「本当の頑張らない育児」書籍出版記念として開催された、著者・やまもとりえさんと、玉川大学教育学部・教授である大豆生田啓友さんのトークイベント。
[前編]・[後編]では、本当の頑張らない育児の物語をベースに、ご自身の子育てや現在の子育て事情に対する思いについて、お話していただきました。
ここからは、すくすく子育てさながらの大豆生田先生への子育て相談タイムへ突入していきます。
子どもを怒ってしまった後に、すぐ「怒りすぎてごめん」と謝るのはダメですか?
50,113 View8/18(土)に開催した、本当の頑張らない育児の書籍出版記念イベントのレポートを、前編・後編・番外編にわけてお届けします。番外編の今回は、やまもとさんから大豆生田先生への「子育て相談」です!!
「場面転換が苦手」な長男
やまもとさん(以下:やまもと):もう今日はこれの為に来たぐらいなので(笑)、本当に嬉しいです。リアルすくすく子育て!
大豆生田先生(以下:大豆生田):何の相談をされるのか予習してきていないので、もしきちんとお答えできなかったらごめんなさい。
やまもと:早速なんですけど…いいですか?
大豆生田:はい、どうぞ。
やまもと:長男が「場面転換が苦手」なんです。
大豆生田:息子さん、おいくつなんでしたっけ?
やまもと:この前、4歳になりました。
たとえば「お出かけするよ」って伝えると、出かけるまでは「やったやったー!外行きたーい!!」って喜ぶんですけど、ドアを開けた瞬間に「イヤだ」って言い始めて、もう全然動かないってことがよくあるんです。
保育園でも、「プールプール」って楽しみにしてたのに、さあ入るよ、いざっていう時になると、「もう入らない」って言いだしたりするらしくって。
場面が変わる時や新しい事をする時とかに、石のように動かなくなっちゃうんですよね。
それが性格なのか、それとも今の年齢によるものなのか、知りたいです。
大豆生田:今まではどうでした?
やまもと:うーん、今まではそんなになかったんですよ。
イヤイヤ期の時はそういうのも結構あったかなとは思うんですけど、その後めっちゃくちゃいい子になって。
でもそうだなあ、弟が生まれて、引っ越して保育園に入って…って、急にバタバタバタっと環境変わってから、もうなんかちょっと場面が変わるってなると、「ヤダ」って言いはじめるようになりました。
あ、それ?もしかして理由それですかね(笑)?
大豆生田:うんうん。場面が変わることの例で、僕はよく「ディズニーランド」の話をするんですけどね。
ああいうテーマパークって、行くまでは夢の国ですごくワクワクするけど、行ったらこーんな頭のでかいのがドーンと出てくるわけですよね。
やまもと:あははは、はい。頭でかいの(笑)。
大豆生田:ちょっと表現が悪かったらごめんなさいなんですけど、これはいろんな子達によくある話なんですよ。それ見ると、もう入り口で固まっちゃう。
あんなに楽しみにして、親も一緒になって「今日すごく楽しみだねー」って言っていたのに、あのでっかいのがドンと現れた瞬間、固まって動けなくなる子ってたくさんいます。
大豆生田:その時、子どもたちに何が起きているかというと、それまで思い描いていた事と、実際に目の前で起こっている事のギャップがすごく大きい状態にいるんですよね。
やまもと:あー、それすごく分かります!脳内で考えている事と、実際に起こる事にギャップがあると、泣き出したりします。
大豆生田:うんうん。
やまもと:誕生日の時も、イチゴのショートケーキが出ると思ってたのにチョコだったりしたら、「あああーーー、違うー」ってなっていました。
大豆生田:そういう違いを受け入れるのが比較的スムーズな子と、感受性が豊かでデリケートな子と、やっぱりタイプでいうとあるんだろうと、私は思っています。
やまもと:デリケートですね、じゃあうちの長男は。
大豆生田:デリケートなお子さんは、いろんなところで一回立ち止まっちゃうことが多い。
だから気持ちとしては自分でも、「ああ、行きたい」って気持ちももちろんあったかもしれないし、場合によっては、「ママが行って欲しいって思ってそう」と期待に応えて一歩を踏み出してるかもしれないんだけど、実際にそれを目の前にしちゃうと、びっくりしたり、不安になってしまったりする。
さっきはディズニーランドのキャラクターの話をしたけど、それ以外にもああいう場に行った時に、「人の混雑さ」に立ち止まる子たちもいます。
近所の公園に行った時にも、あんなに楽しんで今日ブランコやるのって言ったじゃんっていう子が、他の子どもたちを見た瞬間に、はたと固まることがあるんですよね。
多分いろんなイメージが浮かぶんでしょうね。僕が乗ってるブランコ取られちゃうんじゃないかとか。
やまもと:なるほど。それは直さなくてもいいものですか?
大豆生田:感受性の豊かさなので、直すものではないですよね。
子どもも大人もそうなんだけど、一人ひとりいろんな特徴ってあると思います。その特徴が強いがゆえに、生きにくさを感じる子もいます、もちろん。
そういう時に、どう乗り越えていくかっていうのはその子自身が自分なりのやり方で見つけていくので、無理やり越えさせるものではない、と思いますよ。
やまもと:そうですね、たしかに。
実は、私と長男は性格が似てるんです。私も新しい環境とか場所に慣れるのに、すごく時間かかってしまうタイプで。それこそ、3年くらい(笑)。
なので、中学とか高校は卒業する頃にようやく慣れるって感じだったので、本当に楽しくなくて。もう常に暗い感じだったのが、30過ぎてからようやく人生が楽しくなってきたんです。
大豆生田:そうだったんですね。
やまもと:だから、息子も辛い思いをしたら…と心配になることもあるのですが、私よりか息子は早いかもしれない。保育園に慣れるのに3ヶ月だったので(笑)。
大豆生田:親をやってるとやっぱりね、「今のこの状態この後も辛いままなんじゃないか」って心配になることっていっぱいあると思うんですけど、それ位の感じで受けとめるのがいいかもしれないですね。
終わりを想像して、泣いてしまう
やまもと:あと、今回せっかく東京に来たので、それこそ「ディズニーランドに行こう!」ってすごく楽しみにしてたのに、入ってすぐ「帰りたくない」って泣き出すということがあったんです。
こっちからしたら、「まだ入ったばっかだよー」と思っちゃって。
大豆生田:へえー!やっぱり、息子さんはイマジネーションが豊かなのね。
やまもと:そうですね、そう受け止めます。イマジネーションって言います、これから。
大豆生田:うん、そうですよ。「なんでそう思った?」って僕、息子さんにインタビューしたいくらいです。
何が頭の中で起こってんのかっていうのが、気になりますね。
やまもと:あー、そっかー、そう聞いてあげれば良かった。
これも私と似てるんです。私の場合は、恋愛がちょっとそうで、あのー、付き合ったばっかりの時に。
大豆生田:終わっちゃうんじゃないかって?
やまもと:そう。付き合いはじめが、一番ウキウキするはずなのに、一番悲しくて(笑)。
数ヶ月してからようやく慣れてきて、普通に話ができるって感じでした。
大豆生田:なるほど。だからやまもとさん、こんないい漫画作れるんですねえ。
やまもと:ええ、そんな。ありがとうございます。
大豆生田:そのイマジネーションがあるから、こんな物語が描けるんですよ。やまもとさんも息子さんも感じ方がすごくユニークなんだと思うんですよね。素敵。
やまもと:ありがとうございます。大豆生田先生、すっごい褒め上手。
大豆生田:褒め上手っていうか、いろんな子どもさんと会っていると、一人ひとりのユニークさに「なるほどねえー、すごい!面白いわー!」ってなるんですよ。
まあ、人の子どもだからそう言えているのかも知れませんけどね。
やまもと:でもそういう風に捉えると、すごく面白いエピソードな気がしてきました。
怒った後にすぐ謝るのはダメ?
やまもと:もう一つは、私自身の事なんですけど。
寝不足や疲れてる日は、感情のコントロールがうまくできなくて、そんなに怒る場面じゃないのに、カッとなって怒ってしまうことがあるんです。
そういう時に、あ、怒りすぎたなと思って「ごめん、さっきは怒りすぎたわ」ってすぐに謝るんですけど、うちの父からは「それはやめとけ」って言われるんですよ。
大豆生田:なんででしょうか?
やまもと:その、親の威厳がなくなるし、子どもも怒った人が急に謝ると、びっくりするから良くないって。やめた方がいいんですかね?
大豆生田:僕ね、すくすく子育てでもこういう相談に答える時は、まず、「子どもの側だったらどういう風に受け止めているか」っていうことを、一生懸命想像するんです。
子どもの側からすると、怒ってる訳だから負のメッセージではあるし、大好きなママやパパからそれを受け取るわけですから、気持ちとしてはがくんと下がるんだろうと思います。
怒られるよりは、笑顔で受けとめてもらえるほうがいいんですよね。大人が手を出さないってことも大事。
でもね、よく「あんまり感情的に怒っちゃいけない」、「冷静に叱りましょう」って言うんだけど、実際は子育てしながら感情的に怒らないなんてありえないって、僕は思っていてね。
だから、その時にああ言い過ぎたなあと思って、「ごめん、ママ言いすぎちゃった」って伝える事は、「ああ、やっぱりママは僕の味方だったんだ」っていうことが確認できるわけですから、子どもの側からするとほっとするだろうし、嬉しいことだと思います。
それをすぐ伝えるのかどうかっていうのは、どっちでもありだと思います。威厳ってそうやって作るものではないんじゃないかなあ?と思いますし。
やまもと:大丈夫ですか?
大豆生田:あんまりダメとは思わないなあ。
やまもと:自分でも想像した時に、怒った人がいきなり「あ、ごめんね」って言ったら、ちょっとびっくりするかなあとは思うんですけど。
大豆生田:心理学では、「ダブルバインド」といって、逆のメッセージを同時に与えられるのは良くないって言われているんです。愛していない子に、「こんなにあなたを愛してるわよ」って言うとか、そういう状態ですね。
だから、ダブルバインドではないんですよね、今回のやまもとさんの場合は。
やまもと:あー、どっちも素直に思ってる事だし。
大豆生田:そうなんです、そうなんです。
やまもと:最近は、怒ったあとに「ごめんね」って言うと、「許すよー」って言われるんですよね。そこまでがワンセットになってる感じで(笑)。
あんまり怒ることの効き目がなくなってきてもいるんですけど。
大豆生田:(笑)。まあでも、そんなもんですよ。
大豆生田:それに子どもは、親子関係の中だけで育つわけではないんです。
僕は研究の一環で、保育園のお子さんをよくビデオカメラで追うんですけど、ドラマですよ。
「子ども達、こんなに頑張ってるのか」ってびっくりするくらい。これがなかなか見えにくいんですけど、大人の社会と一緒です、会社とおんなじ。
やまもと:うんうん。
大豆生田:遊びのなかで、「相手とどうしたら上手くやれるか」とか「この困難をどう乗り越えるか」とか、そういうことをやっているんです、子どもたちって。
だからそう考えると、相手と折り合うことや、上手くいかなくても乗り越えることだとか、そういう事は、家庭以外のところでもたくさん経験しているので、「私の育て方のせいで、こうなっちゃうんじゃないか…」っていう風に、あまり思わなくていいと思っています。
やまもと:そっか、なるほど。
大豆生田:僕ばかり、おしゃべりしすぎてますね、ごめんなさい(笑)。
やまもと:いえいえ!ありがとうございます。
やまもと りえ
天パの長男、親方風な次男、なで肩の旦那さん(4歳年下)、動かないネコ(トンちゃん)と暮らす大阪在住の漫画家。
喜怒哀楽の育児の日々をつづったブログ「今日のヒヨくん」でトップブロガーに。
著書に『Aさんの場合。』『Aさんの恋路。』(ともに祥伝社)『今日のヒヨくん 新米ママと天パな息子のゆるかわ育児絵日記』(KADOKAWA)がある。
大豆生田 啓友
玉川大学教育学部・教授。
専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。
著書に『子育てを元気にすることば』(エイデル研究所)、『マメ先生が伝える 幸せ子育てのコツ』(赤ちゃんとママ社)など多数。NHK「すくすく子育て」に専門家として出演し、あたたかくも親にとって気づきのあるコメントが人気。2男1女の父。
文:三輪ひかり / 撮影:高坂美智子
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