6月に入り、そろそろ夏を意識しだす今日この頃。
夏といえば野外フェスなど、音楽イベントも増えてきますよね。フェスで演奏されることが多いロックなどのジャンルはもちろん、クラシックも夏のコンサートや夏休みイベントなどで演奏される機会が多くなります。
そこで今回は、そんな音楽の中でもクラシックの系譜を継ぐ「現代音楽」にまつわる雑学クイズを出題!
オーケストラやピアノなど、さまざまな曲があるクラシックが進化した形ともいわれている「現代音楽」ですが、実は「演奏しない曲」があるって知っていましたか?
演奏しないのに、曲……? 一体何という曲なのでしょうか?
ジョン・ケージ作曲の《4分33秒》!
全3楽章からなるこの曲、実は全ての楽章で「tacet」(声や音を出さない)といった指示が書かれています。つまり、『一切演奏しない曲』なんです!
『一切演奏しない曲』とはいっても名曲(迷曲?)ゆえに、演奏会のプログラムに入っていることもしばしば。
それでは一体どうやって、“演奏しない曲”を“演奏する”のかというと……。
演奏者は舞台に上がるものの、楽譜には「tacet」(声や音を出さない)と書いてあるので、休み。休むだけ休んだら演奏終了です。
えっ、ほんとに…? と思うかもしれませんが、本当なんです(笑)。
この曲を作ったジョン・ケージは、アメリカの作曲家。
主に現代音楽と呼ばれるジャンルにおいて多大な影響を及ぼし、その中でも特に「偶然性の音楽」と呼ばれる作曲技法は、彼の代名詞にもなっています。
そんな、“一切演奏しない”という不思議な曲ですが、作曲の経緯として特に有名なエピソードのひとつに「無響室での体験」があります。
無響室とは、部屋全体が音の反響を吸収する素材で囲まれ、ほぼ完全な無音状態を作り出すように設計された部屋のこと。
この部屋に入り完全な沈黙を体験しようとしたケージ。しかし、全ての音から遮断されたはずの部屋で聴こえてきたのは甲高い音でした。そしてそれは、なんと自分自身から発せられる「血液の流れる音」と「神経系統の音」だったのです!
何も聴こえないと思っていたはずが、実は「完全な沈黙は存在しない」と悟ったこの衝撃的な体験から、《4分33秒》という20世紀の音楽史を塗り替え、今もなお絶対的な影響を及ぼし続ける作品が生まれたのでした。
最後に、この曲の演奏に際してケージが語った言葉を紹介して終わります。
「常に音はある……こう説明してみよう。演奏の後、参加者が質問に答えて、その曲のある特定の音が印象に残っていると言うかもしれない。別の参加者は、音なんて覚えていない、他の何かが起きたと答えるかもしれない。しかし2人とも、演奏が行われたということには同意するだろう」
以上、雑学クイズでした。
お読みくださり、ありがとうございました!
(編集:コノビー編集部)
▼参考
ジョン・ケージの《4分33秒》はなぜ名作なのか──音楽の概念を180度変えた「無音の曲」を聴く
https://artnewsjapan.com/article/2286
無響室
https://www.ntticc.or.jp/ja/archive/works/anechoic-room/