地域や社会福祉のために貢献したい… 安易なボランティア活動の落とし穴

地域や社会福祉のために貢献したい… 安易なボランティア活動の落とし穴

現在は、介護や福祉現場などのレクリエーションで役立つ民間資格がいくつも誕生しています。

それらの資格は、現役の介護・福祉職が「勤務先のレクを充実させたい」という動機で取得するケースもありますが、「新たな活動として、施設を訪問してレクを行いたい」と考えている人も少なくありません。

私は、それらの資格を取った人にインタビューをすることもあります。

「今後、どのような活動をしてきたいですか」と質問すると、後者の場合は大半が「ボランティアとして地域の施設を回りたい」と回答します。

こうした人は「定年退職して、何か生きがいを持ちたいと考えて受講した」という例が多いので、ボランティアでいいという気持ちもわかります。

しかし、私は敢えて言います。

「本当にボランティアが最適な選択ですか?」

施設にレクを提案しに行ったとしても、ボランティアであれば断られることはありません(中には、感染症予防を理由に断られるケースもありますが、少ないと思われます)。

断られなければ自分の心も折れませんし、訪問する施設数も順調に増えていきますから楽しいでしょう。

しかし、そうやって皆がボランティアで訪問するようになったら「○○という資格を持っている人は、ただでレクをしてくれる」という評判が広がってしまいます。

もし、仮にその資格を取った後も必死に勉強して、プロとして最高レベルのレクを提供できる人がいたとしても「○○」という資格名を出した時点で、施設からは「え?お金とるの。ほかの○○の資格を持っている人はタダでやってくれたよ」と門前払いされてしまうでしょう。

ボランティアの精神自体は素晴らしいことですし、それに本気で取り組める人は尊敬します。

しかし皆が安易にボランティアに走ると「○○という資格では食べていけない」という事態を引き起こし、結果として「資格を取る人が減少する➡資格の知名度が下がる➡自分の活動が世間に認知されない」と自分の首を絞める結果にもなりかねません。

また、ボランティア活動ができるのは、資金的・時間的に余力のある人ですので、必然的に高齢者層が多くなります。

しかし、この場合「活動の継続性」がネックになります。

日本人男性の健康寿命の平均は2022年度で72.57歳です。

つまり65歳で定年退職をして「第二の人生は地域のために」と資格を取ってボランティア活動を始めたとしても、7年強で自分の身体の問題などで活動できなくなる可能性があります。

もっと若い世代が自分の後継者としていなければレクの提供もストップします。そのレクを利用者の介護予防や認知症予防に役立てていた施設などにとっても由々しき問題です。

本当に「地域のためを思う」のであれば、自分がリタイアした後でも活動を引き継いでくれる若い世代が必要です。

そして現役で働かなくてはいけない若い世代を呼び込むには「その資格で食べていける仕組みづくり」を考えなくてはいけません。

しかし、多くの民間資格では、こうした仕組みづくりが十分とはいえず、活動の継続性に懸念があるのが現実です。

民間資格とは関係ありませんが、こうした状況は「コミュニティカフェ」や「子ども食堂」などの現場で起こり始めています。

高い志を持って始めたものの、運営メンバーが高齢化し、採算のとれなさから事業を引き継いでくれる人もおらず、看板を下ろした老舗もあります。

特に、こうした取り組みは「食」という人の命を預かるだけに、事業停止が利用者に与える影響は大きくなります。

ビスネスとしてスタートするには色々とハードルがあるのも事実です。

しかし、初めに苦労してでもその道を進んだ方が、自分の思いを長く継続できるのではないでしょうか。


介護の三ツ星コンシェルジュ

提供元

プロフィール画像

介護の三ツ星コンシェルジュ

老人ホーム・介護施設の検索総合情報サイト「介護の三ツ星コンシェルジュ」 関西で自信を持ってお勧めできる施設のご紹介や医療福祉介護に関するお役立ち情報を日々更新中! 各ホーム公表のオフィシャルな情報と、資料にはないサービス面等の情報を介護のプロが厳選し 写真と共に掲載した関西介護施設選びの決定版、「有料老人ホーム三ツ星ガイド」も好評発売中