―― ちーちゃん、お邪魔します。今日は時間作ってくれてありがとう。久しぶりに会えて嬉しいです。
こちらこそ、ありがとう!私も会えて嬉しい。
―― しほちゃんも大きくなりましたね!
しほ、大きくなったよね。コノビーサロンに行ってた時は、まだハイハイだったけど、たっちもできるようになったの!
「毎日泣いてばかりの産後」そんな私を救った、“会ったこともない人”たち
32,113 View「子育ては孤独だ。」―そういう言葉をよく耳にします。
2017年5月~7月に開催したコノビーサロン2期に参加してくれた田中千恵(たなかちえ)さんも、産後、孤独感を感じていた一人だったと言います。明るく、よく笑うのが印象的だった彼女がなぜ孤独を感じていたのか。またどうやってその孤独感から抜け出していったのか。改めて話を聞きたくて、会いに行ってきました。
出産が「ゴール」になっていた
―― 今日はちーちゃんに、産前から今までのお話を聞きたくてお伺いしたんですけど、しほちゃんを授かった時のお話から、お聞きしてもいいですか?
実は、結婚して1年半くらい経って「そろそろ、子どもをつくることも考えようか」と、夫とちょっとだけ話してはいたけど、当時はまだ、会社の同僚や友だちに、子どもがいる人が少なくて、私自身「子どもがいる生活」がどんなものかなかなか想像できてなかったんです。
だからしほを妊娠してからも、“無事産むこと”がとりあえず目標になっていて。
育児雑誌や妊婦向けアプリで気になって読んでいたのは、「分娩の種類」とか、「お腹の中の赤ちゃんは何ヶ月頃だとこんな状態です」っていうことばかりでした。
ベビーベッドや赤ちゃんグッズも買ってたけど、そういう物理的な準備ばかりして、赤ちゃんを育てている時の自分や家族の状態、気持ちは全く想像できてなかったかなあ。
―― 「出産」がまず、大きな出来事ですもんね。
もう本当に、その通りで。
「とにかくまずは、このお腹の中にいる子を無事に産まなくては!」みたいになっちゃってて、産後の生活に、全然意識がいかなかった。
それに例えば、母乳のこととかも、「産院で教えてくれるだろうから大丈夫だ」とか、「里帰り出産するから母が助けてくれるだろう」とか、その時がくればできるでしょって思ってた部分も、正直あったかなと思います。
休みなく始まる、子育て生活
―― 出産とその後の子育て生活は、どうでした?
出産は、めっちゃ痛かった(笑)!でも、やっぱり感動しました。
出てきてくれた瞬間は、「しほ、ありがとう」って心から思って、自然と涙もでてきて。
でもその時はまだ、産んだ日から赤ちゃんのお世話がスタートするってことを、私はちゃんと理解できてなかったなって思います。
―― よかったら、もう少し詳しく教えてください。
実はね、出産は大変だって聞いてたから、産んだらとりあえず、赤ちゃんと一緒にゆっくり寝よう!アイスクリーム食べてのんびりしよう!くらいに思ってたの(笑)。
でも実際は、休む時間なんてなくて、すぐ、「はいお母さん、おっぱいの時間だよー」って始まるでしょ。
「え、まだ休んでないのに、もう始まるの?」って、元々思い描いていた産後のイメージとのギャップがすごかったんです。
―― たしかに、休む暇もなく子育てがスタートしますもんね。
うん、本当に休む暇もなく…って感じでした。
しかも、おっぱいのあげ方とかは、助産師さんが教えてはくれたんだけど、私、なかなかうまくあげられなくて。
授乳室で一緒におっぱいあげてる他のママたちが上手にあげられるのを見て、「あー、何でみんなあんなに上手くできるのに、私はできないんだろう。ダメなママなのかな」ってすごく落ち込みました。
産後2日目から毎日泣いていた
それで速攻、Amazonで育児書を何冊も買ったりして(笑)。
―― …え(笑)?!
笑っちゃうよね。それだけ必死だったんだと思います。
でも、育児書があることで不安が取り除かれてたかっていうと、むしろ読むごとに不安になっていって…。
―― 情報を得ることが余計、ちーちゃんの不安を大きくしたんでしょうか?
うーん、それもあるんだけど、育児書って、「こうすれば泣きやみます」とか、「新生児のタイムスケジュールは、ねんね2時間、おっぱい、ねんねで…」とか書いてあるでしょ。
でも、しほがよく泣く子だったのもあって、「ここに書いてあることは嘘だ!」って思うくらい、その通りにならなくて。
泣かれる度に、書いてある通りにならない度に、「私のやり方が悪いのかな、私だけができないのかな」ってどんどん不安になっちゃったんだよね。
産後2日目から母子同室だったんだけど、そこからは私も、娘と一緒に毎日泣いてたな。
今でも忘れられないんだけど、ある夜、おっぱいをあげても、おむつを替えても、しほがずっと泣きやまなくて、「助けてください」ってナースコールしたことがあって。
結局、来てくれた助産師さんが抱っこしても泣きやまないから、「今夜はこっちで預かりますね。ママは寝てください」って娘を連れて行ってくれたんだけどね。
その時、私、「ああ、やっと眠れる」って、娘と離れられてほっとしたんです。
そんな自分に気付いて、また、泣きました。
誰もこの“つらさ”を分かってくれない
―― 今振り返ってみて、当時のちーちゃんは何がつらかったんだと思いますか?
んー、正直、なにがそんなにつらかったのって聞かれても、今でもまだうまく言葉にできないんです。
眠れない、わからない、できないことばっかり。
とにかくつらかった。
2週間で14キロも体重も落ちちゃって。
そんな、日に日に痩せていくし、毎日泣いている私を見て、旦那も母も心配してくれて、「大丈夫だよ」、「そんなに気にしなくて、子どもは泣くもの」って言葉をかけてくれたんだけど。
でも私はその時、「誰も分かってくれない」って感じました。
私に必要だったのは、分かり合える人
―― 他に相談できる人や、話を聞いてほしいなと思う人はいなかったですか?
昔からの友人が連絡してきてくれて、それはすごく嬉しかったんだけど、「出産おめでとう!いいなー。幸せいっぱいだね」って連絡をくれた人に、「全然幸せじゃなくて、毎日泣いてる」なんて、言えなかったな。
でもそんな時に、スマホでたまたま育児ブログを見つけて、それにすごく助けられたんです。
―― 育児ブログ、ですか?
うん。たしか、一番最初に見たのはくりこさんの「ギブミー睡眠」だったと思うんですけど、「あ、わたしと同じようなことで悩んでる人がいるんだ」って、すごく救われた。
それから、コノビーとか他の育児マンガも読むようになって、私にとって育児マンガが、子育ての合間の救いと楽しみみたいなものになっていったんです。
―― ちーちゃんにとって、育児マンガが「気持ちを共有できる相手」になっていった、ということでしょうか。
そうそう。「気持ちを共有できる相手」で言うと、育児マンガ以外にももうひとつあるんだけど。
気持ちにちょっと余裕がでてきた時に、産休前に仕事で知り合ったママさんが、「ツイッターでハッシュタグつけると同じ様に悩んでるママ達と繋がれるから、おすすめだよ」って言っていたのを思い出して、ツイッターも始めてみることにしたんです。
たとえば、「#2016nov_baby」ってハッシュタグつけると、同じ誕生月生まれの子を持つママが見つかって、繋がれて。
色んなママの投稿を見ることで、「皆それぞれに悩んでることがあるんだ」、「寝かしつけひとつにしても、色んなやり方があるんだ」ってことを知ることができて、すごく気持ちが楽になりました。
あとは、「抱っこで、腱鞘炎痛い~」とか、「今日も夜眠れない」ってツイートした時に、ファボがついたり、「無理せずにね」ってリプがきたりすることが支えになったなぁ。
ツイッターやるまでは、いつも夜中1人でシクシク泣きながらおっぱいとあげてたんだけど、「みんなで頑張ろう!」って言い合ったりして、つらかった時間が本当に変わった。
その時、「あぁ、わたしは“分かり合える人”がほしかったんだ」って気がつきましたね。
子育てで感じた気持ちを「シェア」する
―― 分かり合える人か。でも不思議ですよね、知らない人と「子育て」っていう、一見すごくプライベートなことを共有するって。
うん、確かに。でも子育ての悩みや喜びとかって、リアルな友だちとか近しい人には言えないこともあると思いました。
知らない人だからこそ言える安心感みたいなものもあったりするかも。
―― なるほど。あとはやっぱり、気持ちを共感できたり、同じ体験をしてきた人というところも大きいのかなと、お話聞いていて感じました。
でもその一方で、“子どもがいるのにスマホ触ってばかりいるなんて子どもが可哀想だ”という意見もあると思うんですけど、気になることはなかったですか?
それはあったなあ。ツイッターで繋がってるママ友とも話題になったけど、産院とかにも「子育て中のスマホはやめよう!」みたいなポスターって結構貼ってあるんだよね。
授乳中に、スマホはだめです!って、じゃあ、ママたちはいつ息抜きすればいいの?って、みんな苦しめられたって言ってました。
私自身も最初は、しほが寝てる時だけにしてたけど、でも今は自分のなかで折り合いがつけられるようになったので、授乳中が限られた最高のスマホタイムになってます(笑)。
もちろんスマホだけじじゃなくて、ツイッターとかインスタとかも、賛否両論あると思うんです。子どもの写真投稿していいの?とか、そんなこと公共の場で言うなとか。
でも、私はこれから自分の周りで出産する人がいたら、他のママたちとこんな方法で繋がる方法もあるんだよってすすめたいなと思います。
私はSNSの場と繋がりによって、子育ての孤独感から本当に救われたから。
(取材・文:三輪ひかり / 写真:中野亜沙美)
「里帰りから戻り、分かり合える人がいるだけではダメだと思った。」
ーその後の生活についてお話ししてくださった後編は、こちらから読めます。
インタビュー内ででてきた、くりこさんの「ギブミー睡眠」
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