以前の記事で、4歳~5歳くらいから楽しめる奇想天外なおはなしをご案内しました。
【読み聞かせ】長新太の傑作絵本「へんてこライオン」シリーズの魅力とは?
2,499 Viewライオンといえば百獣の王。動物園でもTVでも目が離せない存在です。でも絵本に登場するライオンはどこかユーモラス。特に長新太さんの描くライオンはかなりへんてこ。なにしろ変身するんです…!
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=281440024231歳後半くらいから楽しめる奇想天外なおはなし
今回は長新太さんの「へんてこライオン」シリーズをご案内します。1歳後半~2歳くらいからでも楽しめる、これまた奇想天外なおはなしの魅力を探ってみました。
「へんてこライオン」シリーズは絵本が8冊。英訳版もあり。
このおはなしは小学館の読み聞かせ絵本雑誌『おひさま』で長らく連載されていたものです。
現在手に入るのは8冊の絵本。それぞれ5作品が収録されています。『しんくんとへんてこライオン』は登場するのがしんくんだけ、『ゆうちゃんとへんてこライオン』はゆうちゃんだけなのですが、『ゆうちゃんとしんくんとへんてこライオン』以降は、しんくん・ゆうちゃんが2作、または3作ずつの組み合わせになっています。ブレンドの具合も絶妙です。
なんと、英訳版もあります。日本語全文+解説もついています。「へんてこライオン」は「the Magic Lion」と訳されていますよ。
「へんてこライオン」シリーズの5つの特徴
へんてこライオンシリーズにはこんな特徴があります。
1.【1対1の関係】登場人物はしんくん または ゆうちゃん。ひとりずつです。そしてライオン。子どもとライオンの差し向かい、というわけです。
2.【ストーリーは短い】ひとつの作品は6ページ。ページを3回めくるだけ!紙芝居よりも短いですね。
3.【ライオンが変身する】しんくん・ゆうちゃんと出会うと、ライオンは会話をしつつ何かに変身します。だけど1か所だけ変身していないところがあるんです…!
4.【お決まりのフレーズ】しんくんが歩くときの音は「テクテク」。ゆうちゃんのときは「ポコポコ」。最後の文章は「へんてこな ライオンの おはなしです。」というように、いつも決まっていることばがあります。
5.【独特の色彩】しんくんが登場する回の色彩は青と緑が基調。ゆうちゃんの回はピンクとオレンジ。毎回登場するライオンは黄色です。この配色は長新太さんの作品独特なもの。いわば「長新太カラー」です。
へんてこライオンに親しみがわいてくる
しんくん・ゆうちゃんとライオンとの会話は、けっこうとぼけていて愉快です。ライオンは思いやりのことばをかけてくれることもあるし、こうしなさい、なんてアドバイスもあったり。しんくん・ゆうちゃんも質問したり、つっこみを入れたり。関係は対等のように思えます。
ライオンが変身する方法は、パッと早変わりではありません。徐々に変わっていくんです。「そうして…」ということばが4ページ目にあり、次のページではライオンの変身後の姿が…!ライオンは何に変身するか、すでに決めているようなときもあります。おどろかせてやろうと思ったり、一緒に遊ぼうと思ったりしているのかもしれません。
かと思うと、しんくん・ゆうちゃんと話したことを受けて変わるときもあります。たとえば、しんくんが「ああ、おなかがすいた」というと、ライオンは「ちょっと やすんで いきなさい」。「クークー」というおなかが鳴る音を聞いて、ライオンは「トロトロ、トロリ、トロトロ、トロリ。」とある食べ物(!)に変身。
そうして「しんくん、どうぞ おたべなさい。」というのですが、しんくんは「いやだよ、いやだよ」…こんなふうに、こまらせるときもあるんです。
変身したものの、いまいちで「やっぱりだめかあ」といったり、怖くてブルブルふるえたり。ちょっと間抜けなライオンに親しみがわいてきます。
パターン化された展開と、予測できない変身。だからおもしろい!
おはなしの展開は見事にパターン化されています。しんくん・ゆうちゃんがいつもの調子で歩いてくると「ライオンがいました。」そのあとライオンは動き出したり、会話をしたり。何かに変わる兆候が見える。「そうして、」「そうすると、」ということばが出てきてページをめくる。すると変身したライオンがいます。
最後は「へんてこな ライオンの おはなしです。」と終わる。何に変身するのか、なんとなくわかるときもありますが、予測できないことがほとんどです。「こうきたか!」と笑っちゃう。まさに奇想天外なんです。決まった展開に安心できると同時に、思わぬ変身ぶりに驚かされる。だからおもしろい。たくさんのおはなしがありますが、続けて読んでも、久しぶりに読んでもまったく飽きることがありません。
わが家の長男(高1)が小さい頃から親子で読んでいて、二男(中2)も楽しみ、三男(小5)とは、いまでも読み返すことがあります。でも、いちばんハマっているのは親のわたしだったりして…。
しんくん・ゆうちゃんは読者。そしてライオンは…
しんくんとゆうちゃんはこのおはなしの登場人物ですが、長新太さんの「読者」であり、そしてライオンは「長新太さん」ご自身であると捉えることができるように思えます。
数多くの絵本を遺されていますが、ライオンがしんくんとゆうちゃんの前で変身するように、長新太さんが読者におもしろい本を次から次へと手を変え、品を変え、差し出してくれている気がするのです。「どうです?」という声が聞こえてきそうです。
こんな楽しみ方もあるよ!
「へんてこライオン」シリーズの魅力、いかがでしたか?絵本はたくさんあるので、まずは図書館で読んでみて、気に入ったものから購入するのもいいですね。
子どもとはこんな楽しみ方があります。少し大きな子は友達同士でやってみてもいいですね。
1.ライオンが何に変身するのか予測してみよう。当たるかな…?
2.変身したライオン、どれが好き?お互いに披露する。
3.自分がへんてこライオンになったら何に変身する?と空想をしてみる。
皆さんも、ぜひ楽しんでみてくださいね!
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