―― 奥さまと子育ての役割分担などはされていましたか?
遊びと日常生活の世話は僕が担当。
仕事から帰った後は、お風呂に入れてシャンプーしてドライヤーして歯も磨いて、寝るまでずっと面倒を見ていました。
妻は真面目なタイプなので、もっぱら生活習慣や行儀作法の担当。
自然に役割分担ができていました。
一度、「僕と麻里だけ楽しそうに遊んでて、ジェラシーは感じない?」と妻に聞いたら、「そんなことない。2人で仲良くしてくれたら、それが一番助かる」と言われました。
僕がいないときは1人で子育てしていたわけですから、息が詰まることもあったんでしょうね。
―― 自然に分担できるのは理想ですね。
麻里が生まれたときに、僕の人生の役割はなんだろうと考えました。
僕の得意分野は、おふざけと人を笑わせることだったから、娘に「人生って楽しいんだな」と刷り込めるといいなと思ったんです。
成長していくにつれ、友達や学校の先生との軋轢(あつれき)も生まれていくと思います。
でも家に帰れば、両親がいて、愛してもらえる。
外で嫌なことがあっても家に帰れば楽しい。
ニュートラルな状態に戻れる。
家庭をそんな場所にしたいと思いました。
僕は、妻や娘のストレスを緩和する役割を果たせるといいなと思ったんです。
かわいい女優より妻がずっと好き!関根勤さん、幸せ家族の秘訣は「妄想力」
70,228 View独特な子育て・孫育てを実践する関根勤さん。インタビュー後編では、それを見守ってきた奥さまとの関係についても伺います。愛情をずっと持ち続けられる秘訣とは?
「人生は楽しい」と娘に刷り込みたかった
―― なぜそんなに子育てに前向きになれたのでしょうか?
僕の生まれ育った環境が影響しているかもしれません。
僕は末っ子。しかも、長兄とは14歳、姉とは9歳、すぐ上の次兄とも7歳違いという、超がつくスーパー末っ子。
祖父母も同居していて、物心ついたときには僕以外の家族全員が大人という、わがまま放題でいられる家庭環境でした。
特に母は僕を猫かわいがりしました。
愛情で満たされていたから、人を愛せるのかもしれません。
土壌で言えば、落ち葉がいっぱいの栄養たっぷりな腐葉土みたいなものですね。
ワインのように熟成されていった夫婦関係
―― 関根さんの愛妻家ぶりは芸能界でも有名ですね。
僕は中学・高校と全然モテなかった。
やっとできた彼女が妻で、8年間付き合って結婚しました。だから妻には感謝しかありません。
僕はしつこいから、妻と過ごした日々を全部覚えてます。妻は忘れちゃってるけど(笑)。
妻のことは今が一番好きです。
そう思えるのは、思い出がたくさん積み重なって、ワインのように熟成されているから。
たとえば、綾瀬はるかさんはかわいい。
でも、彼女との思い出は僕には何一つありません。
映画に行ったこともなければ、ご飯を食べたことも、病気のときに汗をふいてあげたこともない。
妻とはその思い出がある。
それに、かわいい娘も命がけで産んでくれて、一生懸命育ててくれた。
思い出に加えて、感謝や尊敬もあるんです。
―― 当たり前のことに感動する力が大切なんですね。
僕ね、55歳のときに、『笑っていいとも!』に向かう車の中でハッと気づいたんです。
「今朝もチーズパンを食べたけど、毎朝出てくるあのパンは妻がスーパーで買って来てくれたものだよな。パパが好きだからと一番おいしそうなのを選んで、ちょうどいい力加減でトングで挟んでレジまで運んでくれているんだろう。あぁ……俺はなんてダメなヤツだ! 今まで何も考えずにパクパク食べていた!」と。
仕事場に入ると忘れちゃうから、その場ですぐに妻に電話して伝えました。
「いつもありがとう」と。
ちょうど僕の人間ドックの結果が出る頃だったので、「何か見つかったの?」と心配されてしまいましたが……。
子育ては愛情のバトンをつなぐリレー
―― ある日突然、雷に打たれるように気づくことが多いんですね。
麻里が4歳半のとき、すやすや眠る姿を見ながら、「この子も将来結婚して、母親になるのかな……」とぼんやり考えていたときにも、ひらめきがありました。
「そうか! お義父さんも娘の寝顔を見ながら、同じ思いを抱いていたんだ。だから結婚式のときに僕の手をしっかり握って、娘をよろしくと言ったんだな」と。
すぐさま妻が寝ているところに行って、ベッドサイドにひざまずき、「今日から僕がお父さんだから」と言いました。
「は?」と言われましたけど……。
僕としては、お義父さんから愛情のバトンを受け継いだから、これからは僕がお義父さんの代わりにあなたを大切に守るよという意味だったんですけどね。
―― 関根さんの脳を経由すると、美しい物語になりますね。
孫ができてから、ロケ先でおじいちゃんやおばあちゃんを見かけると、「この人にも赤ちゃんの頃があったんだな」「その頃はたくさんかわいがられたんだろうな」と想像しちゃいます。
人には誰かの愛情を一身に受けていた時代がある。だから子育ては、その愛情バトンをつなぐリレーですよね。
少なくとも僕は、「子育ては仕事より大事」と思って取り組んできました。
生まれ変わってツト子ちゃんになりたい
―― 関根さんのように想像力と妄想力を駆使すると、日常生活が豊かになりそうですね。
妄想はね、真剣にやると楽しいんです。
孫が生まれて、あまりにもかわいいもんだから、「ドゥドゥは今から男の子に生まれ変わるから、結婚しようね」と話しかけていたら、家族から気味悪がられまして。
仕方なく、女の子に生まれ変わることにしたんです。ツト子ちゃん。
64年の経験値と眼力を持ち合わせているので、孫にぴったりくっついていじめっ子からガードし、フォローもぬかりない。
原宿のパンケーキ屋に一緒に行くときも、代わりに列に並んであげる。
その間にショッピングしてきなよと。
直前に呼び戻すと横入りだと思われるから、15分くらい前にLINEで「そろそろだよ」と連絡する気の利く子。
ツト子は男の気持ちも分かるから、先にモテちゃうんです。でも孫に彼氏ができるまで、ツト子は彼氏をつくらない。
でも、あまりに都合が良い友達で、孫が甘えてしまうのはよくない。
そこで僕が考えたのは、ツト子は必ず待ち合わせに15分遅れてくるという設定。
「あの子すごくいい子なんだけど、いつも遅刻するんだよね……」と。
誰しも良い面も悪い面もあるんだと学ばせられる仕組みです。
―― そこまで入り組んだ妄想を……。その妄想力が、育児や夫婦関係にも良い影響を与えているんでしょうね。
少し想像力を働かせたら、奥さんが1人で家事・育児をやったらどれだけ大変か、そのストレスが子どもにどんな悪影響を与えるか、わかりますよね。
だから旦那さんは、ちょっと大げさでもいいから、「ママは料理上手だね」「いつも掃除が行き届いているね」と日頃から感謝を伝えるといいと思います。
子育てで家にいる奥さんは、社会から隔離されている状態。社会とつながっている旦那さんから褒められて、認められたら、社会から認められたような喜びを感じるんじゃないでしょうか。
「ありがとう」って、1秒あれば言えますよね。
消費カロリーでいうと0.0001カロリーくらい?
だったら言えばいいじゃんって思う。
主婦の仕事はお金に換算したら月30万くらいになるって、何かで読みました。
今どきそれだけ高収入な仕事ってなかなかない。それを当たり前にしてくれているんだからね。
―― 全国のお父さんに伝えたいことですね。
その代わり、奥さんも旦那さんのお手伝いに対しては寛大にお願いします。
ちょっと手伝ったくらいでドヤ顏する旦那さんにカチンと来ることもあるでしょうけど、そこはぐっとこらえて。オーバー気味に感謝を伝えて、そのうえで注意してあげてほしい。
「うわー、食器を全部洗ってくれたの? うれしい! 次はこの濡れているところまで拭いてくれると助かるわ」という風にね。
毎日一緒にいる夫婦だからこそ、意識的に感謝し合って、ほめ合ったほうがいい。
―― ちなみに奥さまは関根さんのことをほめてくれるんですか?
ほめませんね……。「ありがとう」はたまに言ってくれるけど。
世の中の奥さんって旦那さんのことをほめないらしい。だから諦めたの。
妻が元気で毎日笑って、呼吸していることが、僕をほめていることだと思うようにしました。言葉はいらないってね。
夫婦はお互いのいいところだけ見ようよ
―― 男性が子育てに積極的になれるポイントは何でしょうか?
男性は社会での評価が気になる生き物だから、父親の子育て参加によって具体的にどんな成果が得られるか、伝えるといいかもしれません。
両親が子育てに積極的に参加したほうが子どもの成績がよくなるとか、自己肯定感が高まるという話は、実際に聞いたことがあります。
「あなたの協力が、子どもにこんなプラスをもたらす」と示したらいいんじゃないかな。
「俺が頑張れば、この子の将来が豊かになるんだ!」と分かれば、モチベーションも上がるような気がします。
―― 今は男性の育休も推奨されていますしね。
非常にいい傾向ですね。
子育てしていると、我慢することが多いから勉強になるし、人間的にも成長できる。観察力も養われるから、他人のことも理解できるようになりますよね。
そうすれば部下の気持ちもわかるようになるだろうし、忍耐力も備わる。
育休を取ることが昇進のさまたげになるという話を聞くけど、逆に育休からカムバックした人を昇給させてあげてもいいくらいですよね。
―― 日本で初めて男性の大臣が育休を取ることも話題になりましたね。
その立場の人が育休を取ることに意味がありますよね。
社会に大きなインパクトを与えられる。
個人個人では、目の前にいる奥さんをサポートして、子どもに愛情を注いで育てること。
それを日本の親全員がやれば、子育てのレベルを底上げできるんじゃないでしょうか。
―― 最後に、現在子育て中のご夫婦にメッセージをお願いします。
お互いの良い部分をクローズアップして見るようにすればいいと思います。
大事な部分をクリアしていれば、あとは目をつぶる。
そして出会った頃のことを忘れずにね。
夫婦愛から、そのうち家族愛になり、いずれは人間愛になっていきますよ。
ちなみに僕はずーっと夫婦愛。妻はすでに人間愛にまで昇華してますが。
妻に直してほしいところ?
そうね、洗面所の電気は消してほしいかな。
でも文句言ったらお互いストレスになるでしょ。僕が黙って消せばいい。
お互いにいいところだけ見るように、ね。
プロフィール
関根勤
1953年生まれ。東京都出身。浅井企画所属。1974年、「ぎんざNOW」の素人コメディアン道場の初代チャンピオンになったことをきっかけに芸能界入り。人気番組「欽ちゃんのどこまでやるの⁉️」にて小堺一機と「コサキン」のコンビで一世を風靡。現在はバラエティ番組を中心に幅広く活躍中。娘はタレントの関根麻里さん。
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