苦手なこと・不得意なことを底上げすることと、得意なこと・興味があることを伸ばしてあげることどちらを優先すべきなのか、ということについて、考えることがあります。結論から言うと、「どちらも大事」ということになると思うのですが。
今年4歳になる自閉症のある長男を育てていて思うようになったのは、そのさじ加減が難しいな、ということです。
長男は2歳のときに、自閉症スペクトラムの診断を受けました。そのときからずっとお世話になっている大学病院の先生は、「得意なこと、興味のあることを伸ばしてあげたいですね。」という方針で、「興味のないことは、無理強いしてまでやらせる必要はない」(もしくはそこにあまり有効性を感じておられない)というお考えです。
(もちろん、先生のお考えでも、苦手なことをまったくやらなくていいということではなくて、優先順位としてのことだと思います。)
「苦手なこと」と「得意なこと」、どっちを伸ばすのがいいの?
7,904 View自閉症の息子の療育について、最近思うことがあります。それは、苦手なこと、不得意なことを底上げすることと、得意なこと、興味があることを伸ばしてあげること、どちらを優先すべきなのか、ということです。2歳からいろいろな方針の早期療育に取り組んできた自分が今思うことや、自分の考え方を方向付けることになった、あるブログとの出逢いについてお伝えします。
苦手なことと得意なこと、どっちを伸ばす?
「不得手なスキルをボトムアップしていく」という考え方
診断後、長男に早期療育を!!といろいろ探し回った挙句、2歳代で市内で受けられる療育はほぼないとわかったとき、ある療育の保護者勉強会を見つけて、入会しました。
その会の主だった方針は、就学前の時期は子どもの最も伸びる時期であるので、その時期を逃さず、不得手なスキルをボトムアップしていく、というようなものでした。
それは全くその通りで、障害を持つ子ども達にとってそういったスキルを伸ばしてあげることは、大切なことがと思っています。
そして、自分の中では療育ってずっと、そういうものだって思っていました。
長男に対して、苦手部分をどこまで底上げできるか、「障害」の部分をいかに少なく、より本人が生きやすくなる手助けができるかを考えていたんです。ところが、最近ある方のブログとの出逢いがあり、療育や子育てについて、もうひとつ別の視点を与えていただくことになったのです。
得意なこと、好きなことを伸ばすことの大切さ
先日、「うちの子流~発達障害と生きる」というブログの記事を読んでから、「得意なこと、好きなことを伸ばすことの大切さ」 を感じるようになりました。
ブロガーのなないおさんの息子さんは、小学校2年生。自閉症スペクトラムで、支援学級に在籍されています。幼児期、言葉を話すよりも先に、数字に興味を持った息子さん。息子さんが3~4歳のころに、お母さまが「人間の髪の毛は一日に100本くらい抜ける」という話をしたら、息子さんは次の日には「髪の毛は15分に1本抜ける」と言って来られたそうです。
そんな息子さんが4歳のころ、なないおさんは数学オリンピックというものがあると知り。ご本人も、「ぼく、きんめだるとりたい!」と。
そして、なんとなんと、今年の算数オリンピックで金メダル、そして長尾賞という特別賞にも輝いたそうです。(これはとってもとってもすごいことのようです!!!!)
私は、その成績のすばらしさもさることながら、お母さまの以下のコメントに心を打たれました。
以下、なないおさんのブログ記事うちの子流な学習記録 算数オリンピック 2015 表彰式 からの抜粋です。
自閉症スペクトラム障害を持ち、苦手なこともたくさん抱えた息子。
情緒の特別支援学級に通っています。
でも、好きなことに向けてこつこつがんばる力は人一倍の集中力を持っています。
数検や算数オリンピックを息子に勧めたのも、苦手なことが多く不安も強い息子に
得意なことをなにか形にすることによって自信をつけてほしかったからです。
息子はしゃべりだす前から数に強い興味を示し、教えれば教えるだけ吸収し、幼稚園でも一日中自分の疑問に思ったことを考えたり計算していました。
書くことに苦手を持っていても、算数の問題を解くために字を一生懸命書く練習をしました。
かなり上の学年の文章題は意味がわからないので国語力をつけるために本もたくさん読みました。
算数への強い興味が息子の苦手を少しずつ引き上げてくれています。
得意なこと・好きなことが、苦手なことをを引き上げてくれる
私は、今まで 「得意なこと、好きなことを伸ばすことが、苦手なことをを引き上げてくれることにもなる」 という話を聞いたことはあったのですが具体的なイメージが持てず、なんとなく「そりゃ理想はそうだけどね、現実はそんなにうまくいかないんじゃないかなぁ…。」って思ってたんです。
でも、この記事をみて、「得意なこと、好きなことを伸ばすことが、苦手なことをを引き上げてくれることにもなる」って、そういうことか!!と思いました。そして、この息子さんのがんばりと、「好きなことを伸ばす」という姿勢でサポートされてきたお母さまの姿勢に、ものすごく、感動したんです。
それは、すべての人に当てはまること。
先日、社会人教育に携わっている友人に、このことを聞いてみました。
「苦手なこと・不得意なことを底上げすること 得意なこと・興味があることを伸ばしてあげること 二つの優先順位ってどう考えたらいいだろう」って。
友人は、こう答えてくれました。
「本人にとっては当たり前にできていることでも、それがものすごい強みだったりするんです。
今、世界中に人間は溢れていて、自分が苦手なことは、他の誰かがやってくれます。
自分だけができることを伸ばすということが、重要だと思うんです。」
そして、こちらの本を紹介してくれました。
この本の中に、「成長の可能性を最も多く秘めているのは、一人ひとりが一番の強みとして持っている分野である。」という一説があります。
企業の人材育成について書かれた本なので、すべてを発達障害の子ども達に当てはめることはできないかもしれません。発達障害を抱える子どもたちは、やはりコミュニケーションだったり、社会性だったり、身辺自立だったりといった、それぞれが抱える苦手な部分のスキルアップというのは、必要だと思うんです。(なないおさんも、もちろんその部分についての記事も書かれています。)
でも、なんだか最近思うこと。
障害って、なんらかの特別な支援が必要だから「障害」なのだけれど、本当に本当の、子育てで大切な核となる部分は、定型発達の子に対しても、障がいのある子に対しても、同じなんじゃないかな、ということ。
「得意なこと、好きなことを伸ばす」って、「苦手なことを克服する」重要性の前にかすみがちですが、実はとっても大切なことなんじゃないかなと思いました。
コマ回しから広がった可能性。
長男の得意なこと…コマ回し。そして、鍋のふたでもなんでも回せちゃう。
私は最初、「そんなことより、見立て遊びを教えなくちゃ!」とか、「おままごとを教えなくちゃ!」とか思ってた時期もありました。そんなとき、旦那はコマ回しを一緒に楽しんでやりはじめ、義父も一緒になってやりだし(笑)
そのうちに、義父はコマを逆さまに回しだし、旦那は木琴の上で複数コマをまわして、なんだか素敵な音色を奏で出しました。
そして、長男はますますコマが大好きになり。今年の夏、親戚で旅行にでかけたとき。長男はじめて親戚の子と一緒に遊べたんです。
コマのおかげで!
好きなことを見つけよう!
「コマなんて役に立たない」なんて、自分の勝手な思い込みだったんだな、と思いました。好きなこと、得意なことをとことんやらせてあげる、広げてあげるって、大事だなぁと。
みなさんのお子さんは、どんなことがすきですか?自分にとっては、そんなくだらないこと…とか、仕事には結びつかない…とか思っちゃうようなことでも。どんなことにも、「好き」のパワーが詰まってるんじゃないかなって思います。子ども達の「得意なこと・好きなこと」には、無限の可能性が秘められているかもしれないですよ♪
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