義両親が奏太をスキーに連れてってくれて、私はのんびりできた翌日。
にいにのおさがり補助輪付き自転車に乗った奏太と公園に行くと――。
うわ、やっぱりいたか…。
奏太の自転車を借りたがって泣いてしまった圭吾という名前の男の子と、下の子を抱っこしたママが一昨日と同じように砂場で遊んでいた。
奏太 「あ…」
圭吾 「あ!」
奏太を見つけた圭吾が猛スピードで走り寄って来る。
は、はやい…!
圭吾ママ「あ! 圭吾!」
圭吾ママが慌てて立ち上がる頃には圭吾は奏太の目の間に来ていた。
素直に仲良くなれない。そんな気持ちもわかるんだけど。 / 24話 sideキリコ
40,881 View奏太が新しい環境に慣れるため、奏太を連れ満の実家で過ごすことになったキリコ。じいじの家で楽しく過ごす奏太だが、プレには行きたくない!と言う。そして近くの公園で出会った男の子、圭吾ともなかなかうまく行かず…。
第24話 side キリコ
そして突然、奏太に手を差し出すから、私もちょっとびっくりして「どうした!?」と思わず声に出す。
圭吾 「じてんしゃ貸して。これ貸してあげるからね」
…ん? なんだ?
圭吾の手には赤色のソフビ人形が握られている。
これがもしやこの間言ってたレッドコマンドかな?
確かに奏太の自転車と配色が同じだわ。
納得していると、エルゴで抱っこした赤ちゃんの足をゆらゆら揺らしながら圭吾ママが近づいてきた。
圭吾ママ「こら、圭吾! すみません…」
キリコ 「いえいえ…」
圭吾 「ねーえ、じてんしゃ貸して。これ貸してあげるって言ってるでしょ」
奏太はレッドコマンドをチラリと見て、そっぽを向く。
奏太 「…いらない」
圭吾 「なんで!」
奏太 「…あっちいって」
キリコ 「こら、奏太!」
興味ないからってそんな言い方はよろしくない。
そんなんじゃ4月からの幼稚園生活が心配だわ!
悲しそうにレッドコマンドを見つめている圭吾に気づき、私はしゃがみこんで圭吾に視線を合わせる。
キリコ 「これ好きなの? かっこいいね」
圭吾 「うん、レッドコマンド!」
奏太 「かっこよくない!」
キリコ 「ちょ…」
圭吾 「かっこよくないって言った!」
キリコ 「あー、ごめんね。ちょっと奏ちゃん、ごめんねしなよ」
奏太 「だって東西線のほうがかっこいいんだもん」
あーもうお互いの好きなものを認めようぜ。平和に遊ぼうよ。
すると圭吾ママが少し腰をかがめて奏太に微笑む。
圭吾ママ「東西線…っていうのが好きなんだね。どこを走ってる電車なの?」
奏太 「…」
キリコ 「あ、東京の…」
圭吾ママ「あーそうなんですね。奏太くん、詳しいんだね、すごいね」
圭吾ママと一切目を合わせようとしないけど、やっぱり口元がニヤついてるじゃないの。
素直に喜べばいいのになぁ。誰に似たんだろ。
奏太 「だってぼくはいーっぱいでんしゃ乗ったことあるもんね、ママ」
キリコ 「あー…そうかな?」
圭吾ママ「すごーい。東京に行ったことあるんだぁ」
キリコ 「…あ、家が埼玉なんです。夫の実家がすぐそこで」
圭吾ママ「あぁ、そうなんですね。……」
そう言ったあと圭吾ママがハッとした表情になり、私をじっと見つめてきた。
…ん? 何か顔についてますかね? 髭…生えてましたかね?
おや、目が泳いでますよ? ちょっと待って。
なんか変なこと言っちゃったかな?
ほんの数秒の間固まっていると、圭吾ママがゆっくりと口を開いた。
圭吾ママ「あの…間違ってたらすみません」
キリコ 「…なんでしょう?」
圭吾ママ「この間、桜葉幼稚園のプレに来てませんでしたか?」
キリコ 「え? あ、はい! 行きました」
圭吾ママ「あー、やっぱり。同じクラスでした。泣いちゃってたから…」
え、あー…。あの場にいたんだー。
なるほど…。
ってことは、圭吾は同い年なのか。
奏太と背格好が同じくらいだもんね。
キリコ 「うちだけでしたよね。泣いてたの…」
圭吾ママ「いえいえ! うちも教室の中で泣いてましたよ。園庭の滑り台がやりたくて」
話ながら思わずうつむいていた私は驚いて顔を上げる。
キリコ 「え! そうだったんですか? いっぱいいっぱいで気づきませんでした」
圭吾ママ「男の子はなかなか座ってられないですよね。ちゃんと先生のお話を聞ける子を見て、驚いたくらいです」
あー、そうだったのかー。
やっぱりそうだよね。
あー、なんかほっとする。
圭吾 「ねぇ、じてんしゃ貸して! ぼく、救急車も持ってるからー」
奏太 「いやだ! あっちいって!」
圭吾 「…う、わーん!」
…まだ続いてる。
奏太 「ママ! はやくあっちいこう!」
キリコ 「えー…すみません、じゃあ」
圭吾ママ「はい、じゃあまた」
微笑んで手を振ってくれて、私も思わず振り返す。
話しやすい感じだったし、もっといろいろ話してみたかったのになぁ…。
なんで子どもたちはもめてんのかなぁ…。
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