コノビー編集部の選りすぐり!何度でも読みたい、名作体験談。
今回はコノビーで連載中の「ふくふくさん」の名作をご紹介いたします!鞄の内側につけたマタニティマーク。それでもやってくるつわりの辛さは想像以上でした……。妊娠中の電車通勤時の体験談です。
初回公開はこちらです。
https://mama.smt.docomo.ne.jp/conobie/article/28421
長女を妊娠中の7年前の話。
私は事務職正社員として働いており、電車を乗り継ぎ家から1時間程の職場まで通っていました。
ありがたいことに、結婚してからすぐに妊娠が判明。
当時の私は妊娠について詳しいことは全く分かっておらず、身近な妊婦さんといえば職場の先輩たち。
順調な妊娠生活を送る彼女らを見ていて
「妊娠しても普通に仕事ができるんだ」
「つわりって聞いたことはあるけれど、本当に食べられなくなっちゃう時期があるんだ」
くらいの知識しかありませんでした。
当然自分も職場の先輩たちのように、それまでと変わらず仕事をこなし、産休に入り、無事出産する…と思い込んでいたような気がします。
私が通勤時に毎日悩んでいたのが、マタニティマークをつけるかどうか。
「このマークをつけて座席の前に立つと、座っている人にプレッシャーをかけてしまわないか」
「妊娠したくても難しい人が見たら、複雑な気持ちにさせてしまうかもしれない」
などの気持ちが先に立ち、結局、鞄の内側にマタニティマークをつけていました。
しかし、すぐにつわりが本格的になり、朝起きるだけでも一苦労の日々が始まりました。
電車に乗っても気持ちが悪くなり、1駅ずつ降りるほど。
駅のホームで涙目になりながら職場に休む電話をし、また数時間かけて家に帰る日もありました。
妊娠するまでは想像もしていなかった、つらい毎日でした。
少しでも空いている電車に乗るために、時間はかかるものの各駅停車する普通電車を利用していました。
その際いつも利用していたのは、女性専用車両。
ある日立っているのがつらくなってきて「また次の駅で降りようかどうしようか…」と迷っていると、座席に座っていた年上の女性が私の様子に気づいてくださいました。
「あら、あなた妊娠してるの?早く座って」
と、とても気持ちよく席を譲ってくださった女性。
もうそれだけでありがたくて泣きそうな私に、
「あなた、そのマタニティマークはもっと分かりやすい所に付けていいのよ。
赤ちゃんは社会の宝物。みんなで守るものなんだから!」
と静かな女性専用車両で優しくも力強く語り掛けてくださったのです。
お腹の赤ちゃんのことをこんなにあたたかく見守ってくださる方がいるなんて。
嬉しすぎて、「ありがとうございます」と半分泣きながらお礼を言いました。
あたたかい気持ちになって安心したからか、その日は気分が悪くなることなく、穏やかに過ごせたのを覚えています。
そして翌日、私がいつもの電車のいつもの車両に乗ると、数人の方がさっと席を立ってくださいました。
もしかすると、昨日の女性との会話を聞いてくださっていた方もいるのかもしれません。
皆さんのあたたかい気持ちに感動し、お礼を言いながら、また泣きそうになりました。
それからというもの、毎朝私が電車に乗ると暗黙の了解のように、どなたかが席を譲ってくださるようになっていました。
毎日毎日「ありがとうございます」と笑顔で感謝を伝える日々。
1人でつらくて泣きそうになりながら毎朝電車に乗っていた日々が嘘のように、気持ちが楽になりました。
産休に入る前に、電車で席を譲ってくださった方々に改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思っていました。
しかしその矢先、切迫早産になり絶対安静で寝たままの生活に。
結局その時間のその車両に乗る生活は、急に終わりを迎えてしまいました。
その後絶対安静の時期を乗り越えて無事娘を出産できたのは、あの女性専用車両で出会った方々のおかげだと、私は今でも思っています。
この経験をした後、私は妊婦さんを見かけると、つらそうでなくても必ず席を譲るようになりました。
そしてこの話は夫をはじめ、子ども達にもよく伝えています。
「赤ちゃんは社会の宝物。みんなで守るもの」
私を励ましてくれた言葉を胸に、まずは自分が出来ることからしていきたいと思います。