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公開 2018年03月30日  

10年後、私はどんな母親になっていたいんだろう。 / 15話 sideキリコ

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ヨリミチビヨリの編集者・吉田と、5年ぶりの打ち合わせに向かったキリコ。子育てと仕事の両立について悩みを打ち明けたキリコに、2児の母親である吉田が教えてくれた「暮らしを客観視するレーダーグラフ」とは!?


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第15話 side キリコ

地方に住んでいるライターさんが多いこと、そしてヨリミチビヨリの吉田さんも義実家で同居していたことを知り驚いていると、吉田さんは「暮らしを客観視する」ある方法を私に教えてくれた。


吉田  「五角形のレーダーグラフを綺麗な形にしたいタイプなんです、私」

キリコ 「…レーダーグラフ?」

吉田  「あ、急にレーダーグラフとか言われても意味わかんないですよね。こういうのです」


吉田さんは手元に置いていた銀色のノートを開き、ボールペンで五角形のレーダーグラフを書いた。


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そして五つの角に「仕事」「子ども」「夫」「自分」「家事」と書き、そうだなぁと言いながら、点と点を線にしていく。

なんでしょうか、これは一体…。

と言いたげな私を置いてけぼりにせず、吉田さんは丁寧に続けてくれる。


吉田  「ほんとざっくりなんですけどね、睡眠時間を6時間として、残り18時間。それをこの5つに分けた時、それぞれにどのくらい時間を使っているかを見るんです」

キリコ 「あぁ、自分が使ってる時間ってことですか?」

吉田  「そうです。グラフを見て、あー、夫と2人きりで話してないなー、今週末は時間を作ろう、とか、自分の時間を作るために夫に相談しようとか。バランスが悪いのが一目でわかるでしょ、これ」

キリコ 「そうですね…」


今の私をグラフにしたら…「育児」と「家事」の時間がほとんどだな。


吉田  「仕事ばりばりやりたい! って人もいるし、それもいいと思うんですけど、私はこのグラフが五角形になるのを目指してるんです。仕事ばかりでも、子どもばかりでもなくて。どれかが飛びぬけてなくていいから、全部バランスよくやる方が私は安定してて」

キリコ 「たしかに育児で自分の好きなことをやれないのはモヤモヤするけど、好きなことだけして子どもをほったらかしにするのもモヤモヤしちゃって…」

吉田 「自分のことも子どものことも夫のことも、全部大切ですもんね。私は子どもを産んで育てる選択をしたけど、自分の好きなことや仕事を辞める選択をしたわけじゃないですし」


みんなそれぞれキャパの広さがあって、その広さの中でやりたいことや欲しいもの、大切なものを自分なりに配分してこなせばいいんですね!

キャパが足りないから諦める、なんてしなくてもいいのかも。


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吉田さんの言葉がドンピシャで心に届いて、私は感動のあまり吉田さんに後光が差してるように見えてきた。


吉田  「あー、あと」

キリコ 「なんですかっ!」


吉田さんは今書いたレーダーグラフの上に「現在」と付け足し、その横にもう一つレーダーグラフを書き、「10年後」とくわえる。


吉田  「10年後このグラフがどうなっていたらいいのか考えるとけっこうすっきりします」

キリコ 「ほほぉ!」


私のリアクションに吉田さんが笑う。


吉田  「わー、こんなに真剣に聞いてくれるなんて嬉しすぎますよ」

キリコ 「もっともっとください!」

吉田  「ほしがりますね、ははっ。こうやってグラフで客観視するといろいろ見えてくるんですよね。家族のこととかも。例えば、義実家で赤の他人って私だけなんだなーとか」

キリコ 「あぁ、言われてみれば確かに…苗字は同じになっても、義両親と嫁はどこまでいっても血のつながりはないですもんね」

吉田  「そうそう。」

キリコ 「私も義理のお母さんをなんとなく苦手に思っているど、お義母さんだって嫁の私は他人なわけだし。きっと仲良くやれれば1番いいだろうなって…」

吉田  「そう。私もそういう考えになったら、なんだか一気に体の力が抜ける感覚があって、義両親のことを2人目の親だと思うことにしたら、いろいろ楽になりましたよ。あとは」

キリコ 「うんうん。次はどんなグラフですか?」

吉田  「あ、グラフじゃなくて、たられば、です。同居しなければ、どうなるかを考えてみたんです」

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吉田さんは再びノートにすらすらと文字を書き始める。


吉田  「…子どもや自分が病気の時、仕事を休む→仕事が溜まる、同僚に迷惑を掛ける。家事もできない→モヤモヤ、イライラする→子どもに当たれないから夫とケンカ→私に理不尽に八つ当たりされて夫の不満が募る→優しい女性にふらりと行ってしまう→不倫が本気になり→離婚…みたいな。はは。極端ですが」

キリコ 「夫と自分だけの時はお互いに大人だし、体調が悪いなら寝ててね、とか言って、自分は好きなことできたし、自分が具合悪いなら寝ていられたし、イライラする要素もないからケンカもしないんですよね」

吉田  「そうそう」

キリコ 「でも子どものこととなるとどうしても、いいよねパパは仕事だけしてればいいから、とか、辛さを夫にぶつけちゃって、全然優しくなれないんですよねー。睡眠不足だとちゃんとした判断も出来なくなったり…」

吉田  「私にとっては同居する大変さよりも、そうやってイライラして夫とケンカになる方がきつかったんです。だからたらればを色々考えてみて、同居することは自分にとってもベストなんだな~と思えたから同居したんです」


吉田さんはノートにバツを書き、同居と書き足した横にスマイル君を描いた。


吉田  「あー、でも、長男を認可外の保育園に入れるって時はちょっともめたな~。ちょうどニュースで事故があったばかりだったのも加わっちゃって」

キリコ 「あれ、そういえば吉田さんってどこにお住まいでしたっけ?」

吉田  「赤羽です」

キリコ 「え!」

吉田  「キリコさん、川口ですよね。近いなぁと思ってたんです」

キリコ 「知らなかった。川を越えてお隣じゃないですか」

吉田  「ご近所ですね。そういえばキリコさんってご実家も旦那さんの実家も遠いんでしたっけ?」


家のことを聞かれ、会話がプツリと止まる。

この話の流れで思い切って、今私がモヤモヤしている「川口では理想の家を購入できない」「夫が名古屋の会社に転職したい様子」「幼稚園問題」を相談してしまおうか…。

吉田さんならきっと何かヒントをくれるはずだ…。

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※ この記事は2024年12月10日に再公開された記事です。

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