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公開 2015年09月01日  

早産の原因にもなる子宮頸管無力症とその予防方法とは?

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早産の原因の一つとして、「子宮頸管無力症」という病態が挙げられます。これは子宮の出口にあたる子宮頸管が開きやすい疾患です。本記事では、子宮頸管の位置や役割、さらに前回妊娠で子宮頸管無力症と診断された時の次回妊娠時の予防方法について解説します。


子宮頸管とはどこにあるのか?

子宮の出口にあたる部分を「子宮頸管」と呼びます。下に子宮・卵巣・卵管を正面から見た図を載せます。

早産の原因にもなる子宮頸管無力症とその予防方法とは?の画像1

子宮と膣の境界部、赤丸で囲っている部分が子宮頸部と呼ばれる部位です。妊娠中は必要に応じて、子宮頸部の長さを超音波で測定します。一般的には約4cm程度の子宮頸部ですが、子宮頸管長が短いと切迫早産(早産になりかかっている状態)になってしまいます。そもそもたった4cmの子宮頸部は、妊娠中には一体どのような働きを持っているのでしょうか?

子宮頸部は妊娠中の圧力に耐えている!

大きな働きの一つに、妊娠中にどんどん大きくなる胎児や量が増える羊水の圧力を受け、耐え続けるというものがあります。先ほどの図で示した様に、子宮頸部は子宮の出口にあたるため、この部分が固く閉じている事で、胎児が子宮外に出てしまう事を抑えています。子宮頸管無力症の場合、子宮内で大きくなる胎児の圧力に耐えきれず、子宮頸管が内側から段々開いてきてしまう事があるのです。



そもそも人間は常に2足歩行をしている、世界でもとても珍しい動物で、立った時に女性の体の最も下に存在する「膣」という場所には、実はもともとかなり強い圧力がかかっているのです。そのため頸管無力症による切迫早産は、他のほ乳類ではほぼ認められず、人間特有の疾患であるとも言われています。



もしも産科健診で、頸管が短いと診断された場合は、なるべく子宮頸部に圧力をかけない様に、安静にする事が大切です。ただし、いくら安静にといっても、ベッドに一日中横たわって動かずにいたら、妊娠中の重大な合併症である「血栓症」を引き起こしやすいので、ベッド上でも足の筋肉はしっかりと動かす様にしましょう。

感染を防いでいる!

子宮頸管のもう一つの大事な働きに、子宮内へのばい菌の侵入を防いでいる、というものがあります。膣の周りの臓器の位置関係を理解するために、別のイラストを提示します。

早産の原因にもなる子宮頸管無力症とその予防方法とは?の画像2

この図は女性のお腹を横から見た図ですが、図に示した通り、膣の前には尿道、後ろには肛門が存在します。そのため本来膣の周りというのは、細菌・ウィルス・カビ菌等、様々なばい菌が沢山存在します。もしもそれらのばい菌が膣を上がってきて子宮や胎児に感染してしまったら大事になってしまいます(妊娠中の胎児は感染にとても弱いのです)。



それらの菌の侵入を防いでいるのが、膣と子宮頸部です。約4cmの子宮頸部は、ばい菌の侵入を徹底的に防いでいます。子宮頸管無力症によって頸管が短くなってしまうと、ばい菌感染が非常に起こりやすくなります。そのため子宮頸管が短くなり病院に入院すると、感染を防ぐ為に膣内の洗浄を行ったり、抗生剤を使用する事で対応します。

前回妊娠で子宮頸管無力症で流産・早産になってしまったら?

しかし、どんなに気を付けていても、もともと子宮頸部がとても弱い方がいらっしゃいます。仮に前回の妊娠で頸管無力症によって、流産や早産となってしまった場合は、次の妊娠時に手術による予防策を行う事も可能です(施設により手術判断基準や方法は異なります)。



子宮頸管縫縮と呼ばれる方法で、子宮の出口を太い糸で縛るという、とても単純な方法です。縛った糸は、妊娠末期にハサミで切って、頸管からスルッと抜きます。しかし、例え頸管縫縮術を行っても、早産を防げない事はありますので、妊娠した際には、この様な方法について、担当医と良く相談する事が大切です。

まとめ

子宮頸管はたった4cm程度の部分ですが、妊娠期間中、圧力に耐え続けたり感染を防いだりするために非常に重要です。頸管長が短くなってしまうと、流産・早産の危険性が増加してしまうので、前回妊娠が切迫早産であったり、今回の妊娠でお腹が張る感じが強かったりしたら、通院先にしっかりと連絡する事が大切です。

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