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公開 2019年08月08日  

産後2か月で職場復帰。その壮絶さは、身をもって体験しないとわからなかった。

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自他ともに認める仕事大好き人間の私が迎えた出産。
育児休暇を取得せず、産後2か月で復職することを選んだ。
「これでまた仕事ができる!」と喜び勇んだ私を待っていたのは…?


「早く仕事がしたい」不安の中で掴んだ早期復職

「上野さんが戻ってくること、楽しみに待ってます」。

産休に入る前、上司に言われた言葉だった。

私は育児休暇を取得しないことを決めていた。

理由は簡単。
「早く職場に戻りたいから」。

同僚がいきいきと働いている中、自分のキャリアが育児で中断されると思うと、置いてけぼりにされるような気がした。

不安で不安で仕方がなかった。

もともと私は結婚も出産も考えていなかったのだけれど、まあいろいろあってお人好しの夫と結婚。

夫と過ごすうちに「この人は子どもを大切にして、育児にも向き合ってくれるだろうな」と思うようになり、出産することを決めたのだ。

出産予定日は1月上旬。

私の産休期間が終わると同時に夫が育休を1ヶ月間取得し、4月から保育園に入れることが決まった。

そうなると私は、出産から約2ヶ月での復職最短ルートに乗ることになる。

産後1ヶ月ほどは、まだ子どもとどう接していいか分からず、ミルクの準備にも手間取った。

自宅という閉鎖空間の中で、体調的にも精神的にも不安定な日々が続いた。

でも、職場復帰の日が近づくにつれて私は「元気」になっていった。

「子どもはかわいいけど、やっぱり仕事もしたい!」

産休・育休から職場復帰する場合、上司との復帰前面談を受ける必要がある。

その面談のため久しぶりに職場を訪れたときに感じたのは「またここに戻ってくることができるんだ」という安心感。

面談では、自分は「元気」であり「仕事ができる」ことを必死にアピールした。




達成感のない育児、成果が見える仕事

育児には目標がない。達成感がない。

一方で、仕事には目標があり、達成すべき数値がある。

私は、そういった目に見えるかたちで「誰かの役に立つ」実感に飢えていた。

復帰当初は部署のみんなに歓迎され、優しい言葉をかけてもらえた。

忘れかけていた業務内容も徐々に思い出してきて、復帰は順調のように見えた。

だが、日にちが経過するにつれて違和感を感じ始める。

まずは業務面。

産休前後で部署のメンバーが入れ替わっており、慣れないコミュニケーションに戸惑った。

また、復帰直後ということで仕事の範囲もかなり制限された。

割り振られる業務も少なく、時間を持て余す。

正直、「やりづらいな」と思った。

そして、次は体調面。朝起き上がれない。
眠れない。
食欲が湧かない。

熱はないのに異常に汗をかく。
だるくて文字が頭に入ってこない。

仕事ができる状況ではないということが分かり始めてきた。

でも「役立たず」と思われたくない一心で、必死に出社した。

抗不安薬を飲み、家に帰って寝込む日が増えた。

子どもの面倒も満足に見られない。

夫に負担がかかるようになり、家でも夫婦喧嘩が絶えなかった。

当日連絡の欠勤が続き、遅刻、早退も増えた。


「あなたに仕事は任せられない」

同僚からは「まずは体調を整えることが先決。休職という選択肢も考えたら」。

上司からは「今の勤務状況では、あなたに仕事は任せられない」。

喜ばれると思って選択した早期復職。
育休を取らないという決断。

でもそれは、ただの自己満足に過ぎなかった。

みんな、心から私の体調を心配して休むことを勧めてくれているのは分かっていた。

それと同時に、やはり私がいないほうが、業務の範囲やスケジュールが固定化される。

仕事の質も安定する。

周囲の負担が軽くなるのは明らかだ。

職場にも、夫にも、そして産まれてきたばかりの子どもにも迷惑をかける結果になってしまった。

これはもう休職するしかないなと思い、いろんな人に相談してみた。

「休職?いいじゃん、少しゆっくりしなよ」

「子どもと一緒にいる時間増やしたら、仕事への興味なんてなくなっちゃうかもよ」

一方でこんなことも言われた。

「産後2ヶ月でよく働く気になるね。私は3ヶ月間くらい体が全く動かなかった」

「出産直後なんて何もできないのは当然。そんな体で出社して、会社は配慮してくれないの?」

「里帰り(出産)もしていないのに、育児も仕事もやってたら倒れちゃうよ」


ああ、なるほど。

いろんな人に話を聞いて、ようやく分かった。

今回の早期復職という決断は、間違いだった。

そして間違えた理由は私の「無知」にあったのだ。


出産した本人すら知らなかった産後の壮絶さ

妊娠・出産に向けて、将来のパパとママはいろいろなところから情報を集めて、子どもを迎え入れる準備をする。

我が家もベビーカーやミルクを揃えて「準備万端だね」と夫婦で笑いあっていた。

けれど、出産直後の私自身の体がどうなるのかについては、びっくりするくらい知識がなかった。

分娩が終われば、痛いことも終わりなのだと思っていた。

全身がとにかく痛くて、2週間は普通に座ることもできないなんて。

出血(悪露)が1ヶ月以上続くなんて。

あんなに情緒不安定になるなんて。

ほてりとめまいで体が思うように動かないなんて。

「交通事故と同じダメージ」とは聞いていたけど、具体的なことは全く理解していなかった。

ふたを開けてみれば、痛いことばっかりだ。


産後の母親の体に関する状況は予想以上に知られていないことを痛感した。

だからこそ、本人である私が知識を身につけて、自分を守ってあげるべきだった。

「復帰後1ヶ月は3時間勤務から」(私は6時間勤務スタートだった)

「通勤がつらいからリモートワークで」(毎日出社が原則だった)

「情緒不安定だから優しく話しかけて」(コミュニケーションがかなり負担だった)

など、会社側に自分の状況を伝えられれば、業務環境についての相談はできたはず(それが採用されるかどうかは、その会社の判断になるけど)。



知識があれば、仕事と育児の両立への道が開ける

出産して半年が経過したころから、みるみる体調がよくなってきた。

私の場合は、あの産後2ヶ月での職場復帰という判断は間違いだったと思うけれど、それでも、「早く仕事がしたい」と願った自分を否定できない。

仕事が好きなママって、たくさんいると思う。

子どもはかわいいし大好きだけど、仕事でもやりがいを感じたい、成長したい人も多いはず。

そういう思いを抱くことを否定したくない。

だからこそ、私と同じような後悔をしないためにも、子どものこどだけではなく、産褥期の自分の体調についても、しっかり調べて周囲の人に伝えておいてほしい。

あなたの思った以上に自分の体は動かないし、あなたの思った以上に周囲は産後のママの体調を把握するのは難しい。

そして、あなたの思った以上に、仕事が楽しい時期と出産の時期が重なる可能性は、高いのだと思う。


※ この記事は2024年10月31日に再公開された記事です。

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