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公開 2020年08月26日   更新 2020年08月27日

我が家にカブトムシがやってきた。面倒だと思っていたけれど、実際は…。

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今年の夏は、大量のカブトムシと共に過ごしています。

荒くれ者の彼らと過ごす夏、面倒だけど悪くない。


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今、我が家にはカブトムシが暮らしている。

男子の子育てにおける、通過儀礼と言われたらそれまでなんだけれど、これが、親からするとわりと厄介だ。

こんな世界、知らなかった。



お友達のお父さんが、カブトムシ狩りに誘ってくれたのは、夏休みが始まってすぐのことだった。

一度だけ、カブトムシをお友達から頂いたことこそあったけれど、自分でとったことがなかった息子は、それはもう喜んで、ふたつ返事で「いく!」と言った。いや、叫んだ。

もちろん、私もうんと微笑ましく、お友達と息子が期待で胸を膨らませて、はしゃぐ姿を見守っていた。


ところが、当日、少年たちが持ち帰ったカブトムシは、ほとんどおぞましいと言っていい量だった。

田舎に住んでいるので、虫に対して割と耐性があるほうだけれど、その量はなかなかの迫力で、さすがに少し後ずさってしまった。

黒光りする個体が、飼育ケースの中でぎゅうぎゅうにひしめき合って、うごめいていた。はっきり言ってこわかった。


いくら田舎だからって、いくらたくさんいたからって、それはもうほとんど乱獲の粋だったんじゃないかと、心配にさえなる。

息子含め、その場にいた4人でそのカブトムシを分け合ったのだけれど、4分の1になったはずなのに、それでもカブトムシは10数匹にもなった。なんなの。



あんまりたくさんいるから、今年まだカブトムシを手に入れていないお友達に、譲ろうかという話になった。

のだけど、なかなかマッチングが進まない。


たいていの男子は、角の見た目の勇ましさに惹かれてしまって、ついオスばかりを採りたがるけれど、狩りが終わって家に帰ると、ふと気がつくのだろう。

「メスがいない…」

つまりそれは、来年に命をつなぐことができない、ということでもある。

そんな事情で、我が家も、オス10数匹に対してメスは2匹しかいない。生物学上、私もメスな身の上なので、その状況、同情しかない。


というわけだから、マッチングの際も「メスなら欲しい」と言われることが度々あって、そして、我が家にもメスは生憎2匹しかいない。

息子も譲れないのだ。来年以降は、もう少し計画的な狩りをしてほしい。


けっきょく、誰にも譲ることが叶わなかったカブトムシは、採ったときそのままの数で家にいる。



さて、生きている以上お世話をしないといけない。

これがもう、大儀だ。そもそも、私自身、三姉妹だったことも手伝って、カブトムシを経験しないまま大人になった。

つまり子育てをするまで、カブトムシに、こんなに面倒があることを知らなかった。

まず、カブトムシ用の砂?土??がいる。そのへんの雑木林で獲ったんだから、その辺の土でいいじゃないのと思うのだけど、そうもいかないらしい。

そして、その土に水分を含ませるべく、霧吹きで水をかける。

水道水で大丈夫と聞かされたけれど、それ専用の水も売っている。オゾンだかバイオだか、水素だかの水らしい。なんだよ、セレブかよ。


そして、エサ。あれだよね、ナスとかキュウリとか、スイカの皮とか入れるんだよね、と思っていたら、そうではなかった。それはスズムシだった。


カブトムシは、カブトムシ専用のゼリーをお食べになる。

ゼリー……虫がゼリーを食べる……なんなのそれ、としか言えない。

昆虫に詳しい方からすると、あたりまえのことなのかもしれないけれど、だって、我が家の子どもたちだってめったにゼリーなんて買ってもらえないのに、この度カブトムシのために買ったゼリー、ひと夏分は120個。大袋、ふた袋だ。

そして、もちろん飼うわけだから、飼育ケースが必要になる。

10数匹のカブトムシ(と小クワガタ)を飼うために、飼育ケースを3つも買った。そして、そこへ入れる土は、15Lも必要だった。

ホームセンターでお会計をしながら、今自分がどこへ向かっているのかよく分からなかった。

越冬できない前提の個体のために、私は120個のゼリーと15L の土を買っているという現実を直視できなかった。



カブトムシの飼育が始まっても驚くことばかりだった。

夜行性だとは聞かされていたけれど、こんなにも騒がしいのかと目と耳を疑った。

玄関に飼育ケースを据え置いてあるのだけど、リビングに居たって聞こえてくる羽音。

そして、なんかよく分からない衝突音。

ずっと、ガタガタブンブンなっているのである。

3つの飼育ケースそれぞれから、始終そんな音が鳴るからドキドキしてしまう。


子どもの頃に、知り合いのおじさんからスズムシを頂いたことがあったのだけれど、彼らはただ、大人しく涼やかな音色を奏でるだけだった。

なのに、カブトムシの騒がしさと言ったらなんだろう。育ちを疑ってしまう。

あまりに騒がしいので飼育ケースをのぞき込んでみると、飛んでいるもの、ゼリーを食べているもの、それぞれあるのだけど、まるで人間の子どもみたいに喧嘩しているのまでいる。

毎日繰り広げられる姉弟喧嘩で、すっかり仲裁癖がついて久しいので、つい仲裁に入ってしまう。

やれやれ、と引き離して、一匹を別のケースに移動させたら、なんなの、また喧嘩している。引っ越した先で、1秒と経たず喧嘩をふっかけている。

ちなみに、先ほどの相手は落ち着いた様子で、のそのそ歩いていた。

なんだこれは、真ん中長男じゃないか。姉といても喧嘩になるし、妹といても喧嘩になる。

そういう個体が、カブトムシ界にもいたらしい。



粗野で粗暴に思えていたカブトムシは、昼日中には死んだようになるらしい。

ゼリーのカップに頭を突っ込んだまま、動かないのもいれば、ひっくり返って静止してるのもいたりする。

そのたび私は、死んでいるのか寝ているのか不安になって、呼んだりつついたりしている。

昼は昼で、心配が絶えない。なんだこれ、ほとんど子どもだ。ここまで手がかかると、思うつぼみたいだけれど、どうしたって愛着がわいてしまって、かわいくさえなるから厄介だ。

たったひと夏の命かもしれない、このカブトムシたちに愛着を持ってしまってはいけないのだけど、と思いながら今日もゼリーを与えている。

知ってはいけない世界を知ってしまったな、と思う。


※ この記事は2024年11月24日に再公開された記事です。

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