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公開 2021年02月07日  

娘に「パパ」と呼んでほしいパパ。きょうも懲りずにパの歌を歌う<第5回投稿コンテスト NO.118>

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どうしても娘に「パパ」と呼んでもらいたいパパの叫び。



「まま」

娘の口からその二文字の言葉が発せられ、我が家が大いに盛り上がったのは、もう3ヶ月も前のこと。

ちょうど僕の母と姉が家に遊びに来ているときだった。

母と姉の協力のおかげで、その記念すべき瞬間を運良くスマホで撮影することもできた。

可愛くて夫婦で何度もその動画を見返したものだ。

それは間違いなくとても嬉しい出来事だったのだけれど、同時に僕は少し寂しくもあった。

なぜなら、その瞬間をもって僕は、「我が子がママとパパのどちらを先に言うか対決」に敗北したのだから。

おそらく世の赤ちゃんがいる全夫婦が、この戦いを経験するのではないだろうか。

そしてパパはいつだって涙を飲むことになるのだ。

そりゃあママの方が長い時間一緒にいるのだから当然という論理は、悲しいかなちょうど娘が生まれたタイミングで全面在宅勤務になった弊社のおかげで破綻している。

育休だってしっかりとった。

なんとなくママが先という気はしていたものの、やはり悔しいものである。


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「パパパパーン、パパパパーン」(結婚式の曲)

「パーパーパパパパー、パーパパパパー」(スターウォーズの曲)

「パッパパパッパ、パッパパッパッパ、パッパパパッパ、パッパパッパッパ、パッパパパッパ、パッパパッパッパ、パパパ!パパパ!」(マンボNo.5)

といった「パ」の歌ばかりを歌って聞かせていたのも、効果はまるでなかったようだ。

その後も娘が「ママ」と言うたびに、「パパは? パパは?」と問いかけるのだが、つぶらな瞳で見つめ返してくるだけで、半濁音の類は一向に聞こえてこない。

いや、つぶらな瞳で見つめ返してくれるだけありがたいと思おう。

少し前までは「パパ見知り」というやつのせいか、目も合わせてくれなかったではないか。

大きな進展である。

ここ数ヶ月、まあ「ママ」の方が「パパ」より言うのが簡単だし仕方ないか、「ママ」を先に言ってくれた方がその後の家庭が円満だろしなぁと、自分を励ましていた。

ところがこの勝負の判定は数ヶ月後に覆ることになる。

それも勝者であったはずの妻の手によって。


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どういうことか、説明していこう。

まず、娘は生後2、3ヶ月目くらいから「あー」「うー」と声を出す、クーイングをするようになった。

そして同じ頃、僕らの食事の様子を見て真似をし出したのか、口をパクパクさせるようになった。

これら一つ一つは娘の成長が感じられる愛おしい行為だ。

ただ、この2つが同時に行われたとき、なにが起こるか。

試しにあなたも「あー」と声を発しながら口をパクパクさせてみてほしい。

「あーーー、ま、ま、ま、ま……」

そう、図らずも「ママ」と言ってしまっているではないか!

つまり娘の口から発せられる「ママ」は、クーイングと口パクパクの併発により半ば事故的に偶然引き起こされたものだったのだ。

そういえば僕の顔を見ながら「ママ」と言って笑うこともしばしばあったではないか。

ちゃんとママだと認識していたわけではなさそうだ。

グルジア語では「ママ」は父親を意味するらしいし、日本語がまだうまくしゃべれない以上、僕のことを「ママ」と認識している可能性も十分考えられる。


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母親である妻のことを「ママ」であると認識した上で「ママ」と言ってはじめて勝利の栄冠を手にすることができる。

したがって以前下されたママの勝利という判定結果は無効となり、勝負は振り出しに戻る。

僕はまだ負けていなかったのだ。

ところで、どうやって「妻=ママ」と娘が認識しているかを知ることができようか。

これは非常に難しいことである。

仕方がない、この勝負、勝利判定基準の曖昧さゆえに引き分けとしようではないか。

(勝ち目のない勝負は屁理屈をこねてどうにか引き分けに持ち込もうとする僕。娘には素直に負けを認めることのできる立派な大人になってほしい。そう願うのは親のエゴだろうか)

といっても最近はもはやどっちが先かなんてどうでもよくて、とにかく早く娘に「パパ」と言ってほしい。

ママのときでもあれだけ感動したのだから、パパのときはどれだけ嬉しいだろう。

そのときを夢見て、今日も懲りずに僕は「パ」の歌を歌う。


(ライター:くまお)


※ この記事は2024年10月11日に再公開された記事です。

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