アルコール性肝炎をご存じですか?
本記事では、症状・原因について紹介します。
アルコール性肝炎について知るためにぜひ最後までお読みください。
※この記事はメディカルドックにて『「アルコール性肝炎」を発症する原因や症状はご存じですか?禁酒についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
アルコール性肝炎について

アルコール性肝炎とはどのような病気ですか?
アルコール性肝炎は、長期間にわたって大量のアルコールを摂取することによって引き起こされる肝臓の炎症性疾患です。アルコールの代謝過程で生じる有害物質が肝臓に蓄積し、肝細胞が損傷を受けることで発症します。
アルコール性肝疾患の一種で、脂肪肝、肝線維症、肝硬変、肝細胞がんと並びますが、特に炎症が強い特徴があります。
飲酒量の増加が発症のきっかけとなり、肝腫大、腹痛、発熱、黄疸などの症状があらわれます。
日本酒換算で、1日のアルコール摂取量が2合(純アルコール量約40g)を超えると、肝障害のリスクが高まります。
ただし、これは2合までは飲んでよいという意味ではなく、これ以下の量でも健康障害を引き起こす可能性があります。
治療にはまず禁酒が重要で、禁酒することで異常所見の著明な改善が見られます。
その他に、肝庇護療法、合併症の治療、栄養価の高い食事が重要とされています。
しかし、禁酒しても症状が持続する場合や、肺炎、肝性脳症、急性腎不全、消化管出血などの合併症を伴う重症型アルコール性肝炎の場合は、ステロイド薬による治療や肝移植が必要となることもあります。
アルコール性肝炎の主な症状を教えてください。
アルコール性肝炎は、アルコールの過剰摂取によって肝臓が炎症を起こしている状態で、肝細胞の急速な腫大と壊死、肝細胞の線維化による肝機能障害を引き起こします。アルコール性肝炎の主な症状は以下の通りです。
腹痛や腹部の不快感:
腹部の上部や右上腹部での痛みや圧迫感があらわれることがあります。
黄疸(皮膚や目の白部の黄変):
肝臓の機能低下により、黄疸があらわれることがあります。
食欲不振と体重減少:
食欲が減退し、体重が減少することがあります。
疲労感と筋力の低下:
慢性的な疲労感や筋力の低下があらわれることがあります。
嘔吐や吐血:
進行した場合には嘔吐や吐血がみられることがあります。
肝臓の腫れや硬さ:
肝臓が腫れたり、硬くなったりすることがあります。
精神状態の変化:
血中のアンモニアが上昇するため、不安やイライラ、注意力の低下などの精神状態の変化がみられることがあります。
発熱:
体温が上昇し、発熱が見られます。
腹水やむくみ:
肝臓の機能が低下すると、肝臓でのたんぱく合成が低下し、腹部や足に水分が溜ることがあります。
血液検査の異常:
白血球・AST・ALT・ALP・γ-GTPの増加、貧血、血小板・アルブミンの減少などが見られます。
アルコール性肝炎はどのように診断しますか?
アルコール性肝炎の診断には、以下の方法が用いられます。病歴と症状の検査:
患者のアルコール摂取の状況や期間、症状の有無など、アルコール性肝炎のリスクを検査します。
診察:
医師は腹部の腫れや脾臓の拡大などの身体所見を検査します。
また、皮膚や目の黄斑の程度を確認することもあります。
血液検査:
血液中の肝機能酵素(AST、ALT、γ-GTPなど)のレベルやビリルビン濃度などを測定します。
これらの値の上昇は、肝臓の炎症や損傷を示す可能性があります。
イメージング検査:
超音波検査やCTスキャン、MRIなどのイメージング検査は、肝臓の大きさや形状、脂肪蓄積、炎症の程度などを判断するのに役立ちます。
肝生検:
症状や検査結果によっては、肝生検が行われることもあります。
これにより、肝臓組織の炎症や損傷の程度、および他の肝疾患の除外が可能となります。
アルコール性肝炎の診断には、患者のアルコール摂取歴や症状の評価、血液検査、イメージング検査、そして必要に応じて肝生検が組み合わせて行われます。
これらの検査結果を総合的に判断し、正確な診断をすることが重要です。
何が原因で発症しますか?
アルコール性肝炎は、主に長期間にわたって過度のアルコール摂取が続いた場合に発症する肝疾患です。アルコール性肝炎の発症は深刻な健康問題であり、早期の診断とアルコール摂取の制限が重要です。
以下に、アルコール性肝炎の主な原因をまとめます。
過度のアルコール摂取:
長期間にわたって大量のアルコールを摂取することが最も一般的な原因です。
アルコールは肝臓で代謝される際に有害な物質に変換され、肝臓にダメージを与えます。
遺伝:
アルコールに対する個人の感受性や遺伝も関与しています。
同じ量のアルコールを摂取しても、一部の人はより大きなリスクを抱えている可能性があります。
栄養不足:
長期にわたるアルコール摂取は、栄養不足を引き起こすことがあります。
特に、ビタミンBや葉酸の不足は肝機能に悪影響を及ぼし、アルコール性肝炎の発症リスクを高めます。
性別と年齢:
男性よりも女性の方が、アルコール性肝炎の発症リスクが高い傾向があります。
また、年齢も重要な要素であり、長期間のアルコール摂取による肝臓への負荷が増すにつれて、発症リスクが上昇します。
初期症状を教えてください。
アルコール性肝炎は、長期間の過剰なアルコール摂取によって引き起こされる肝臓の炎症疾患ですが、初期症状がほとんどないと言われています。アルコール性肝炎は、長期間のアルコール摂取の結果として発生します。
肝臓は、アルコールを分解し、有害な代謝物質を排除する主要な役割を果たしています。
しかし、この過程は時間がかかるため、肝臓の損傷が初期段階では症状としてあらわれにくいとされています。
また、アルコール性肝炎の初期症状は非特異的であり、他の病態と混同される可能性があります。
一般的な初期症状には、疲労感、食欲不振、体重減少、軽度の腹痛などがあります。
これらの症状は、他の疾患や一時的な不調と関連づけられることが多く、アルコール性肝炎とは直接関連づけられない場合があります。
さらに、遺伝的な要因や生活習慣、アルコールの摂取量など個々の状態によって異なる反応を示すことがあります。
ただし、初期症状の欠如はアルコール性肝炎の重要な特徴であり、注意が必要です。
長期的なアルコール摂取による肝臓の損傷が進行すると、重篤な合併症や肝不全のリスクが高まります。
したがって、アルコール摂取の過剰な習慣がある場合は、定期的な健康チェックや肝機能の検査を受けることが重要です。
どのように進行していきますか?
アルコール性肝炎は、初期段階ではほとんど症状があらわれないと言われています。しかし、適切な治療をせずに放置しておくと、肝臓に炎症が生じ、肝炎へと進行します。
さらに状態が悪化すると、肝硬変になる可能性もあります。
肝炎や肝硬変の段階になると、患者は発熱、黄疸、倦怠感などの自覚症状を経験することが多くなります。
これらの症状は肝臓の機能が大幅に低下していることを示し、速やかに医療的介入が必要となります。
また、長期間にわたって大量のアルコールを摂取していると、アルコール依存症を発症する可能性もあります。
アルコール依存症は、アルコールに対する強い精神的な依存感と身体的な依存感を伴う病状です。
これらの情報から、アルコール性肝炎の初期症状があまりあらわれないこと、及びその病状が放置すると深刻な肝臓の病状へと進行する可能性があることを理解することは、早期の診断と適切な治療にとって重要です。
編集部まとめ

これまで、アルコール性肝炎について紹介してきました。
・アルコール性肝炎は、長期間にわたって大量のアルコールを摂取することによって引き起こされる肝臓の炎症性疾患のことである。
・治療では、医師によるアルコール摂取の制限や禁止、ビタミンや栄養補給、肝臓をサポートする薬物療法が行われる。
・禁酒は、肝臓の健康を守るために重要である。
これらの情報が、アルコール性肝炎について知りたい方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
アルコール性肝炎(恩賜財団済生会)
アルコール性肝疾患とは?元に戻らない?薬に頼れない?治療方法を解説(医療法人高柳会 大平下病院)
アルコール性肝炎(わだ内科・胃と腸クリニック)

