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公開 2018年09月14日  

結婚式にふさわしい花束って、どんなもの?/ 娘のトースト 6話(2ページ目)

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中村さんからカミングアウトを受け、結婚式の装花を頼まれた庸子。中村さん、パートナーの田端さんと一緒に、店内で花を選ぶことになった。庸子はそこで、ある質問を投げかける。


思ってたより大きな声が出て、2人が同時に視線をあげて私を見た。こんな立ち入ったことを聞くのは失礼かもしれない。だけど、どうしても聞いてみたかった。

「ご両親に、お互いのことを伝えた時って、どんな反応でした?」

顔を見合わせる2人に頭を下げ、「ごめんなさい。でも、親として、気になってしまって…」と言うと、中村さんは穏やかに首を横に振り「大丈夫ですよ」と答えた。

「親の反応は、それぞれですね。うちは、比較的衝突はなかったですが、田端の方は結構大変だったし」

「な」と顔を向ける中村さんに、田端さんは「うん」とうなずいた。

「うちの場合は、大学生の頃に親から聞かれたんです。薄々あやしいと思ってたんでしょうね。ずっと彼女もできないし、もしかしてって感じで。それで正直に打ち明けたら、めちゃくちゃ否定されたんです。『そんな風に育てた覚えはない!』って言って。で、こっちも聞かれたから答えたのにって、大ゲンカですよ。数年は、ほとんど実家にも帰らなかったですね」

「そうなんですね…」

「でも、今にしてみれば親の気持ちもわかります。当時は許せなかったですけどね。それでもだんだん時間をかけて話ができるようになって、今は、理解してくれています。それで、歳をとったからなのか、今度は『ずっと息子の結婚式に出るのが夢だった』とか言い出して」

まったく勝手ですよねー、と言って田端さんは笑った。「でも、それがきっかけでこうして式を挙げることになったし、なんだかんだ言って感謝してるのかな。勝手なのは、お互いさまですしね」

いつか、唯もこんな風に私のことを語ってくれる日が来るのかな。そんなことを考えたら、鼻の奥がツンとしてきた。

「楽しみですね、結婚式」

そう言ったら、本格的に鼻水が出そうになって、あわてて鼻をすすり、今度は中村さんに話を向ける。

「中村さんのご両親は、最初から理解があったんだ。それも素敵。すごいなあ」

しみじみとつぶやくと、中村さんは答える。

「どうなんでしょうね。きっと、言わないけど、親の方はいろいろと思うこともあったと思うんですけど。もともと干渉してくることの少ない人たちで。パートナーのことに関わらず、なにか反対されたことってほとんどないんです。改めて考えると、ありがたいなあと思いますね。子どもの頃は、それを物足りなく感じたこともあったんですけど」

言葉を切り、「僕も勝手ですね」と中村さんは笑う。

私は、ゆっくりと首を横に振る。

「それにしても、なんの花にしたらいいのかな…」中村さんが、ぐるりと店内を見渡しながらつぶやいた。

「親の好きな花なんて、さっぱりわからない」

「田端さんと同じバラにします?」

「うーん、そういう感じでもないような」

中村さんは、真剣な顔をして花をひとつ一つ眺めている。

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「好きな花じゃなくて、相手のイメージに合わせたお花でもいいかも」

アドバイスのつもりで私が言うと、「あ、それなら」と、すぐに中村さんはカウンターのすぐそばに置かれた花束に視線をやった。

「こんな雰囲気がピッタリだなと思ったんです」

それは、昨日の休日、唯がつくった花束だった。

「それ、唯がつくったんです」

私が言うと、中村さんは「唯ちゃんが…」とつぶやき、一人で深くうなずいた。

そして、水色と白のその花束を指差し、

「僕の分の花束、唯ちゃんにお願いできませんか?これと同じものを」

と言った。


次回、「庸子は中村さんからのお願いを、唯にうまく伝えられるのか!?」

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※ この記事は2024年10月17日に再公開された記事です。

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