CANVASのワークショップは、造形、アート、映像、音楽、身体、プログラミングなどテーマが多彩。幼児から小学生のためのワークショップを全国に提供しています。現在、CANVASのプログラムが導入された施設は300以上(2015年4月末日時点)。幼稚園・保育園、児童館、学童クラブなど、地域の子どもたちがいつでも気軽に遊べるよう、活動の場を広げてきました。
ワークショップの展覧会として毎年開催される「ワークショップコレクション」では、各地から各団体のワークショップが大集合。動員数は2日間開催で10万人となり、自治体や企業、大学など産官学、専門家、アーティスト、活動家などがプレイヤーとなって参加します。
ポップで明るい雰囲気の中、毎回100種類以上のプログラムが所狭しと並び、まるで宝箱の中にいるような空間。子どもたちは、個性豊かなワークショップに目移りさせながら、自分のやりたいこと、興味あるものに、自由に、のびのびとチャレンジします。
まだワークショップという言葉すら、ほとんど知られていなかった12年前から、石戸さんたちが変わらず大切にしてきたことがあります。それは、「子どもたちが自分でつくる」ということ。
「時代が大きく変わっていく中、子どもたちに必要な力は、自らがつくり出す力とコミュニケーション力だと考えています。具体的には、かんじる、かんがえる、つくる、つたえるの4つ。これらのスパイラルを大事にしたプログラム作りを続けてきました」
未来の仕事に就く子どもたちへ。CANVASが“遊びと学びのヒミツ基地”を通じて伝えたいこと
1,145 View子どもの創造力と表現力を育むワークショップを全国で開催しているNPO法人CANVAS。2002年の設立時から12年間、現場に立ち続けてきた理事長の石戸奈々子さんにお話を伺うと、子どもたちの「遊び」と「学び」の可能性を広げる関わり方のヒントが凝縮されていました。
出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11017007516これからの時代は「自分でつくり出す力」と「コミュニケーション力」が大事
遊びと学びは本来、同じことだったはず
これからの情報化社会を生きていく子どもたち一人ひとりが、自分で考え、周りの仲間と一緒に新しい価値を創造していく。ワークショップは、遊びながら創造性を身に付けることができる、自分だけの「学び方」を体感するきっかけの場となっています。
CANVASでは、これを“遊びと学びのヒミツ基地”とし、「日本中のすべての子どもたちに届けたい」という理念実現のため、これまで各地域と積極的に協働してきました。
「学ぶことは本来、人間にとってすごく楽しい行為で、遊びと一体だったはず。でも、いつの間にか学びと遊びが離れてしまって、学びは勉強、苦難、苦労が伴うべきものになってしまいました。そうでないと勉強じゃないみたいな感覚があって。でも、それは違うな、と思うのです」
石戸さん自身、子どもの頃から天体が好きで、大学は「宇宙に行きたい」と、航空宇宙工学科がある大学を選択し、東京大学に進学。卒業後、マサチューセッツ工学大学メディアラボ客員研究員に就任した時も、両親に相談することなく渡米したそう。帰国後、メディアラボでの経験を活かしてCANVASを設立するまで、「リスクを考えたり、迷ったりしたことはなかった」と振り返ります。
「例えば、小さい頃って日本語を覚える時も興味津々で、好奇心の塊になって学んでいるわけです。『あれ何?あれ何?』って、全部知りたがる。これは、人間が持っている根本的な欲求だと思うのです。子どもたちには、それを失わずに大人になってほしい」
作品以上に、制作プロセスからその子の良さが見えてくる
親子という固定化された関係から一時的に離れて、ファシリテーターや地域の大人のような第三者が子どもと関わることで、家庭では見られない一面をのぞかせることもあるとか。
「わたしたちは作品だけではなく、むしろプロセスを大切にしていますが、子どもたちは遊びながらいろいろなことを考えています。この子はこんな風に考えていたのか、といった新たな発見もあり、一人ひとりに耳を傾けてあげると、その子の良いところが見えてきます」
例えば、クリアファイルを使って、細く切って、好きなものをつくるというワークショップの時。すごく長いもの、立体的なもの、アクセサリーなど子どもたちが作品を完成させる中、一人だけ、小さな四角をずっと作り続ける子がいたそうです。
「時間切れで、結局、小さな四角が大量にできただけでした。その子はあまり話さなかったのですが、よくよく話を聴いてみると、実はすごろくを作りたかったと。自分なりの構想でゲームを作っていたのです」
石戸さんによると、参加者の30人中、ゲームを作っていたのはその子だけだったそう。
「帰宅後、家で両親と一緒にゲームを完成できたら、その子にとってすごくすてきな思い出になりますよね。ものを作ること、考えることが好きになるのではないでしょうか。こうした子どもの作品づくり通して、大人がどう受けとめ、そこでどんな会話をするか。これはとても大事なことだと思います」
今は、学び方の幅が広がっている楽しい時代
5歳の男の子のママでもある石戸さん。今、お子さんが興味を持っていることを聞いてみると、「人とのコミュニケーション」と答えてくれました。
「言葉や大人、人に興味津々で、会話の量がすごいんですよ。いろいろな人と会話するのが好きなんだなあと。言葉遊びも大好きです。例えば1歳の時、コンビニのサンクスの前を通ると、『1クス、2クス、3クス』なんて言うんです。この子、何なんだろうって。特に私がやらせたわけではないですよ(笑)。文字も書けません」
「あまり人の言うとおりにやるのがいやみたいで」という石戸さんの息子さんは、CANVASのワークショップでも、その個性を存分に発揮しているそうです。
「墨汁を使った遊びでは、ほとんどの子がテーマ通りに自分の名前をデザインする中、うちの子だけは墨汁で手や足をべたべた塗ってました。
さらに、最近の教育環境をふまえて、今の子どもたちの持つ可能性についてはこのように語ってくれました。
「この10年の変化として、ワークショップはとても増えたし、プログラミング教育などもブームになってきています。学びが、すごく楽しい時代になっていると思います。
世界最高峰の教育も、無料のオンライン教育によって学べるようになりました。昔は裕福な家庭だけに限られていたものが、今は学びたいという意欲があれば学びたいだけ学べるようになったのです。
学びの選択肢の幅がすごく広がって、生きる選択肢も広がっていますよね。もはや、良い学校、良い大学でなければならないでなければならないということもなくなってきている。」
「今の職業の65%は子どもが大人になる頃は無くなってしまうと言われていますが、逆に考えれば、今から65%の新しい仕事をつくり出すという未来が待っている。それは本来、すごくわくわくすることだと思っています。」
NPO法人CANVAS
2002年設立。全国各地の行政、学校、美術館などと協働で「子どもの創造と表現の場」としてワークショップや教育プログラムを展開。理事長の石戸奈々子さんは、東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員となる。2011年設立の株式会社デジタルえほん代表取締役も兼任。慶應義塾大学准教授。著書は『子どもの創造力スイッチ!遊びと学びの秘密基地 CANVASの実践』(フィルムアート社)、『デジタル教育宣言 スマホで遊ぶ子ども、学ぶ子どもの未来』(KADOKAWA/中経出版)ほか。
(取材・文 たかなしまき)
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