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公開 2015年05月21日  

冒険遊び場づくり~その歴史をのぞけば、魅力が見えてくる~

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今回は、冒険遊び場づくりの歴史についてご紹介いたします。歴史を紐解けば、現代に通じる冒険遊び場づくりの魅力が見えてきます。


みなさん、こんにちは。前回のコラムでは現代の子どもを取り巻く遊び環境についてプレイワーカーである私の視点からお話をしました。

今回は私が主に仕事をするフィールドである冒険遊び場(プレーパーク)について紹介をするとともに、その魅力を紐解いてみたいと思います。

冒険遊び場(プレーパーク)はどうやって生まれた?

まずはその歴史を振り返ってみましょう。



冒険遊び場が生まれたのは、第二次世界大戦中ヨーロッパのデンマーク。造園家であるソーレンセン教授が、子どもたちの様子を見ている最中にあることに気付いたことが始まりです。



それは、「こぎれいな公園よりも、廃材が置かれた空き地でのほうが、子どもたちはのびのびと楽しそう遊んでいる」「子どもは、自身が場をつくりかえることがことができることに喜びを感じ、イキイキと遊ぶ」ということ。



気づきを得たソーレンセン教授によって、初代冒険遊び場である「エンドラップ廃材遊び場」がつくられました。



その後「エンドラップ廃材遊び場」を訪れ感銘を受けたイギリスの造園家アレン卿夫人がその思想を持ち帰り、ロンドンで冒険遊び場運動を盛り上げます。運動は、1950~70年代のスウェーデン、スイス、ドイツ、フランス、イタリア、アメリカ、オーストラリアなどに広がり、現在、ヨーロッパ全体で1,000カ所もの冒険遊び場が誕生する源泉となりました。



この様な時代に子どもの遊び場づくりが行われるあたりが、ヨーロッパという風土の素晴らしいところですよね。少し本題とは離れますが、第一次世界大戦の頃にイギリスの首相をしていたデビッド・ロイド・ジョージ氏の言葉にもこういった思想の原点を垣間見ることができるのでご紹介しておきます。



「遊びは、子どもがコミュニティで何よりも最初に求める権利となる。そして、遊ぶことは自然に備わった、生きるためのトレーニングであり、この権利をないがしろにするコミュニティは、そこに暮らす市民の心身に影響を与えることになるだろう」デビッド・ロイド・ジョージ(在位1916-1922)



(原文)「The right to play is a child's first claim on the community. Play is nature's training for life. No community can infringe that right without doing deep and enduring harm to the minds and bodies of it's citizens.」David Lloyd George(1916-1922)

そして日本へ

さて、話は戻って…冒険遊び場づくりが日本に持ち込まれたのは、いつのことなのでしょうか?



きっかけは、1973年アレン卿夫人の著書である『都市の遊び場(原題:PLANNING FOR PLAY)』が日本で出版されたこと。この本には冒険遊び場をはじめ、様々なヨーロッパの子どもたちの遊び環境が収録されています。



翻訳を行った建築家の大村虔一氏と夫人の璋子氏は、実際にヨーロッパの各地の遊び場を訪ねて回り、その様子を地域の子育て仲間に伝えました。これを聞いた地域の仲間と一緒に大村夫妻が「自分たちもこんな遊び場をつくりたい!」と1975年に世田谷区経堂の空き地で「あそぼう会」を始めたのが、日本で初めての冒険遊び場の誕生となります。



「あそぼう会」の取り組みは世田谷区に評価され、日本初の常設の冒険遊び場「羽根木プレーパーク」が誕生につながりました。



以来、全国で草の根的に広がり、1990年代後半からは飛躍的に活動団体が増えることに。現在は約400団体(2013年度「第6回全国冒険遊び場活動実態調査」時点)が活動しています。地域住民による運営が広がっているのは、世界的に見た日本の冒険遊び場づくりの特徴です。

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魅力は、「つくりかえ」ができる遊び場

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歴史を振り返ってみたことで、冒険遊び場づくりの魅力の一つが見えてきたので整理していきます。



まず、発祥の地デンマークでのソーレンセン教授の発見に注目してみましょう。彼はこぎれいな公園よりも、ガラクタの転がった空き地が魅力的だと感じたこと…それは「つくりかえ」ができる、という点にあります。



子どもは、環境をつくりかえ、変化させるということへの興味をとても大きくもつものです。例えば、雨上がりによく見られる水たまりに足を踏み入れる乳幼児の姿もそのひとつ。



自分が何かをした時に返ってくる反応を知りたいという本能は、ヒトとして生まれながらに持っているもの。このひとつが、穏やかな水面の水たまりという秩序が保たれた状態に、足を踏み入れて無秩序につくりかえるということなのです。



子どもはそれによって、ピチャッっという音、水面に映る光の揺れや波紋、靴に浸み込んだ水の冷たさ、飛び散る飛沫の感触など様々な反応を楽しんでいるのです。



遊び場にも同じ要素が求められているのは、もうお気づきでしょう。既成の遊具や花壇の草花ばかりで構成された「つくりかえ」ができない場所よりも、自由に使えるガラクタ(木材、ロープ、布、タイヤ、ゴザなど)があり、穴を掘れる土、つくった水路に流せる水、調理や暖をとるための火、摘んでも良い草花などがあふれる「つくりかえ」ができる場所は、子どもたちにとって、魅力的にうつるものなのです。

「住民運営でフラットな関係性」も魅力のひとつ

そして、日本の冒険遊び場づくりの魅力はもうひとつ、住民運営でフラットな場所が作られている点にあります。



現在日本では、公園に関する苦情の数も多く、公共サービスとして行政などが前述したような「つくりかえ」ができる遊び場を管理運営していく困難を抱えています。



結果、冒険遊び場づくりの取り組みは住民の有志(NPO法人や任意団体)が運営することが多くなっています。「遊びに来る人たちも、遊び場をつくる人たちも、フラットな同じ住民という立場で開く遊び場」として、より主体的に住民が関われるこうした運営のやり方は、より遊びやすい環境に結び付いていると言えるのです。

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多様性を受け止められる「街中」だからこそ

冒険遊び場づくりの魅力を紐解いてきましたが、冒険遊び場づくりは様々な可能性を秘めています。



孤育て状態になってしまっている親の支援や貧困層の子どもへの食事支援、放課後の居場所、震災などの災害時の子どもたちの心のケアなど、街中であるからこその強みを生かし、その地域ごとでの社会課題を解決の拠点となる冒険遊び場づくりも増えています。



まだまだ、社会的には認知度は高くなく、発展途上の分野ではありますが、私自身もこのフィールドの可能性を信じて様々な取り組みの展開をしていけたらと思っています。このコラムを機に初めて知った方、知ってはいたけど足を踏み出せていなかった方、ぜひ、お近くの冒険遊び場を調べて遊びに行ってみて(もしくは活動を始めてみて!)くださったら嬉しいです。

次回のコラムでは…

次回は「子どもの遊びと子どもの育ち(心編―自己肯定感)」として、遊びが子どもの心の育ちにどう影響しているのかをいくつかのエピソードを紹介しながらお話していく予定です。お楽しみに!

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