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公開 2015年04月21日  

[第2回]役割が逆転しているだけ。女性起業家とイクメン主夫の新しい子育てと働き方

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様々な家族のあり方をお伝えする連載企画、「家族のなか、みせちゃいます!」今回は、6歳と3歳の二人の男の子を子育て中の夫婦を取材しました。奥さまである高沖さんは株式会社ポーラスタァでママ向けメディアをつくられている女性社長。旦那さまである増田さんと一緒に会社を経営されており、増田さんが主夫を担当。最近東京から長野へと移住した高沖家にお話しを伺いました。


流れのまま起業をした

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「私たちは事実婚で、一緒に住み、そのまま子どもが生まれてきたという感じです。必要性を感じないというか、形に縛られないというか。そのスタイルが合っているように思います。もちろん、始めは親や周りのみんなが賛成というわけではなかったですが、今はこの暮らしを楽しんでいます。」



そう楽しそうに語るのは、株式会社ポーラスタァを起業し社長をしている、奥さまの高沖さん。



「夫とはもともとオールアバウトで一緒に働いていて、私が当時の編集長と喧嘩してしまって(笑)とりあえず辞めちゃったんですね。まだ子どももいなかったし身軽だった上に夫も退社すると言うので、二人でフリーランスでやっていけばいいやと思っていたんです。たまたま最初のお客さんがマイクロソフトで、『企業としか仕事をしない』と言われてしまったので、会社を起こすことになりました。」



いわゆるベンチャー企業がお金を調達してきて事業計画を立てて会社を起こすという形ではなく、"流れのまま"起業されたお二人。

子どもがいない女性がこれから子どもを持つことにもっと夢を持てるような媒体をつくりたいと思ったのがきっかけで、高沖さんご自身が妊娠された時に「ニンプス」を創刊されました。

子育てを軸にした働き方を推進

「社員は育休を取得している人を含めて8人で、全員がママ。全員毎日は来ず、週2や週3だけオフィスに来てもらっています。子どもが熱を出しちゃっても、今日明日は休んで明後日会社に行けばいい、という働き方だと、お互いに気を遣わなくていいじゃないですか。

始業時間もしっかりとは決めていなくて、だいたい10時〜16時勤務。遠方の社員は自宅勤務の方もいます。小学校に上がった子どもたちは学童になるので、セキュリティの点に注意しながら、自宅勤務も奨励しています」

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▲社員とその家族でバーベキューをした時の様子

何とも子育て中のママに優しい会社の仕組みですよね。それでも会社の立ち上げ期は下請けだったこともあり、『明日の朝までにこれをなおして』とクライアントさんから言われた時に対応しきれずつらかったことも。



「『みんなでできる範囲で利益を上げて、子どもに誇れる仕事をしよう』という目標が今は定着していますね。その目標が共有できてからは、おかげさまで、私たちの考えを理解してくださる取引先が増え、仕事が進めやすくなりました」

困った時に守ってはくれないが、一方融通がきくのも"社長業"

子育てと社長業の両立なんて、忙しすぎて大変なのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか。本当のところを高沖さんに伺いました。



「大変でしょう?と周りから言われることは多いですが、私はむしろその逆で、『社長』というのは、お母さんに向いてるんじゃないかなと思っているんです。なぜなら、時間の融通がきくから。最後に責任を取るのは自分自身なので、例えば3日休んじゃっても、それを取り返せる自信があれば休んでも大丈夫なんです。



もちろん大変なのは大変で、起業して最初のころはほとんど休みはなし。原稿を書いた翌日に長男を出産し、また長男が寝たら原稿を書いていましたね。スリングで抱っこしながら原稿を書いたり。その当時は『この子を食べさせなきゃ』って、焦っていました」



確かに、会社の就業規則や有給日数に縛られることがなく働けるのは良い環境かもしれませんが、やはりタフさが要求される仕事、ということには変わりないようです。

今や「主夫」だが、初めから「イクメン」というわけではなかった

そんな高沖さんを支えるのが、旦那さまの増田さん。『主夫』になったきっかけは何だったのでしょうか?



「夫は上の子が生まれて生後8ヶ月くらいまでは普通のお父さんで、仕事から帰ってくるのも遅かったです。そうして私ばかりが家事育児をしていると、一方で会社が立ち行かなくなってしまうので、さすがにしびれを切らして『全部やって!』と怒りまして(笑)

やらざるを得なくなってから、夫が少しずつやってくれるようになって。1年くらいして気がついたら、何でもやるようになってくれていたんです」

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隣ではにかむご主人の増田さん。

奥さまの高沖さんは続けます。



「世の中の人って、『子どもを産んでママになったらママ業ができるようになる』と思っているかもしれないけれど、そんなわけないじゃないですか。初めてで分からないし、泣いたら困るし、自分も寝たいし、ご飯も食べたいし。お母さんだけがやる必要はないと思うんですよね」



子どもが0歳のとき、ママも0歳。

ママ業を習得していくためには時間もかかりますし、分からないことばかりですよね。それがパパとなるとなおのこと、子どものお世話ができるようになるには途方もない道のりがあるように思いますが、増田さんはどのように習得されたのでしょうか。



「僕はやり方があっているかわからないけれど、自分なりにお世話を一つひとつやっていければ、できるようになっていました。最初は必死でしたけれどね。ご飯も僕がだいたい全部作ります。妻がいない時は100%主夫をしていますね。変わっていると言われますが、保育園に来ているママさんと同じですよ」



増田さんはさらに続けます。



「とはいっても、5年前なんかは僕のようなスタイルはメジャーではなくて、保育園でも先生の対応がたどたどしかったり、他に全然パパがいなくて寂しかったです。最近は毎朝お父さんがお見送り、という人も多くなりましたね。公園や小児科にもお父さんが増えましたし、それはすごく良いことだと思います」

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▲お子さまの爪切りをしているご主人増田さんの様子

パパとママの役割が逆転しているだけ

まだまだ一般的ではない、高沖家の共働き子育てスタイル。不安になったり、悩むことはないのでしょうか。



「今でも時々、お母さんとしてダメなんじゃないかと思う時はありますよ。

ずっと働いていると、疑問を感じるようになるんです。夜帰ってきて寝るだけになってしまうと、せっかく子どもがいるのに、なんだろうなと。『これだ!』という明確な答えは今もないですが、例えば仕事ばかりしているなと感じたら、16時にお迎えに行ってみたり、平日どちらかが休んで遊びに行ってみたり。いろいろ試して模索をしながら、我が家なりの”チューニング”をしています」



それでもなかなか折り合いがつかない時には二人で話し合いをして、お互いの考えをすり合わせることもしているとのこと。



「周りには珍しがられたり、『パパが積極的に育児をしていて良いよね』って言われることもありますが、ただ役割が逆転しているだけで、実はどの家庭とも一緒なんですよね。話し合いを重ねながら、これが私たちの普通だよね、ちゃんとやれているよね、と確認しあうことが大切。これからも私たちらしい家族の形を模索できればと思っています」

子どものことを考えて長野へ移住

共働きスタイルも珍しい高沖家ですが、さらに今年、東京から長野へ移住されたとのこと。その気になる理由は・・・



「東京で子育てをしていると、自分が子どもを怒るようになってしまっているな、と思って。ここで言う『怒る』っていうのは、自分は怒りたくはないけれど怒ってしまう、という意味のこと。でも長野に帰省していると、自分があまり怒らないでいられることに気がついたのです。



例えば東京に住んでいる時は、交通機関を乗り継いで保育園に通っていたのですが、騒いだ場合など怒らざるを得なくて・・・でも子どもって、騒ぐものじゃないですか。それが長野だと、その点がとても楽なんです。ゆるいというか、子どもがいて当たり前とみんなが思っているんですね」

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帰省時の気づきから、移住を決心した高沖家。移住するなら小学校に入るタイミングが最後だと思い決意したとのこと。



「マンションの更新も迫っていたので、とりあえず解約してしまって(笑)それから長野のお家ができるまでの1ヶ月は、家族で海外を旅して回ったんですよ。もちろん仕事もしていましたが、子どもとゆっくり過ごせて良かったです」

我が家の子育て論:自由に育ってほしい

「子どもが4歳の時に小学校のお受験も考えたのですが、優等生を育てる感じがして、結局受験はしませんでした。なんというか、公園が好きなら公園で遊んでいたらいいし、勉強が好きなら勉強をやってもらえばいいし。子どもがやりたいように自由に育ってくれればいいなと、私は思います。」



そう語る高沖さんに対して、ご主人の増田さんは・・・?



「僕自身が静岡で自然に囲まれて育ったこともあって、自然から教えてもらうことって、とっても多いんじゃないかなと思うんですよね。虫の捕まえ方とか、学校では教えてくれないじゃないですか。

お受験って、いかにおとなしい、良い子にさせるかみたいなのがありますよね。好きなご飯は『おにぎり』と答えてしまうと家庭の質が見えるというか(笑)。でも別におにぎりが好きでも良いよねっていうのが我が家の答えでした。」

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インタビュアーまなしば的まとめ

「まずはやってみる」という女性社長の高沖さん、そしてそれを全面的に支えて一緒に取り組んできた増田さんにお話を伺いました。高沖さんは謙遜されて「先のことはあまり考えられていない」とは言うものの、旦那さんの増田さんからみれば「風を読んでいる、ニーズを汲んでいる」とおっしゃっていました。そんなお二人の素敵な関係こそが、会社も子育てもうまく両立する秘訣なんだろうなと思いました。



よく、家事育児に協力的なイクメンな旦那さんは良いなって、世間的に言われますよね。でもそれは、お互いのことを尊重し、きちんと会話できているからこそ、できることなんですよね。



ママが社長、パパが主夫というスタイル。ただ役割が逆なだけ。



これもまた新しい家族のあり方だと、お二人をインタビューして強く感じました。

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