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公開 2024年10月20日  

「女の子は勉強しなくても」そう言われた私が息子の高校受験でかみしめたこと

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この道はいつか来た道高校受験。
そのはずが30年の年月を経て再度対峙した高校受験は私の知っている高校受験とは全然、違う姿形をしていたのでした……現在進行形の『子どもの初めての高校受験』WEB出願て何やねんと頭を抱える私の、明日はどっちだ!


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コノビー編集部の選りすぐり!何度でも読みたい、名作体験談。

今回は、コノビーで連載中の「きなこさん」の名作をご紹介いたします!高校受験、今と昔ではまったく違う!?手続きだけでなく、子どもたちの「意識」にも当時の多くの子どもたちと異なるものがあるようです。

初回公開はこちらです。
https://mama.smt.docomo.ne.jp/conobie/article/27243

受験生がやってきた

我が家には今年、受験生がいる。

一般に『15の試練』であるはずの所が、なにしろ長男は3月の末がお誕生日、いわゆる早生まれなもので、公立高校の合格発表のその日まで14歳のまま。

今年の冬はクリスマスもお正月もなく、昼すぎに学習塾の冬休み講習に出かけ、その後自習室で自習をして帰って来る。

昼過ぎに家を出て帰宅が10時、その上毎日山のような課題を抱えて帰宅する、そんな冬。

「正月とクリスマスのことは忘れろ、そんなモンはこの世にないのや」

塾の先生は長男のクラスの子どもらを前にしてそのように訓戒を垂れたらしい。

その割に先生達はクリスマスの日、サンタクロースの帽子だとかトナカイのカチューシャを頭に被り、それを子どもらにも「かぶるぅ?」と聞いていたとかで、サンタの来る前の晩、妹達がチキンやサラダなどを食べてはしゃぎ、兄を待たずに寝てしまった後に長男に取っておいたクリスマスケーキを食べながらぽつりと「何やねんなもう」とこの子にしては珍しく怒っていた。

そんな長男を見ていて私は

(この子も、ちょっと前までは赤ちゃんやった気がするのやけど…)

なんて、しみじみとした気持ちになった。

光陰矢の如し、少年老い易く学成り難し。

中学受験は親の狂気であるというのはどこかで聞いた話だけれど、高校受験は本人が頑張るだけ、親の出番は思った以上にないもので、今年受験生の親デビューを果たした私はとにかく長男の健康を保つために「栄養のあるものを食べさせねば」ということしか思いつかず

「何食べたい?作ったげるから」

そこだけは張り切ろうと思っているのに、離乳食を始めた日から今日までとんでないレベルの偏食である上に少食の長男は、野菜は大体残すし卵はキライ、肉と炭水化物の他に好んで食べるのはミカンだけという少年で、仕方なく母はそれ以外になんかビタミンを摂取しなさいとリンゴを持って長男を追い回す日々。

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お母さんのころはそうじゃなかった

長男の高校受験を意識し始めて「この辺の高校受験ていうのは一体どういう感じなの?」と調べ始めた時、まず驚いたのは公立高校、私立高校ともにその選択肢の多さで、これは時代と言うよりは私と長男が高校受験をした地域の差ということかもしれないけれど、私はなんだか眩暈がした。

その上、中学3年生になってすぐに、長男は頻繁に1学期の初めから通学圏内の私立高校のチラシを貰ってくるようになった。

と言ってもこれは長男が

「こんなん貰って来たで」

そう言って親の私にチラシを手渡ししてくれる訳ではなくて、我が家の人外魔境と呼ばれる長男の部屋のあちこちに散らばっている色とりどりの凝った紙を末の妹である次女が「にぃにの部屋でキレイな紙を拾った」と言って持ってきてくれて初めて知ったというもの。

それは今住んでいる大阪府の学校どころか京都、奈良のものもあって、県境をまたいで進学するなんて、私の地元とは何たる違いかと驚いたものだった。

私がかつて高校受験経験したのは北陸ののどかな地域で、冬は深い雪に通学路が埋まってしまうため自宅から電車を乗り継いでまで遠方の高校に進学するという考えがあまりなかったし(なにしろ雪で電車も止まる)、私立高校の選択肢も然程豊富ではなかった。

「お母さんの暮らしていた地域には自宅から通学可能な私立高校は2校しかなかったし、学習塾も全然なかった」

次女が宝探しをするみたいに集めて持ってきてくれたチラシを眺めながら私がそう言うと、長男は言った。

「なにそれどういう秘境?」

人外魔境を自宅にせっせと作り上げている君にそんなん言われたくないわと思ったものの、確かに長男の受験環境と比較すると、かの『秘境』での高校受験というものは、長男の高校受験とは全く別物だ。

今はだいぶ違う空気になっているけれど当時の地元は圧倒的「公立高校第一主義」で、私立高校は「一体どこにあるのかよく知らない」というノリで受けた。

同じ中学校の同級生約200人はスポーツ推薦などの特殊事情がない限り、通学圏内にある2つのうちの私立校1校を選んで受験することが通例で、その上受験当日はバスをチャーターし学校の先生の引率で現地まで連れて行ってもらえたものだった、思えばすごく甘やかされていたような。

それに対して

「最近の私立高校の願書はWeb出願が主流です。

ご家庭で出願していただき、出願確認のページをプリントアウトしたものを学校に出して頂いて、その上で調査書をお出しします」

出願の最初から私の時代とは隔年の感のある長男の私立高校受験は本当にあの頃と全然違う、基本的に本人主導。

私立高校の選択肢が多いので過去の私のように団体で同じ高校を受けに行くことはなく、親と子どもで説明会に行き、資料を貰い、受験当日は自力で受験会場までたどり着かなくてはならない。

それでこの冬休みは、自宅から数回乗り換えをしなくてはいけない私立高校にどのルートで行くのが最適解であるのかということを親が真剣に考え、正月2日には夫と長男で乗り換え訓練もした、これがまたややこしかった。

「都会の方が交通も便利だし、雪が降る地域じゃないから、試験当日はそこまで大変じゃないよねー」

そう思っていた自分を殴りたい、超大変じゃないの、超心配じゃないの。

「だったら試験日に親が付いて行けばいいやないの」と言われそうではあるけれど、普段殆ど自宅のある市内から出ないで生活している私の鉄道乗り換え能力では、長男が受験を予定している私立高校に時間道通り辿り着ける気がしないのだ、故に

「お母さんは来ていらんで、逆に迷子になるから」

と言われている。

そうですか、ふんだ。

その上長男の第一志望の公立高校は、ダンジョンと名高い大阪のターミナル駅を通過するという恐ろしさで今から震えている(私が)。

なんかあなた凄く大変じゃない、もっと近い所にしたらと聞いたら怒られた。

「近いからって理由だけで、高校選ぶ奴なんかおるんか」

いるよ、私だよ。

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がんばれ、がんばろう

地域的なものと、時代的なものが合わさって攪拌された結果、今から30年ほど前の私の実家の地域では『女の子はそんなに頑張って勉強しなくてもいい』という言説がまかり通っていたのだよと、令和を生きる長男に言ってもあんまり信じて貰えない。

しかし嘘でも大げさでもなく、実際にうちの実家の両親は私と4つ違いの弟は大学に行かせるつもりだが、姉である私はその限りではないと公言していた。

それは弟と姉を差別しちゃおうとか姉は弟に比べて可愛くないぜとかいうことではなくて(そうだよね?)、そういう社会通念だったというか、時代だったのだ。

当時の私と言えば、弟と明らかに差をつけられていることを不満に思うことは勿論あったけれど、なにせぼんやりした子どもだったのでそれに抗う程のパワーも、向学心も持ち合わせていなかった、それで

「うーん、じゃあ高校も近いとこでいいか」

と3歳上の姉と同じ、家から一番近い高校を第一志望にして受験し、何となく受かってそこに入学した。

今思えばあまりいいことではなかった。

生まれて初めての受験というものを何のこだわりもなく適当に通過してしまったので、その時なーんも苦労していないし、なーんにも頑張らなかった。

その上このお正月に実家の姉に長男の高校受験のことを、受験校が遠いねんとか、出願が超ややこしいねんなんて電話で話をした時

「うちらが受験した時って、5教科を2日間で受験したのに、長男君は1日で5教科なんや、大変やねー」

「えっ…そうやったっけ」

かつて実家地域の公立高校入学試験が2教科と3教科、2日に分けて実施されていたことを私はひとつも記憶していなかったのだ。

15歳なんて目に写る空の色、友達の好きだったアイドルの名前、何もかもまるで写真のようにきれいに記憶できる、一番脳みそがフレッシュで機能的な時期の筈なのに、私ったら一体あの頃何をしていたのだろう。

もうちょっとよく考えて、もっと一生懸命勉強したらよかった。

こういうつまんない後悔をする大人にならないためにも、今がちょっとしんどくても、長男には是非頑張ってもらいたい。

自分がここだと思った高校を、最大限努力して、その上で受験当日に挑んでほしい。

勿論合格してくれたらいいなと思っているけれど、もし結果が「あかんかった」ってなっても、頑張った結果そうなったなら、お母さん別に怒らへんやん。



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