ーー“死”や“葬儀”というテーマを扱う上で感じたことはありますか?
市原:『最期の、ありがとう。』は、実在する⼈物である冨安徳久さんがご⾃⾝の⼈⽣を綴った書籍を原作としているのですが、撮影の際には実際の葬儀会社の⽅や納棺師から、所作やご遺族との接し⽅について直接ご指導いただきました。そのすべてが本当に丁寧で、学ばせていただくことがたくさんありました。葬儀の現場にはもちろん形式的に決められている“やるべきこと”があるのですが、それ以上に、関わるすべての⽅に対する⼈道的な思いや、⼈間愛が溢れていまして。どこまでも「⼈のために何ができるのか」を考え続けられる⽅々が集まっている場所が葬儀会社なのだと、改めて実感いたしました。

ーーご自身が演じた役について教えてください。
市原:私が演じたのは、主⼈公・冨安徳久の先輩にあたる葬儀会社のスタッフ、藤⽥純⼈という⼈物です。彼は主⼈公が⼤学進学を諦めてまで葬儀の仕事を志すきっかけとなった存在であり、⼈⽣の師でもあります。
数多くの故⼈様を⾒送り、お⼀⼈おひとりと丁寧に向き合ってきた藤⽥は、経験の中で⾃⾝の考え⽅を育んできました。彼なりの⽣き⽅や、目には見えない⼤切なものを主⼈公に伝えていく姿は、私⾃⾝にとっても⾮常に印象深いキャラクターです。
ーー市原さんにとっての人生の師、“藤田先輩”のようだといえる人物はいらっしゃいますか?
市原:これまで出会ってきたすべての⽅が、私にとっての⼈⽣の師です。年齢やキャリアに関係なく、今も周りにいる皆様からたくさんのことを学ばせていただいています。
⾃分がどういう⼈間か、何年⽣きてもよくわからないものです。⼈から「市原さんはこういう⼈だよね」と⾔われても、まったく腑に落ちないといいますか、納得しきれないというか。ただ、⾃分の命が尽きたときに「あの⼈って、こういう⼈だったよね」と語られることこそが、その問いに対する⼀つの答えになるのでは、と思っています。
だからこそ、命が絶えるまで日々を通過点として、⼀分⼀秒を無駄にせず、学び続けることを⼤切にしています。そのなかでも特に⼤事にしていることが、“創って壊す勇気”です。⾃分の中で築き上げてきた概念や秩序、ルールなどが膨らみすぎてしまわないよう、いつでも壊せる柔軟さを持つこと。それを忘れずに、これからもすべての出会いから学び続けていきたいと思っています。

