前回、LGBT家族(※1)の多様な「家族のカタチ」についてお話をしてくださった、小野春さん。
ご自身も、春さんとその2人の息子さん、女性パートナーとその娘さんの、5人家族。バツイチのシングルマザー同士が一緒になった、LGBTのステップファミリー(※2)で生活をされています。
血縁や苗字にとらわれない。シンプルに繋がる家族のカタチ [後編]
10,779 ViewLGBT家族って、どんな家族で、どんな暮らしをしているんだろう。ありのままの家族のカタチを、お話していただきました。
※1「LGBT家族」とは:この文中では、子どもを養育するLGBTのファミリーを指しています
※2「ステップファミリー」とは:子どものいる人の離婚や再婚などにより生じる、血縁関係のない親子関係や兄弟・姉妹関係のこと
そんな春さんに、ご自身のご家族についてもっとお伺いしようと思ったのですが、同じ部屋に息子さんがいることが気になり、聞いてみると…。
周りが私たちを“特別”にする
―― いろいろとプライベートなことを伺っていますが、そばに息子さんが座っているのは気になりませんか?
ああ、全然。たぶん聞いてないですよ。クーラーがあるからこの部屋にいるだけ(笑)。
―― 息子さん、スーツケースに荷物を入れていますね。
実はアメリカに留学するんです。明日から。
―― 明日ですか!そんなときにおじゃましてしまってすみません。
いえいえ。逆にわざわざ来ていただいてすみません。本当に所帯じみててパッとしない話しかできないと思うのに。
―― なんというか、春さんすごく自然体ですよね。ご自身のセクシャリティのことも、家族のことも、息子さんの前でも普通に話されていて、正直びっくりしました。
そうですか?本当さっきから何度も言ってますけど、本当は話すこともないくらい、つまらない生活してるんですよ(笑)。
パカッと開けて中見てみると、「うわ、地味!」っていう様な家庭なんだけど、みなさんがそうじゃないって思っていることが、わたし的に面白いくらい。
―― 周りの人へもご家族のカタチについてオープンにされているんですか。
自分と距離の近い人、友人や職場の同僚、子ども達の学校の先生には話しています。
でも全員ではないですね。言いたくないというわけではないんですけど、相手が聞きたくないんじゃないかって思っちゃうのがあるかもしれない。
ママ友にいきなり重い話をぶつけるのもなんかちょっと違うし、向こうも「変なことを聞いてごめんなさい」みたいな雰囲気になるのが申し訳なくて。
カミングアウトしていない人に対しては、親戚と一緒に暮らしていると説明するんですけど、本当は、せっかく仲良くなった人たちにいちいち嘘をつくのは嫌なんです。わざわざこっちから1枚壁を築き上げてしまうというか、やっぱり事実と違うことを言うのってストレスですし。
―― カミングアウトしないのはなぜなんでしょう。
私たち家族は、何も特別なわけじゃないんですよ、本当に。
朝は子どもたちをたたき起こして、「起きないと遅刻するよ!」って言って、学校のプリントを確認して。本当にそのへんにいる家族と、変わらない部分もたくさんなんです。
でも、LGBTで同性のパートナーと暮らしているってことにセンセーショナルなイメージを持たれる方がやっぱり多いのかもしれないなと思います。
「女性同士のカップルなんです」「あー、そうなんだ」っていう、それぐらいのやり取りですむのがいいですね。
で、「子育て中なんです」「あー、そうなんだ、うちもです」って、普通に子育ての悩み相談したり、愚痴言えたりするといいなぁって。
―― 同じ“子育て中”ですもんね。
そうなんですよ。基本的に子育ての悩みは一緒なので、そこを普通に話せると本当に楽になると思う。
だんだん家族になっていく
―― 春さんは、子育てをしたり、パートナーシップを育んでいくなかで、「あぁ、わたしたち家族になったなぁ」と具体的に感じた出来事とかってありましたか。
難しい質問ですね。どこで家族だと思ったんだろう。
分かんないなぁ…、でも逆に家族じゃないと言われると、どこが家族じゃないのかも分からないかもしれない。
―― 最初から家族という感覚があったわけではないんでしょうか。
そもそもうちはステップファミリー型なので、2家族が一緒になった感じではあったんです。家族と家族があって、それが合体したなっていう感覚。
今はだいぶミックスしちゃっててよく分からないけど、それでも部分的には、それぞれひと家族っていう感覚があるときもあります。でも、具体的な何かがあったという訳ではないんですが、だんだん「家族だなあ」っていうふうにみんなが思うようになったという感じかな。
たとえば誰かがいなかったら「あいつ、どうした?」みたいなふうになるんですね。そう思うと、全員がここに居るということに対してあたり前だと感じているということが、家族なのかなと思います。
前に子ども達に「あんたたちってきょうだい?」って聞いたことがあるんです。そしたら、「きょうだいとは思ってないけど、家族だと思ってる」って言っていて、子どもたちのほうがよっぽど本質的だなって思いましたね。
5人それぞれのカタチで繋がっている
―― ご家族のあいだでの呼び名とかって、どうされているんですか。
パートナーとは最初、呼称の迷子状態でした(笑)。
付き合った頃は、わたしは「相方」って呼んでたんですけど、パートナーは漫才師みたいだって嫌がって、「彼女」とか言いたがってましたね。
でも私は「彼女」っていうのも違和感があるし、「恋人」っていうほど恋人恋人してないし、結局「相方」って呼んでいて、それから「パートナー」に。でも最近は「連れ合い」と言ってます。所帯じみてて一番ピッタリくるなぁと思って。
子どもたちにどう呼んでもらうかも悩みましたが、結局自然にそれぞれの実親を「お母さん」とか「ママ」と呼んで、もうひとりを名前で呼ぶようになりました。
―― お子さん達から見ると、春さんたち親はそれぞれどういう存在なんでしょう?
娘にとってわたしはどういう存在なのか聞いたことないので分からないですが、「ママ(パートナー)には言わないで」とかいって、悩み相談とかを受けたりすることがありますね。内容によって決めているのかなという感じはしますけど、恋バナとかお友だち同士のことだとか学校のちょっとした話とかは、私が聞く係になっているのかも。
進路とか大きな買い物とか、そういった決断の必要なところはパートナーですかね。今回の留学なんかも、息子はパートナーに相談していました。あ、あと、家事は断然あっちのほうが上手いです(笑)。
―― 春さんは、ご自身の家族の家族らしさって何だと思われますか。
血は繋がっていない家族なので、血が繋がるということだけが家族じゃないなというのがあるのかな。
家族はみんな血が繋がっていてあたり前だとか、同じ苗字であたり前とか、そういう外から見たときの「家族」っていうパッケージってあると思うんですけど、でも、別にそんなものなくても、家族って結構成り立っちゃうんだなって思います。
これはLGBTの人に対しても伝えたいことなんですが、LGBTの人のなかには、「そういうラベルがないから自分たちは家族じゃない」っていうふうに言う人もいるんです。
でも、それってわたしは全然違うような気がしていて。ラベルはただのラベルなので、ペロッてはがしたってイチゴジャムはイチゴジャムであるように(笑)、なくたって変わらないものだと思うんですよ。
本当はみんなそれに気づいているんだけど、どうしてもラベルにとらわれちゃって。でも、何にもラベリングされなくても家族というものは成立する。
それが我が家の特徴といえば特徴かもなぁ。
一瞬たりとも、同じじゃない。
――春さんとお話していると、ひとつの家族の中でもいろいろとカタチを変えていっているように感じます。
そうなんですよ。本当に。家族って一瞬たりとも同じものじゃない。
自分が子どもの頃って、家族がそんなに変化しているなんて感じたことがなかったんです。自分が変化するほうだったからでしょうね。家族って、ずっと変わらないものだって思ってた。でも、自分が育てる側に立ってみると、全然違う。
常にずっとゴワゴワ動いていて、動いたまま違う形になっていったり。でも、子育てという意味では役目を終えるときがくるんだって、最近気づいてびっくりしました。「あ、終わっちゃうんだ」って。子どもが小さいときって、これがずっと続くと思ってましたからね。
ずっと続くと思っていたら育児って大変だと感じるけど、いつか終わっちゃうんだって思うと、間違いなくこれはある意味貴重な一瞬でもあって、いずれなくなると思えば気も楽になるなぁって。
――明日からは、息子さんが留学されるわけですもんね。
そう。次はどうなるんでしょうね(笑)。
本当に家族のカタチってどんどん変わるよなぁ。知らなかった。
小野春:
東京在住。法的にはバツイチのシングルマザーながら、同じく子連れの同性パートナーと出会い、現在LGBTのステップファミリーとして生活中。
同じく、子どもを養育するLGBTカップルのためのコミュニティ「にじいろかぞく」の代表を務める。
(取材・編集:三輪ひかり / 文:廣畑七絵 / 写真:三浦咲恵)
前編はこちらからお読みいただけます。
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