満 「2018年1月の家族会議を始めまーす」
奏太 「はーい! ママ、しゅきね」
キリコ 「書記ね。はい。私から」
奏太 「どうぞ」
私は隣に座っている奏太に体を向ける。
キリコ 「奏ちゃん」
奏太 「なあに?」
キリコ 「パパとママね、あの電車の見えるおうちに引っ越したいと思ってるの」
奏太 「あそこ、でんしゃ見えたよね。おうちからね。すごいよねー!」
キリコ 「でも引っ越したら、幼稚園は桜葉になっちゃうの」
私の言葉に奏太が分かりやすく不機嫌な表情になる。
奏太 「やだ!」
そんなこと想定内だ。ここでやめないで色々聞いてみよう。
夫と目を合わせてうなずき、私は続ける。
キリコ 「奏ちゃんがいやなのは何でだろう?」
奏太 「うーん、だってー、イヤなんだもん」
キリコ 「川口つばさがいいから?」
奏太 「うん」
キリコ 「じゃあなんで川口つばさがいいんだろう?」
奏太 「うーん、だってー、川口つばさはー、リョウくんがいるしー、カノンちゃんもいるしー、他にもいーっぱいお友だちいるんだよ。それに麻美先生もいるしー。滑り台もあるしー。ぞうさん公園もあるしー」
満 「奏ちゃん、桜葉をイヤだっていうのはそれの反対ってことだよ」
奏太はハンバーグを口に入れたまま、不思議そうに夫を見つめる。
奏太 「はんたい?」
満 「桜葉には、知ってるお友だちがいない、先生も知らない。だからイヤなんじゃないの?」
奏太 「うん、そうそう!」
満 「でもね、桜葉にも滑り台はあるし、幼稚園の近くに公園もあったじゃん。パパと言ったところ。覚えてる?」
奏太 「うん」
キリコ 「あと電車の見えるおうちもあるよね」
奏太 「うん」
キリコ 「だからさ、今度はママと奏ちゃん2人でおばあちゃんちに泊まりに行ってみない? それでさ、電車の見えるおうちを見に行って、近くの公園も行って、桜葉の滑り台も滑ろうよ」
奏太 「うーん」
皿の上のにんじんをフォークで転がし始めた奏太に、夫はスマホでネット画像を見せる。
公開 2018年04月27日
これからの家族の生き方を、家族みんなで決める。 / 22話 sideキリコ(2ページ目)
33,329 View引っ越しは奏太のためによい選択なのだろうか。悩むキリコは、奏太を連れて帰省した実家で、両親が別居していた理由を知る。そしてその夜、卒業アルバムを開き、当時書いた将来の夢を思い出す。
※ この記事は2024年10月17日に再公開された記事です。
#キーワード
連載「家族の選択」
#22
さいとう美如
おすすめ記事