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公開 2018年11月17日  

出産中になぜか頭に浮かんだ「おから」の話 <投稿コンテストNo.89>

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人って、すごーく大変なときでもまったく関係のないことを考えていたりしますよね?ふるさんが出産中に頭によぎったのはおから。気になる出産とおからの行く末は?

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28056005084

>【第一話】から読む


出産予定日2日前。

私の初産は、破水から始まった。

22:30、寝る前に歯を磨いてたら、お腹の中の、今まで感じたことのない部分で、パキっという音。

しばらくして、さーっと生暖かいものが流れ出てきてきた。あーって、トイレ直行。

そのまま動けないほどダバダバと流れ出てくる。慌てる旦那に携帯を持ってきてもらい、便座に座ったまま、病院とタクシー会社へ電話。

ドタバタ入院準備をして、出発。

準備は事前にしっかりしていたし、忘れ物もないはず。

でも、家を出るときに叫んだ。「あー!!おから!!」


特に問題も起きずに臨月を迎えた私は、初産は予定日より遅くなるという話を信じていたし、前日の検診で、まだまだ子宮口がかたいと言われていたこともあり、出産はもう少し先だと思っていた。

その日は近所で月一回の朝市があった。

遠方にあるお店が出店していて、こだわりの卵とか、とれたての野菜とか、美味しいパンとか、その時しか買えないものが多くあり、毎月の楽しみだった。

なかでも、私のお気に入りはお豆腐屋さんで、冷奴にすると美味しいざる豆腐を買うと、サービスでおからをつけてくれる。

まさかその日の夜産気づくなんて思わず、大喜びでもらってきていたのだ、おから。

豆腐は、旦那が冷奴で食べるだろう。

でも、おからは……。

タクシーのなかで、念のため旦那に聞いてみる。

「ねえ、おから、煮れる?」

「いやいや、無理」

ですよね。

おから。腐るの確定……。


病院につくと、すぐに内診。

子宮口はまだ1.5センチしか開いてないとのこと。陣痛がこなかったら、促進剤投与になると言われる。

まだまだ時間がかかりそうな雰囲気。

とりあえず、入院。

旦那と、破水と聞いてあわてて来た母が帰って、1人の病室。

娘は、お腹のなかでポコポコ、というかボコボコ動いてる。

陣痛は、20分~10分おきと不規則。

まだ、いたたって、つぶやく程度。

あー、おから、もったいないなぁ。

タダでもらってきたとはいえ、あのお豆腐屋さん、毎回出店するわけじゃないし、購入しても毎回おからくれるわけじゃないから、かなり貴重なのになぁ。

この時には、まだこんなことを考える余裕があった。


2:30ごろ、機械をつけると言われて、徒歩で陣痛室へ。

そこで急に陣痛は5分間隔に。

助産師さんが慌てて分娩室を準備してくれたけど、子宮口はまだ2.5センチ。

「夕方出産くらいかな。私の勤務時間中には無理かもねー。」と言われる。

部屋に戻って、5分おきの陣痛に耐える。

5分間隔なのはあまりかわらないけど、痛みは強くなってくる。痛いって叫ぶくらい。

さらに、陣痛がない間は、胎動がものすごい!娘大暴れ。

まったく休む気配なく、暴れ狂う。それもまた痛い。お願いだからやめてって、お腹に向かっていうけど、やまない。

ふつう、出産が近づくと胎動が減るって言うけど……。

もしかして、娘も痛いんだろうか。


4分間隔きったところで、耐えられなくてナースコール。

また機械をつけるとのことで、陣痛室へ。

子宮口は、5センチ。痛みはさらに強くなり、間隔はどんどん狭くなる!!

フーって息して、赤ちゃんに酸素を送ってあげてって言われるけど、うまくできない、痛い。痛い。

機械で測定が終わる頃には、子宮口は8センチ。痛い。旦那に連絡するように言われる。

陣痛室で、いきんでもいいって言われて一回いきむ。子宮口は全開、分娩室へ。

分娩室では、もうフーってしちゃだめ。お腹痛くなったらいきむ。頭をあげて、口をへの字に、手はグリップ、足は分娩台で踏ん張って。おしりに力を入れる感じ。

最初は、いきみ逃しをするよりもいきんだほうが楽だったので余裕があったが、娘の頭が出かかっててきたあたりから、叫ぶほどの痛みに襲われた。

これが「鼻からスイカを出すみたいな痛み」ってやつね!

陣痛とは違う痛みだった。

私は、陣痛よりも、とにかくこの「鼻からスイカ」がしんどかった。

さすがに、おからのことも、もう考えられなかった。

「もう頭が見えてるよ」とか、「もうすぐよ」とか、助産師さんが言ってくれる。


5:00頃、旦那が来てくれた。

助産師さんに言われて、私の頭を支えてくれる旦那。

……て、あれ??

立ち会いはしない予定だったけど……??

後から聞いた話、助産師さんに、「おとうさーんこっちこっちー。」と、引っ張られて連れてこられちゃったらしい。

立ち会い出産するかどうか、事前に出した書類って、なんだったのだ!

でも、あの時のほっとした気持ちは忘れない。

おっさんの旦那が、天使に見えた。

いてくれて本当によかった。

助産師さん、間違えてくれてありがとう。


娘も出てこようと頑張ってる。いきんで早く出してあげたいけど、なかなか出てこない。

痛い。

そして、頭が出かかってなお、産道をポコポコ蹴る娘。

痛い。痛い!!なんて元気な子なんだ!


陣痛がきたらいきめって言われるけど、スイカの痛みと産道を蹴られる痛みでもうわからない。

とにかくいきむ。

でもだんだん。いきむ体力もなくなってくる。

本当ににお産は体力勝負だ。

痛い、痛い、って叫ぶ。

涙がポロポロ出てくる。

でも、娘も頑張ってる。

もう一度、力を振り絞って力んだとき、何かがだだだーと出てきた!泣き声!助産師さんのおめでとうの声!

????

大泣きの娘を、すぐに私のお腹に乗せてくれる。

それでもまだ、信じられない気持ちが大きかった。

本当にお腹の中に人がいたんだ。こんな大きいのが出てきたんだ!

じわじわと感じたのは達成感。

産まれてきてくれたんだ。痛いの終わったんだ。

でも、そんな気持ちが錯綜するまえにとにかく、産まれた瞬間涙がたくさん出て、大号泣だった。

旦那も泣いていた。

よく頑張ったねって頭を撫でてくれた。


先生が、後処理をしてくれている。

ちょっと痛いけど、お腹の上の娘に夢中で、気にならない。

もそもそと元気に動く娘。お腹のなかでもそうやってたのね。

それ痛かったのよ、強い子ね。

頑張ったのね。

愛おしい。

と、ここで、助産師さんに連れられて、父母入室。

ん?父も?

いやいや、私まだ縫われてますけど?胸はだけて娘のせてますけど?!

でも父だけ出て行けとも言えないし……。

そもそも、分娩室に入れるのは1人だけって事前に説明されたんですが!?

父は、嬉しいような戸惑ったような顔をしていた。この時、何か言葉を交わしたのだっけ。覚えていない。

でも、この時の父の顔を、よく思い出す。


一年後、娘が歩きだすのを見届けて、父は他界した。末期ガンだった。

この時はそんなことになるなんて夢にも思わなかった。

父は何を思っていただろう。

私が生まれた時の事を思いだしただろうか?

慌てん坊の助産師さん。

あなたの勤務時間中に産めてよかった。


余談。

次の日、母が病院へ来てくれた。

差し入れは、おからの煮物!!!

ええええ?

昨日、産院から帰る途中、うちによって、おからを回収。

煮てきてくれたのだ!

産院で白ご飯にのせてありがたくいただいた。

ヘルシーなはずだけど、退院時体重が出産前から2キロしか落ちていなくて凹んだ。

2600グラムの娘と、胎盤と羊水が出ていったはずなんですけど‥?

まさか、おから食べたせい?

ではないはず。


ライター:ふる

※ この記事は2024年10月03日に再公開された記事です。

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連載「第一回 記事投稿コンテスト 『出産』」 #89
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