我が家には現在6歳の娘がいますが、まだ1人部屋は与えていません。
間取りからすると作れないこともないのですが、今はまだ早いかなと考えています。
中学生くらいになったら自然と親離れするだろうと思うと、親の気持ちとして、せめてそれまではリビングで肩を寄せ合い過ごしていたいのです。
しかし周りには、1人部屋をもっているお友だちもいます。
そして、どこからか話を聞いてきたのか、最近は「部屋がほしい!」とせがまれることもしばしば。
そんなある日、娘にとって嬉しい物が届きました。
冬に備えて通販で注文した布団……、ではなくその布団が入っていた「巨大ダンボール箱」です。
大きさは幅1.5m、奥行き30cm、高さ1mほど。
身長110cmほどの娘ならスッポリと入れてしまうサイズです。
布団を取り出したとたん、何の迷いもなくスッと箱に入る娘。
中から飛び出しては私や夫を驚かせ、遊びはじめました。
以来、その巨大ダンボール箱は娘のオモチャとなり、中に入り浸るようになったのです。
けれど、親にとっては正直ただのゴミ。
わずか10畳ほどのリビングに巨大ゴミを放置しておくわけにはいきません。
来週のゴミの日には捨ててしまおう。
そう思っていたのですが、わずか1週間でダンボール箱は驚くべき変貌をとげたのです!
側面には開閉可能なアーチ型の洋風トビラがしつらえられ、いたるところに小窓がつきました。
中にはクッションや毛布が持ち込まれ居心地もバツグン!
聞くと、床暖の熱がこもるので箱の中のほうがリビングよりも暖かいと言います。
中で娘が何をしているかというと、お母さんごっこをしたり本を読んだり……。
しっかり部屋っぽい使い方をしています。
その様子を見ていて、捨てるのが忍びなくなってしまった私。
ゴミの日が来たものの、仕方なく処分は翌週まで見送ることにしました。
リビングに娘の巨大工作が出現!捨てさせて…という私の心を溶かしたもの
6,251 Viewある日、家に届いた巨大ダンボール箱。工作大好きな娘がそれを見過ごすハズもなく……。いち早く捨てたい私と、箱への愛着が増していく娘。せめぎ合いのなかで見つけた答えとは?
巨大段ボール箱は最高のオモチャ!
変化し続ける、娘の空間
ところが、廃棄までの猶予を延長した1週間で、またしても箱の用途が変化したのです。
最初はごっこ遊びや読書をしていただけだったのが、次第に中で食事をしたり睡眠をとるようになったり……。
これでは部屋以上、もはや家です。
娘にとって住まいの役割を担いはじめた箱を目の当たりにしたら、さすがの私も捨てられません。
というわけで、またもや廃棄を延期しました。
その後も「いつかタイミングを見計って捨ててしまおう」と、目論んではいたものの、見送る週が続きました。
ここでしかできない遊びとは…?
毎日、ダンボール箱とにらめっこをしていた私でしたが、ある時ふと娘の不思議な行動に気がつきました。
物音ひとつたてず箱のなかに何十分も籠っていることがあるのです。
「寝ているのかな」と思って覗くと「もう、やめて!」と叱られます。
そう、すでにここは彼女にとってプライベートルームなのです。
そこで、娘にバレないようにして、こっそりフタを開けて覗いてみることにしました。
すると娘は、箱の中で頭を抱え無言でうずくまっていました。
一体これはなにしているのだ……。
覗かれたことを知ると怒るので、時間をおいてそれとなく尋ねてみることに。
「さっき箱の中で静か~に何をしていたの?」
すると娘は照れ臭そうに、こう答えました。
「大好きなアニメのごっこ遊びをしていたの」
「え、どうやって?」
「……頭の中で」
なんと娘は、想像のごっこ遊びをしていたのです。
なるほど!
たしかに、彼女がいま夢中になっているアニメには沢山の敵や武器が登場するので、一人っ子の娘がごっこ遊びをするとなると、なかなか難しいでしょう。
ですが空想でなら、武器や敵、味方を登場させられるうえ、飛んだり跳ねたりも自由自在!
しかも、リビングや幼稚園にいる時のように邪魔者が入ることもありません。
空想ごっこは箱の中でしかできない、箱があるからこそ生まれた遊びなのかもしれません。
母の気持ちに起こった変化
さらに、娘を観察していて発見したことがあります。
それは、幼稚園から帰った直後に箱に直行し、空想ごっこを始めることが多いということ。
先生の指示通りに動いたり沢山のお友だちと遊んだり、幼稚園は子どもにとって楽しい反面、ある意味つねに気を張っていなければいけない場所でもあります。
真っ暗な空間で誰とも話さず自分の世界に没頭できるこの遊びは、娘にとって何か大切な意味があるのかもしれない。
捨てるタイミングを見計っていたけれど、もう少し、先に延ばそうかなと考えなおしました。
リアルな個室に籠られるのはやっぱりまだ寂しいけれど、リビング内個室なら、平気ですもんね。
巨大な邪魔者に見えたダンボールの箱でしたが、娘の大切な世界なのだと思えば、愛しく思えてきたのも事実です。
娘が作り上げた、世界に一つの「1人部屋」。
私の思惑とは裏腹に、しばらく長居することになりそうです。
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