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公開 2015年07月02日  

「生きる希望を持てない」自閉症の子どもを持つお母さんの言葉に周囲は…?

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2歳の自閉症のお子さんを持つお母さんが話してくれた言葉。「これから何を希望にして生きていけばいいかわからない」。そんなお母さんになんと伝えたらよいのかを考えてみます。


「何に希望を持てばよいのか分からない」

先日、友人であるひとりのお母さんからこんな話を聞きました。



その友人には、自閉症と診断された2歳の娘さんがいます。



ある日、その友人がぽつりと話してくれたのは、「まだ、自分の娘が自閉症と診断されたという事実に心がおいついていない」ということ。



自閉症の特徴のひとつである偏食のため、何をつくっても食べてもらえない。一生懸命呼びかけて、話しかけても、目を合わせてもらえない。意思疎通がうまくとれない。そばにいてもこちらを見ずに、ずっと同じおもちゃで遊んでいる。それをそばで見ている毎日。そんな日々の繰り返しで、将来を考えると、どうしたらよいか分からなくなる。



もう、この子のこと、可愛いと思える日はこないのかな。



何に希望を持って生きればいいのかな。



そんなことを話す友人に、なんと声をかけたらよいのか分からず、ただ無言でそばにいることしかできませんでした。



「きっと、いつか産んでよかったと思う日がくるよ」



そんな言葉をかけることはできたかもしれないけれど、結局その一言を口にだすことができませんでした。なぜなら、私自身、友人が「きっといつか産んでよかったと思う日がくる」と自信をもって言うことができなかったから。

それでも、「きっといつか産んでよかった」と思えるはず

そのときは、なんと声をかけていいか分からなかったけれど、友人にとっての「傍観者」にはなりたくない。ちょっとでもいいから支えになりたい。そんな気持ちから、自閉症のお子さんを持つあるお母さんに彼女をどうサポートしてよいのかを聞きに行くことにしました。



「彼女になんと声をかけたらいいでしょうか」



そんなことを聞く私に、そのお母さんは言いました。



「いつか産んでよかったと思える日がきっとくるよ」と。



そうはいうものの、本当に友人が「いつか産んでよかった」と思うことができるのか自信を持てないのが正直な気持ち。そう伝える私に、そのお母さんはその言葉の意味をひとつひとつ丁寧に説明してくれました。



「まずね、今は受け入れられなくても、親の心も受け入れられるように、ゆっくりゆっくり変わっていくんだよ」



自分の子どもがいわゆる「障害」を持っていると分かったとき、親にとって最初の課題はそれを受け入れることだということ。つまり、お父さんやお母さんが受け入れるまでの時間は、とてもつらくて苦しいものだということです。



「子どもは、3歳までに親孝行をするっていう。でもこの子の場合、3歳までに一生分の苦労をかけてくれたなって思うくらい大変だったの。でも、信じられないかもしれないけど、そんな私でも『ああ、この子本当になんて可愛いんだろう』って今は本当にそう思えるの。完璧なお母さんになろうなんて思わなくていいから、少しでも子どもを受け入れてあげられれば、きっと心もおだやかになるはず」



お母さんは続けます。



「それにね、お母さんの心がついていけない間にも、子どもはやっぱりどんどん成長していくんだよ」



療育に通い始めたり、周囲の人とふれあったり。そうしているうちに、子どももぐんぐん成長していきます。



「できなかったことも多かった分、それができるようになったとき人一倍嬉しいのは、「障害」を持っている親ならではの感情なのかもしれないよね。何かができるようになったとき『ああ、よかった』って本当にそう思える。それにあわせて、もともと持っていたその子のよいところも、しっかり見えてくるようになるからね。」



それを聞いて、やっぱり子どもの力ってすごい、と思わざるをえませんでした。子どもが成長していくこと、そしてそれをそばで見守ることができること。それはすべての親子にとって嬉しくてたまらない経験なんですよね。



そして、最後にお母さんが伝えてくれた言葉。



「そしてね、今はひとりだと思えるかもしれないけど、きっとどんどん周りに理解して協力してくれる人も増えていくから。その人たちを信じてね。」



診断をもらったばかりのときは、「親にはなんて伝えればいい?周りのママ友になんて言おう。」そんな気持ちが心のなかにうずまきます。誰かが助けてくれる、理解してくれる、そんなふうには決して思えないかもしれません。



でも、療育や学校に通い始めればそこで本当に子どものことを考えて動いてくれる人がいるかもしれない。同じような状況にあるお父さん・お母さんと話して色々勉強できたり、心が軽くなるかもしれない。そんな関係性を周囲に築いていくことができれば、「自分ひとりで向き合っている」という孤独感は減らすことができるかもしれません。



「もちろん理解のない人からの発言や行動に傷つくこともあるけれど、その一方で自分の身の回りにいる人たちにも感謝できるようになったの。」



そう話すお母さんを見て、私も友人にとってそういう周囲の人になりたい、そう強く感じた瞬間でした。

「安心して子どもを育ててね」

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お父さんとお母さんの心の変化、子どもの成長、そして周囲の理解や協力。そうしたことが積み重なって、



「きっといつか産んでよかったと思えるはず」



そう教えてくれたお母さん。



でも、友人がそう心から思えるようになるまでには、たぶん時間がかかる。「自閉症」を個性だなんて言わないでほしい、そんなお父さんお母さんたちの声も聞こえてきます。だって今の社会で生きていくのは大変な部分も多いから。「個性」だなんてきれいなことばで終わらせられるものじゃないんだよって、そんな風にいうお父さんお母さんもいます。



でも、そういうお父さんお母さんにも胸をはって「安心して子どもを育ててね」って言えるようにしたい。子どもの障害を「個性」だと認めて伸ばしてあげられるような社会にしたい。そのために、まずはお父さんお母さんへのしっかりとしたサポートが必要です。そうすることで、身近な人が自分のことを認めてくれているという感覚のなかですべての子どもに育つことができる社会をつくれるのではないでしょうか。



そのために、まずは身近な一歩から。



「きっといつか産んでよかったと思える日がくるよ」



心をこめて友人に伝えたいと思います。

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