「肺が苦しい」時の対処法はご存じですか?考えられる病気も医師が解説!

「肺が苦しい」時の対処法はご存じですか?考えられる病気も医師が解説!

肺が苦しいのを治すには?メディカルドック監修医が対処法や考えられる原因・病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

伊藤 陽子

監修医師:
伊藤 陽子(医師)

浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

「肺が苦しい」症状で考えられる病気と対処法

肺が苦しいという症状で考えられる病気や対処法は下記のようにさまざまです。ここでは肺が苦しくなる主要な病気と対処法、何科を受診すべきかについて紹介します。

咳で肺が苦しいの症状で考えられる原因と対処法

咳は息切れ・胸の痛み・痰・呼吸困難などの症状を引き起こし、その結果、肺が苦しいと感じる場合があります。咳が出ている期間によって分類し、考えられる原因がそれぞれ異なります。
咳の期間は下記のように3つにわかれます。
・急性咳嗽(がいそう):3週間以内の咳
・遷延性咳嗽:3週間以上8週間未満
・慢性咳嗽:8週間以上の咳

急性咳嗽の原因としては、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症が原因の急性上気道炎や感染後の咳が大部分です。ただ、3週間以内の期間であっても、息苦しさが強かったり、肩で息をしている、高熱が続いているなどの症状がある場合は、より重い病気の可能性があります。肺炎・気管支喘息・心不全・肺気腫などの病気が原因の可能性もあります。このような場合には、早急に内科、呼吸器内科、循環器内科を受診しましょう。

続いて遷延性咳嗽についてです。
3週間以降まで咳が長引く場合は、感染後咳嗽の占める割合が高くなります。慢性咳嗽では、感染であることはほとんどなく、慢性副鼻腔炎に伴う副鼻腔気管支症候群(SBS)、慢性気管支炎、閉塞性肺疾患(COPD)が主な原因です。
これらの原因を調べるためには、病歴を詳しく聞いたり、胸部レントゲン検査や血液検査、喀痰検査など総合的な検査により判断します。期間のみで診断をつけることはできないため、咳が長引く時にはまず内科、呼吸器内科を受診しましょう。

風邪で肺が苦しいの症状で考えられる原因と対処法

風邪で肺が苦しくなる原因としては、細菌やウイルスが気管支や肺に炎症を起こす肺炎などが考えられます。細菌やウイルスは、のどや鼻の粘膜から侵入して炎症を引き起こしますが、この炎症が気管支まで広がると気管支炎、肺まで到達すると肺炎を発症します。特に肺炎を発症すると、息苦しさを感じる、呼吸が速くなるなどの症状がみられます。
肺炎を発症した場合は、市販薬や解熱剤では根本的な治療はできません。肺炎の場合、症状によっては入院治療の必要があります。早めに内科、呼吸器内科を受診しましょう。特に、息苦しい症状が強い場合には、救急外来を受診しましょう。

ストレスで肺が苦しいの症状で考えられる原因と対処法

ストレスが原因で自律神経が乱れた結果、過換気症候群(過呼吸)が起こり、息や肺が苦しいと感じる場合があります。また、ストレスの高い状態が続いた結果、パニック障害や不安障害などの精神疾患を発作して、息や肺の苦しさを感じることもあります。
ストレスが原因で息苦しい場合は、心療内科や精神科を受診する場合もありますが、まずは心身をリラックスさせて呼吸を整えることを意識しましょう。具体的には楽な姿勢で安静にして、深呼吸をゆっくりとおこないましょう。
その他にも、入浴時間をしっかり確保する、寝る前にストレッチをするなどリラックスした状態を意識的につくることが有効です。それでも、症状が改善しない場合は、無理はせずに医療機関を受診しましょう。

肺が苦しく咳が止まらないの症状で考えられる原因と対処法

肺が苦しく咳が止まらない原因としては、咳喘息・感染後咳嗽・副鼻腔気管支症候群・胃食道逆流症・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・気胸・間質性肺疾患などの呼吸器疾患が考えられます。
特に3週間以上持続する咳の場合、感染後咳嗽が多くみられます。かぜ症候群の原因微生物が気道から除かれた後の後遺症としての咳を、感染後咳嗽といいます。この機序ははっきりとしていませんが、ウイルス感染により気道に炎症性メディエーターが産生され、咳受容体に作用することで、咳が持続すると考えられています。
咳が持続し、苦しくなるようであれば呼吸器内科を受診しましょう。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD):肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下する。
・気胸:肺に穴があいて肺から空気が漏れた結果、タイヤのパンクのように肺がしぼむ。咳なしで胸の痛みのみのこともありますが、咳が止まらなくなる方も多いです。
・間質性肺疾患:肺の組織が硬くなり酸素を取り込みにくくなるため、呼吸が困難になる。

上記のような場合は、肺が正常に活動しないため、肺が苦しくなり、咳が止まらなくなる場合があります。

寝起きに肺が苦しいの症状で考えられる原因と対処法

寝起きに肺が苦しい原因として、最も多くみられるのが、気管支喘息です。気管支ぜんそくは、気管が慢性的に炎症を起こし、何かしらの刺激が加わった時に、気道が狭くなることを繰り返す病気です。気管支ぜんそくになると、せき、たん、ゼーゼーという呼吸の喘鳴(ぜんめい)、息切れなどの症状が夜間や早朝によくみられます。なぜ、夜間や早朝によくみられるかというと、自律神経が大きく関係します。
自律神経には、血圧の上昇、心拍や呼吸数を増加させて身体を活発にさせる交感神経と、血圧の低下、心拍や呼吸数は減少させて身体を落ち着かせる副交感神経があり、この2つの神経はバランスを取っていますが、睡眠時には、交感神経は気道を広げる方向に働き、副交感神経は気道を狭くする方向に働きます。
そのため、副交感神経が活発になる夜間や早朝に気道が狭くなり、息切れなどの症状がみられやすくなります。
寝起きに肺が苦しい場合は、上体を起こし枕やクッションで姿勢を安定させることで、症状が和らぎますが、息苦しさの症状が強い場合は、救急外来を受診しましょう。

コロナウイルスで肺が苦しいと感じる症状で考えられる原因と対処法

コロナウイルスに感染した結果、肺が苦しいと感じる場合は肺炎を引き起こしている可能性があります。コロナウイルスに感染すると、発熱、咳や倦怠感だけでなく息苦しさを感じることがよくみられる症状です。しかし、コロナウイルスが原因で肺炎を発症している場合には、息苦しさが強くなり、少し動いただけでも苦しくなります。このような場合には早急に病院を受診する必要があります。
肺炎は重症化すると命にかかわる危険性があるため、コロナウイルスの療養中に少しでも肺が苦しいなどの症状を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「肺が苦しい」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

呼吸困難な症状の場合は、呼吸器内科へ

息切れ、胸の圧迫感、呼吸が浅くなる、咳が止まらないなどのように、呼吸困難の症状がみられる場合は、呼吸器内科をすぐに受診しましょう。これらの症状がみられた場合は、気管支喘息や肺炎、心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺塞栓症などの病気を発症している可能性があるため、自分で対処することはできず、専門的な治療が必要です。
特に症状が急激に悪化した場合は、無理はせずに、救急車の要請をおこなうことも検討しましょう。

受診・予防の目安となる「肺が苦しい」ときのセルフチェック法

受診・予防の目安で、自分自身にて確認できるチェック法をお伝えします。
・肺が苦しい以外に息切れがある場合
・肺が苦しい以外に胸の圧迫感がある場合
・肺が苦しい以外に咳が止まらない場合
・肺が苦しい以外に発熱がつづく場合
・肺が苦しい以外にゼーゼーなどの呼吸時の異常音がする場合
ここでお伝えした内容に当てはまる場合は、自分自身の対処だけでなく、呼吸器内科を受診しましょう。

配信元: Medical DOC

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