――その夜、奏太と寝床に入るとカメラ通話で夫に電話をかけた。
今日のプレの出来事を奏太と共に夫に伝えると、夫はうんうんとうなずいて、ひと呼吸置いてから口を開いた。
満 「パパとママと奏太…3人で楽しく暮らしていけるようにさ、やっぱりあの電車の見える白いおうちに住みたいな、と思うんだけど、奏太はどうかな?」
奏太 「うん、すみたい!」
キリコ 「住むなら幼稚園は桜葉になるんだよ?」
奏太 「うん!」
キリコ 「リョウくんやカノンちゃんと同じ幼稚園に行けなくなるんだよ?」
しつこく確認する私の肩に奏太が小さい手を置いた。
奏太 「だいじょうぶだよ、ママ。みんなぼくんちに遊びにきてね、っておてがみあげるから」
キリコ 「本当に本当?」
奏太 「ほんとうだよ。とおくにいっても、みんなずっとハル子ちゃんとハル子ちゃんのママとお友だちってママいってたでしょ? ぼくとママもおなじだよ。だいじょうぶ」
確かに私はあの時、涙と鼻水まみれで言った。
「離れていてもずっと友だち」だと。その気持ちは今もまったく変わっていない。
だから川口のみんなと離れたって、ずっと友だちでいられる。
そう信じられる。
満 「奏太、送別会の時のこと覚えてたんだねー。すごいじゃん」
奏太 「あとさ、けーごくんに、ぼくんちあそびにきてっていっちゃったし、けーごくんのおうちにもあそびにいくし、いそがしいんだよ」
満 「ははっ」
キリコ 「1番忙しくなるのは私なんだけどね。桜葉に願書だして、川口つばさにキャンセル…制服のサイズ合わせもあるだろうし…あぁ」
満 「俺は江原にあの家買うって電話するね。誰かが申し込みしてなきゃいいけど」
キリコ 「ちょちょちょ、怖いこと言わないでよ。今すぐ江原さんに電話して!」
公開 2018年05月22日
これから先も、家族で話し合いながら進んでいくんだ。 / 最終話 sideキリコ(2ページ目)
24,834 Viewフォトスタジオへの転職の道を進むことに決め、社長とケンゾーにも退職したいと伝えた満。新しい幼稚園に通うのか、奏太の選択は…?
※ この記事は2024年10月08日に再公開された記事です。
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連載「家族の選択」
#29
さいとう美如
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