反論が相次ぎました。

 ただ、例えば成人した男性が10代の女性アイドルのファンを公言すれば「ロリコン」などの批判を向けられるのに対し、性別が逆の場合は「メロい」と表現され、「純粋な応援」「子どもの成長を見守る気分」と正当化される非対称性に対しては、男性側から欺瞞(ぎまん)を指摘する声も多数上がりました。

 こうしたX上の議論では、女性が自身の性欲の存在を否定し、男性の性欲を「キモい」と唾棄すればするほど男性側からの反発が増え、互いの解像度が上がらない実態が明確になっていっています。

実際に性欲の薄い女性も一定数はいるものの ※画像はイメージです

極端な自由恋愛市場が生んだ弊害について

 なぜ女性たちはこれほどまでに性欲を嫌悪するのか。社会的背景としては、教育の場や家庭内で性欲を「汚いもの」「抑えるべきもの」と教えられてきたことがあると考えられます。その源流でもある仏教や儒教の「欲 = 煩悩」といった価値観が、特に女性に強く内面化されていることも理由の一つに挙げられるでしょう。

 ただ、そうした社会的・文化的要因は今に始まったものではなく、現代女性の“性欲観”をひもとく上で十分な説明にはなりません。現代的要因を探る上で不可欠なのは、マッチングアプリに代表される「極端に自由化が進んだ現代の恋愛市場」、そしてそれらが生み出した「階級意識」と「実利的戦略」という視点だと筆者は考えます。

 ご存じの通りマッチングアプリ(略称:マチアプ)は、無数の登録者の中から身長、体形、年収、在住地などの“条件”で絞り込み、理想の相手を探すためのツール。仮に女性が高収入の男性と出会いたいのなら、年収500万円より700万円、700万円より1000万円と条件をつり上げる方が理にかないます。逆に年収300万円の男性とDMのやり取りをしたり実際に会ってお茶を飲んだりすることは、彼女にとって意に染まないどころか時間のムダにしかなりません。

 男性と比べて圧倒的にマッチ率の高い女性は、“年収300万円”の男性を“格下”と見なし、彼らから性欲を向けることを極端に嫌います。格下相手の歓心に応えることは、理想の結実を阻害する要因になると同時に、自身の格をも下げることにつながりかねないからです。

 意中ではない男性に対し女性が向ける“嫌悪の決まり文句”としてすっかり定着した「キモい」は、詰まるところ「相手の性欲」に対して向けているもの。たとえ男性が親愛や尊敬の念から女性に興味を寄せたとしても、女性側はそれらの根底に性欲があると断罪し、「キモい」「こっち見るな」と男性の存在を拒否するのです。

 しかし、このように強烈に嫌悪すべき対象として他者の性欲を否定しながら、一方で自分自身も性欲を擁することを認めるとどうなるか? 言うまでもなく明白な自己矛盾を引き起こします。そのため女性は、性欲の自覚を避ける心理に陥りがちというのが筆者の持論です。本来的には性欲に根ざしているはずの感情を「メロい」というゆるい言葉でコーティングし、性欲とは無関係な“きれいなもの”として自己処理する手法。広義には、高年収や高身長の異性を求めることもまた性欲の一種であるにもかかわらず。

配信元: LASISA

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LASISA

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