「20年将棋を離れた天才」は成立するのか? 『MISS KING / ミス・キング』プロデューサーを悩ませたリアルとエンタメの壁

「20年将棋を離れた天才」は成立するのか? 『MISS KING / ミス・キング』プロデューサーを悩ませたリアルとエンタメの壁

『MISS KING / ミス・キング』オフショットより
『MISS KING / ミス・キング』オフショットより / (C)AbemaTV, Inc.

のんが主演を務めるドラマ「MISS KING / ミス・キング」(毎週月曜夜8:00、ABEMA・全8話)。本作は将棋界を舞台に、天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥(のん)が、その深い憎しみから開花させた将棋の才能と、まっすぐに突き進む意志の強さで、自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ。プロデューサー・小林宙氏が、のん演じる主人公・飛鳥の“天才の描き方”について語った。

■レアポケモンのような、唯一無二の魅力を持つのん
現在配信されている第4話までがちょうど折り返しとなりますが、脚本を作っていた私の中では内容的にも前半戦でした。のんさん演じる国見飛鳥と、藤木直人さん演じる藤堂成悟が過去を共有し、そこに倉科カナさん演じる堺礼子も加わり、“チーム飛鳥”が下剋上的に、未来へ突き進む後半戦に繋がって行きます。

無事タッグを組むことになったのんさんと藤木さんですが、藤木さんはのんさんの第一印象を「実在するんだ」と表現していました。そう感じる芸能人は、なかなかいません。私は過去にタモリさんや織田裕二さんにそう感じました。大谷翔平さんが「ユニコーン」と表現されているものに近しい感じなのかもしれませんが、のんさんも同じ匂いがしました。スターでありながら神秘的な感じというのか、普通にはなかなか遭遇しないというか、レアポケモンというか、そう思わせる唯一無二の魅力がのんさんにはありました。

この仕事をしていると、よく芸能人に会うの?と周りの方々に聞かれることがあります。もちろん、いわゆる銀幕の中というか、テレビ番組や映画を作る仕事をしているので、中の人とも普通に会います。

私も学生生活を送り、会社に就職をして、今はプロデューサーをしているのですが、初めは戸惑いました。レアポケモンが目の前にいて、普通に話したりするんです。しかも昔から好きな方ともお仕事をご一緒することがあります。ドキドキです。

ですが、すぐに慣れます。悲しいかな、すぐに慣れます。もはや撮影現場は慣れきったスタッフばかりなので、ドラマや映画の現場では、俳優はそこまでレアポケモン化しません。むしろスタッフとキャストは対等で、撮影現場は監督やプロデューサーを指揮系統に置いて、演出部、撮影部、照明部、美術部、衣装部、メイク部などなど、あらゆる部署がいて、キャストたちも俳優部といった捉え方をしています。もちろん表に出る人たちなので、ケアはしますが、あくまで人間としては対等という認識です。

そこで各部の思惑が時に対立しつつ、協力しつつ、一つの物語が監督によって取りまとめられていって、ドラマ作りはされます。そんな感覚の中でもレアポケモンに見える一握りの俳優であるのんさんの稀有な存在感は『MISS KING / ミス・キング』でもいかんなく発揮されていて、実際中々「実在しない」存在感だと思います。
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■「将棋の天才」は20年近く将棋を触っていないのに天才なのか?
『MISS KING / ミス・キング』は将棋をテーマにしたドラマですが、根本は人間ドラマだと思って作りました。なので、第4話までは飛鳥が再び将棋を指し始める、という物語を中心に描いています。ドラマに必要なのは視聴者の方々の共感だと思っています。そのためにはリアリティが必要と考え、将棋の監修の先生方には本当にお世話になりました。

ただ、あまりにリアルのみだと、それはドキュメンタリーになってしまうので、エンタメとしてのストーリーがもちろん必要となってきます。今回は、そのリアルをどこに置くかの度合いに、非常に難儀しました。のんさん演じる飛鳥の設定が、将棋や棋士規定などのリアルを調べれば調べるほど「一度将棋をやめている天才」ということでなければ成立しなく、その天才が再び将棋に触れ、宿敵に立ち向かっていく…というストーリーを作りました。

ですが「将棋の天才」は20年近く将棋を触っていないのに天才なのか?という難題にぶち当たりました。そんな人はこの世の中には今まで存在したことがないので、将棋のドラマをやるにあたって少々乱暴かなと思い、どうしたものかと思っていました。その時、興味深い話を聞きました。

ABEMAは将棋チャンネルを運営しておりまして、そこでAIで戦局がわかるように表示しており、AIをいち早く将棋に取り入れた局です。将棋チャンネルの担当者と話していると、AIによって棋力を数値化できるそうで、ある有名な棋士のデビューから今までの棋力をAIに数値化させてみたところ、もちろん増えていると思ったら、ほとんど横ばいだったそうです。みんながみんなそうではないとは思うのですが、フィクションとしては天才は天才のままとして描いてもいいのではないかと私は思いました。

ただそれはあまりに荒唐無稽に見えるのではないかということで、1度挫折して第3話で将棋道場で揉まれていくという描写を入れました。これは将棋を離れて20年経っていて戦法も新しくなっていて、天才といえどもそこに対応しなくてはいけなく、天才は天才のままでいいという私の解釈とも一致していて、個人的にはストーリーのエンタメとしてもありだと思って入れました。

よくスポーツなどで、歴代1位は誰かみたいな議論の時に、時代が変わったら比較できないと言われますが、それと似ています。時代が変わると戦法は進化します。AI的な棋力が高くても、日々研究して、努力をしないと生き残れない厳しい世界ですが、ただ天才はいつの時代でも天才ではあるのではないかと個人的には解釈しています。

不幸のどん底にいた1人の女性が、道を切り拓いていく物語が今夜の第5話から展開されます。4話までは陰鬱な展開が正直多かったかもしれませんが、その分、後半戦は爽快な物語が展開されていきます。夜8時から無料配信開始です。ABEMAでは全話無料で配信されていますし、第1話から第4話のダイジェスト映像も公開されましたので、レアポケモン・のんさんの魅力を、今からでも見ていただけますと嬉しいです。
(C)AbemaTV, Inc.


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