乳がん骨転移の症状

乳がんが骨転移した場合、さまざまな症状が現れる可能性があります。早期に症状に気付き、適切な対応をすることが重要です。3)
骨折
骨転移により骨がもろくなり、本来なら骨折しないような軽い外力や、ときには何もしなくても骨折してしまうことがあります。これを病的骨折と呼びます。病的骨折は、強い痛みを伴い、日常生活に大きな支障をきたします。
痛み
骨転移の一般的な症状です。初期は鈍い痛みや違和感程度ですが、進行すると持続的な強い痛みになることがあります。特に、夜間や安静時に痛みが強くなることが特徴です。
脊椎圧迫によるしびれや麻痺
脊椎(背骨)に骨転移が生じ、がんが脊髄や神経根を圧迫すると、手足のしびれ、感覚の鈍麻、筋力低下、麻痺などの神経症状が現れることがあります。重度になると、排尿・排便障害(膀胱直腸障害)を引き起こすこともあり、緊急の治療を要する場合があります。
高カルシウム血症
骨転移により骨が破壊されると、骨に含まれるカルシウムが血液中に大量に放出され、血液中のカルシウム濃度が異常に高くなり、高カルシウム血症になります。症状としては、倦怠感、脱力感、食欲不振、吐き気、便秘、多尿、口渇などが現れ、重症化すると意識障害や不整脈を引き起こし、命に関わることもあります。
乳がん骨転移の検査方法

乳がんの骨転移が疑われる場合や、定期的なスクリーニングのために、さまざまな検査が行われます。
骨シンチグラフィ
骨シンチグラフィは、骨転移のスクリーニングに広く用いられる検査です。放射性医薬品を静脈注射し、それが骨の代謝が活発な部位(骨転移巣など)に集積する様子を画像化します。全身の骨を一度に評価できるため、多発性の骨転移や、症状が出ていない部位の転移を発見するのに有用です。ただし、骨折や炎症など、がん以外の原因でも集積が見られることがあるため、ほかの検査と組み合わせて診断します。
PET検査(PET-CT)
PET検査(陽電子放出断層撮影)は、ブドウ糖に似た放射性薬剤(FDG)を注射し、がん細胞が活発にブドウ糖を取り込む性質を利用して、全身のがん病変を検出する検査です。骨転移だけでなく、ほかの臓器への転移も同時に評価できるため、全身のがんの広がりを把握するのに役立ちます。PET検査は、骨シンチグラフィよりも小さな転移巣を発見できる可能性がありますが、費用が高く、すべての施設で実施できるわけではありません。
画像検査(CT、MRI、X線)
主な画像検査は下記のとおりです。
X線検査
CT検査(コンピュータ断層撮影)
MRI検査(磁気共鳴画像)
X線検査は、骨転移の有無や形態を簡便に確認できますが、小さな病変や骨の重なりがある部位では見逃されることがあります。CT検査では、骨の破壊の程度や、周囲の軟部組織への広がりを詳細に評価できます。特に、病的骨折のリスク評価や、手術の計画に有用です。
MRI検査は骨髄内の病変や、脊髄・神経根への圧迫の有無を評価するのに優れています。神経症状がある場合や、脊椎転移が疑われる場合に特に有用です。
血液検査
血液検査では、骨代謝マーカーや腫瘍マーカーなどを測定し、骨転移の有無や活動性を間接的に評価します。
骨代謝マーカー
骨が破壊される際に放出される物質(例:ALP、TRACP-5b、NTXなど)や、骨が形成される際に放出される物質(例:BAP、PINPなど)を測定することで、骨の代謝状態を把握し、骨転移による骨破壊の程度を推測します。4)
腫瘍マーカー
乳がんの腫瘍マーカー(例:CEA、CA15-3など)の数値が上昇している場合、がんの活動性が高まっている可能性があり、骨転移の存在を示唆することがあります。5)
これらの検査は、患者さんの症状や病歴、これまでの治療経過などを考慮して、主治医が適切に選択・組み合わせて行われます。

