性犯罪被害に遭われた方にとって、望まない妊娠を防ぐためのアフターピルは重要な支援手段の一つです。被害直後の心理的ショックのなかでも、できるだけ早期に緊急避妊を受けられる体制の整備が必要とされています。

監修医師:
村田 憲保(医師)
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
母体保護法指定医
アフターピルと性犯罪について
被害者支援制度の一環として費用支援や専門的な相談体制が整備されつつあります。
性犯罪被害者への緊急避妊提供
性犯罪被害者にとって、アフターピルへのアクセスは大変重要な医療支援の一つです。性暴力による妊娠のリスクを回避するためには、被害後できるだけ早期の緊急避妊が必要となります。しかし、被害直後の心理的ショックや、医療機関受診への躊躇などにより、適切な時期に緊急避妊を受けられないケースも存在します。
現在、性犯罪被害者支援制度の一環として、緊急避妊薬の費用支援や、専門的な相談体制が整備されつつあります。警察への届出の有無にかかわらず、被害者が安心して医療機関を受診できる環境の構築が進められています。また、産婦人科医や看護師、カウンセラーなどによる包括的な支援体制により、被害者の心身の回復を支援する取り組みが行われています。
性犯罪被害者専用の相談窓口や、24時間対応可能な支援体制の整備も重要な課題です。被害者が一人で抱え込むことなく、適切な支援を受けられる環境の構築により、二次被害の防止と回復支援の両面での効果が期待されています。このような包括的な支援体制の充実により、被害者の尊厳と権利の回復を図ることが重要です。
被害者支援におけるアクセス改善
性犯罪被害者がアフターピルにアクセスする際の障壁を取り除くことは、被害者支援の重要な要素です。現在の制度では医師の診察が必要なため、被害届の提出や詳細な事情説明を求められる可能性があり、これが被害者にとって大きな心理的負担となることがあります。
被害者のプライバシー保護と尊厳の尊重は、支援体制において重要視されるべき要素です。匿名での相談や受診が可能な体制、被害者の心理状態に配慮した対応、セカンダリートラウマの防止などに十分な配慮が必要です。また、被害者が自分のペースで回復に向かえるよう、継続的な支援体制の整備も重要です。
アフターピルの市販化は、性犯罪被害者にとってもアクセス改善の観点から重要な意味を持ちます。医療機関受診への心理的ハードルが軽減されることで、より多くの被害者が適切な時期に緊急避妊を受けられる可能性があります。ただし、市販化後も被害者への包括的な支援体制は維持・強化される必要があり、薬剤師による適切な配慮と専門機関への連携体制の構築が重要です。
まとめ
アフターピルは女性の緊急時における重要な選択肢であり、その市販化は多くの女性にとって大きな意味を持ちます。適切な効果や値段、入手方法について正しい知識を持ち、必要なときに適切に利用できる環境の整備が求められています。また、性犯罪被害者への支援においても、アフターピルへのアクセス改善は重要な要素となります。
今後の試験販売や制度整備を通じて、より良い緊急避妊環境の実現が期待されます。
参考文献
厚生労働省 – 「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく薬局における調剤」及び「薬局・店舗販売業の店舗における要指導医薬品たる緊急避妊薬の販売」について
日本産科婦人科学会 – 緊急避妊法の適正使用に関する指針
内閣府 – 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
厚生労働省 – 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく緊急避妊に係る取組について
日本薬剤師会 – オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤について

