昨年コノビーが開催した「コノビーサロン」に参加してくださった、皆川 円(みなかわ まどか)さん。
笑顔で「産後、子育てが苦しかった」と話をしてくれた姿に、なぜそんな風に子育てを語れるようになったのか気になり、改めてインタビューをさせていただくことに。
そこには、円さんという一人の母親の物語として片付けられない、子育ての『苦しさの正体』がありました。
「わたしにとって子育ては、
“人と違う”ことの連続だった。」
ときどき目を伏せながらも、しっかりとした口調で、円さんは自分の体験を、こう語りはじめます。
「毎日“すみません”と言っていた」妊活、出産、そして産後鬱…。私を苦しめたものの正体<前編>
69,945 View「CMでも、町を歩いている人でも、子どもと一緒にいる人ってみんな、幸せそうな雰囲気があるじゃないですか。……でも、実際の子育ては、想像と全然違いました。」(文中より)
私、30歳で結婚して、35の時にようやく妊娠したんです。
結婚する2年前くらいに、「生理がこない、おかしい」と思って産婦人科に行ったら、排卵していないことが分かって。
その時からやんわりと妊活を始めていたので、それを含めると実際の妊活期間は7年。
最後の数年は仕事も変えて、生活のすべてを「妊活」に注いでいました。
子どもがいる人は皆、幸せそうに見えた
ー7年間の妊活って、強い意志がないと続けられないんじゃないかなと。
私の場合、子どもが欲しい特別な理由があったわけではないんですけど、ただ世の中にいるたくさんのお母さんのように、普通に子どもを産みたかった。
CMでも、町を歩いている人でも、子どもと一緒にいる人ってみんな、幸せそうな雰囲気があるじゃないですか。
そのみんなが持っている幸せを、自分が体験できないのはイヤだなって思ったんです。
あとは、「夫を父親にしてあげたい」という気持ちが強くあって。
彼もそれなりに子どもを欲しいと思っている人だったので、彼を巻き込んでしまっていることを、申し訳ないと感じていました。
―妊娠が分かった時の喜びは、やっぱり大きかったですか?
7年間も待っていたことだから、妊娠が分かったらすごく嬉しいだろうなと思ってたんですけど…
正直「ヨッシャー」みたいな気持ちは全然なくて。
他の人が妊娠を分かった時に感じる幸福感とは、ちょっと違ったんじゃないかなと思います。
もちろん、家族に「妊娠したよ」って報告できる安心感みたいなものはあったけど、それよりも、生まれるまで安心できないなって気持ちの方が強くて。
妊娠したという事実はあるけど、私のことだからどうせまた普通じゃないことが起こるかもしれない。
信じられない、信じちゃいけない、信じないほうがいいよって、自分に言い聞かせてました。
だから、安定期が過ぎてようやく喜びというか、出産を楽しみにする気持ちを持つことができたかな。
緊急入院。早く産まれてきた息子
それで出産前は実家で、父と母と私の3人の生活をのんびりと楽しもうかなと思ったんです。
気持ち的にも穏やかになれそうだし、良い状態で過ごせるかなって。
なのに、帰省して3日目くらいで緊急入院になっちゃって…。
その時私は、妊娠33週目。
出産はもうちょっと先だと思っていたので、もうただただびっくりしましたね。
「待って待って、まだ予定日よりも1ヵ月以上早いよ」って、心も身体も追い付きませんでした。
で、そのままゆっくり考える余地もなく、帝王切開で出産。
他のお母さんたちはみんな痛いだなんだと言って産んでいるのに、うちはお腹を切って出てくるのかって。
その時、「あぁ、また私は人と違うんだ」と強く感じたのを覚えています。
可愛いと思えない息子。謝ってばかりいる私
赤ちゃんとの生活は、寝られないとか辛いこともあるってネットや本で読んで知っていました。
でも、散々仕事で残業してきたし、眠れない時もあったから、それくらい大丈夫でしょ、できるでしょくらいに思っていたんです。
でも、全然違った。
ー産む前のイメージと、全然違ったわけですね。
そう、しゃべらない人間との生活って、こんなにしんどいのかって。
子どもを産むまでは、大人としか接したことがないじゃないですか。
だからしゃべらない人とずっといることが、こんなに変則的で閉鎖的だなんて知りませんでした。
言葉でのコミュニケーションが取れないから、なんで泣いているのかきちんと理解してあげることもできないし、向こうにも自分の気持ちが伝わらないから、全然泣きやんでくれない。
最初の1~2ヶ月は、息子を可愛いと思えない日々が続きました。
ー可愛い、と思えない。
はい。
当時、私にとって息子は、ただただ怖い存在で、とにかく泣かせないようにするために必死だったんです。
「夜泣きしない子を育てる魔法の本」みたいなものを読みこんで、この時間にミルク、この時間に眠らせるとか、“こうしなくちゃ”みたいなものにどんどん縛られていって。
その頃、「産後鬱」と診断されました。
そう言われても、ピンとはこなかったんですけど…。
里帰り出産をしていたので、もちろん母も私を助けようとしてくれました。
でも私の場合、かえってそれが自分をもっと追いこんでいって。
ーどういうことでしょう?
一緒に暮らしているから、私が寝不足なのと同じように、母達も寝不足になっていくんです。
それでも、「手伝って」と言わなくても、「手伝うよ」って母から手がのびてくる。
もちろん助かることもあったんですけど、しんどそうにしている母にまで手伝わせてしまって、申し訳ないという気持ちもあったし、ただでさえ自分のペースでできない「子育て」を、もっと思い通りにできないようにされている、みたいに思うこともあって…
手伝ってもらえばもらうほど、どんどん私自身のしんどさも増していきました。
それに加えて、精神的に殺気立っているのもあってか、食事が全然食べられなくて。
それなのに、下痢も止まらなくて、私の体重はみるみるうちに減っていく。
子どもを泣かせて、すみません。
代わりに見てもらって、すみません。
ご飯をつくってもらって、すみません。
毎日毎日「すみません」って口癖のように言っていましたね。
「ありがとう」で良かったはずなのにと、今では思えるんですけど。
何が私を苦しめたのか
ー今、改めて振り返って、その辛さの正体って何だったと思いますか?
子どもを産む前と、産んだ後での急激な「環境の変化」とか、心身ともに感じる「疲労感」とか、色々なことが重なり合っていると思うんですけど…
その中でも、この時期、「人との違い」を感じることが、本当にすごく多かった。
なかなか妊娠しない。
帝王切開で出産。
子どもを可愛いと思えない。
同じ時期に出産した人たちと授乳室で一緒になっても、みんなはちゃんとうまく子育てできているように見えました。
みんなは当たり前にできているのに、どうして私にはそれができないんだろうと。
私がみんなと同じようにできないことで、周りにいる夫や両親のことも、それに巻き込んでしまうと。
そのことが何より、苦しかったんだと思います。
……その後、息子さんの成長に合わせて気持ちが少しずつ楽になり、視野が外に向いていく過程の中で、コノビーサロンに参加することになった円さん。
そこであることに気がついたといいます。
(取材/文:三輪 ひかり )
後編は、こちらから読めます。
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