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公開 2021年02月10日  

パパが作る「大阪イチ」のミルクできょうもみんな幸せ<第5回投稿コンテスト NO.124>

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パパが作る寝かしつけ前のミルク。その日の気分で出来が違うそうで…。



2020年1月に、私は娘を出産した。

初めての出産、育児で我が家はあっという間にてんてこ舞い!

仕事の関係で4月からとなったが、夫も7ヶ月の育休をとれることになった。

1ヶ月の里帰りから戻った直後から、「やることが…やることが多い…!!」と疲弊していた私にとってこの上ない朗報である。

産まれる前から娘にメロメロだった夫は、育児にも積極的に参加してくれた。

そんな頼れる夫と仲睦まじく、思い描いていた通りの育児……とは、控えめに言って全然いかなかったし(笑)、ここには書けないような大人気ないケンカもしたけれど、思い返せば楽しいことばかりで、育休をとってくれたことには本当に感謝している。

そんな7ヶ月はあっという間に終わり、11月になると毎朝後ろ髪をひかれながら、「パパは一生懸命オムツとミルク代を稼いでくるからね!!」と言って夫は出勤するようになった。

日中は娘に会えず、育児に参加する機会が減ってしまった夫だけれど、今でもずっと続いている「パパの担当」がある。

それが「寝かしつけ前のミルク」だ。


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産後の入院中から、娘には母乳とミルクの両方を飲んでもらっていた。

なので授乳時にミルクを作る頻度は高く、それを夫に手伝ってもらうことも少なくなかった。

そんな中、いつ頃だったかも忘れてしまうぐらい些細な一言で、その習慣は始まった。

ある夜、私は娘をお風呂からあげて寝室へ連れて行く。

それからお着替えを済ませて、あとはミルクを飲んで寝るだけ。(この"だけ"がとても長いのだけれど)

「今日のミルクは、大阪イチだよ~!」

私が着替えさせている間にミルクを作ってくれていた夫が、ゴキゲンに寝室のドアを開けた。

「大阪イチなん?めっちゃ美味しいやつやん!」

「いつも美味しいけど、今日のはとびきり美味しいよ!」

あまりに嬉しそうに持ってきたので、私もつられて顔がほころんでしまった。

うちのミルクの作り方は、一般的なものと何も変わらない。

哺乳瓶に粉を入れて、お湯を注いで溶かして冷ます、それだけだ。

今までもそうやって作ってきたし、その日もそうやって作ったはず。

なのに、とにかくその日のミルクは間違いなく「大阪イチ」だったのだ。


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その後、夫の作るミルクの自己評価(?)は習慣となり、それはその日の夫のお疲れ具合や落ち込み具合等で変わることが判明した。

つまり、「大阪イチ」の日の夫は気分も調子もよく絶好調だったらしい。

ある時は元気よく「なんと、今日は日本イチです!」と更なる高みへの到達に拍手が起こり、またある時は「今日は作る時に粉をこぼしてしまったので、マンションイチです……」としょんぼり報告されることもあった。

「それでもマンションの中で1番美味しいんや、すごいやん!」

あまりに落ち込んだ様子で哺乳瓶を渡すので、やっぱり私は顔がほころんでしまうのだった。

もちろんどれもミルクの味は変わらないし、娘はそのミルクが大阪イチだろうとマンションイチだろうと、おなかいっぱい飲んで、幸せそうに眠りにつく……と、思っていたけれど、5ヶ月頃は「大阪イチ!」と聞いても無反応だった娘が、1歳を間近に控えた今は、夫と私と一緒に大阪イチのミルクを拍手で出迎えるようになった。

拍手と笑顔で包まれた寝室は、ミルクが美味しくなる魔法がかかっていると言われても不思議じゃないぐらい幸せな空間だ。

そんな愛しい娘のことを想って、夫は心を込めてミルクを作っている。

だからこそ、こんなふうに自分の作ったミルクの自己評価が生まれるのだろうなぁ〜と夫のそれを聞く度にあたたかい気持ちになり、今日も私の頬は緩む。


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ミルクをあげる時間は数あれど、仕事に復帰して、娘との触れ合い時間が帰宅後のみになった今でも残っている夫限定のミルクの時間が「寝かしつけ前のミルク」なのだ。

今ではミルクを飲ませて寝かしつけるまでが夫と娘の大事な時間になっている。

ありがたい。ほんとに。

先ほど「育休をとってくれたことには本当に感謝している」と書いたけれど、仕事復帰した今もこうやって娘との時間を大事にしてくれていることにも、とても感謝している。

離乳食が3回食になった今、いつミルクを飲まなくなる日が来るかも分からない。

その時が来たら、きっとこの「パパのミルク屋さん」は閉店してしまうのだろう。

そのことを思うと寂しい気持ちにもなるのだけれど、母乳を飲まなくなった卒乳の時と同じように、いつかはやって来る日のことなので今からそっと心に留めておくつもりだ。

なので、せめて今日も夫が「大阪イチ」のミルクが作れるように、一刻も早く帰ってきたくなるようなあたたかいくつろげる家を用意して、娘と一緒に待っていようと思う。


(ライター:いど)


※ この記事は2024年10月14日に再公開された記事です。

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