いつ「お母さん」になるの?NICU通いで母親の実感がなかった私が、母性と向き合った軌跡
21,630 Viewお腹に赤ちゃんがやってきた時から、「お母さん」になる。頭では分かっていたつもりでしたが・・・。
妊娠29週で緊急帝王切開をすることになった私は、突然の出産に心がついて行けず、母親になった実感がなかなか湧いてきませんでした。毎日のNICU通いを通して一歩ずつ自分の母性と向き合った、元NICUママの気持ちです。
母親になったという実感が湧かない毎日
妊娠29週の時に、緊急帝王切開で双子の女の子を出産しました。娘たちはNICUに入院することになったので、私は一足先に退院して、搾乳した母乳を持って、毎日面会に通っていました。
NICUに到着すると、保育器の小さな窓から手を入れて、「◯◯ちゃん、お母さんだよ〜」と言って手を握り、頭をなでてあげました。オムツが濡れているようであれば交換して、沐浴の時間になったら小さなガーゼで体を拭いてあげました。
・・・当時の私にしてあげられたことは、たったのそれだけ。
それ以外の時間は、ただ保育器の前に座って娘たちをじっと見つめていました。
毎日数時間しか一緒にいられないのに、会いに来てもやってあげられることが少ない。娘たちはとても愛おしいし、毎日会いたいと思うのに、自分が母親になった実感がない。もっと言うと、娘たちを抱っこすることもできなかったし、直接母乳をあげていたわけでもなかった。人工呼吸器をつけていたので、泣き声を聞くこともできませんでした。
私は、いつも思っていました。「母親になる」ってどういうことなんだろう?
帝王切開後の体で搾乳をすることも大変でしたし、電車とバスを乗り継いで、片道1時間以上かけて毎日面会に通うことも大変でした。でも、それ以上に何よりも大変だったのは、自分の「母性」と向き合うことだったのです。
生後23日で、ようやく初めての抱っこが叶った!
生後23日にしてようやく、娘たちにカンガルーケアをしてあげることができました。
カンガルーケアとは、お母さんの肌に直接触れるように抱っこしてあげることで、小さく産まれた赤ちゃんたちにたくさんの良い効果があると言われています。当時私が看護師さんから教えてもらった効果は、赤ちゃんがお母さんのぬくもりを感じて安心する、呼吸も安定する、ミルクをよく飲むようになる、体重増加にもつながる、常在細菌をもらって免疫もつく・・・というもので、まさに良いことづくめでした。
そして何より、初めて我が子を抱っこすることがとても嬉しくてたまりませんでした。
胸元に抱いた我が子が、自分を見上げてくれる姿の、何とかわいいことでしょう。とても小さな体でしっかりと私に吸い付いてくるようで、言葉では言い表せない愛情を感じました。そして、この子を守ってあげたいという気持ちが湧いてくるのはっきりと感じました。
カンガルーケアを終えて、看護師さんに「実は今まで、母親になったという実感が湧いていなかった。でも、抱っこをして初めてこれが自分の母性なのかな?と感じることができた」と伝えました。
すると、その看護師さんはこんな言葉を返してくださいました。
「お母さんになるって、そういうことですよ。誰でもみんな、赤ちゃんと接する中で少しずつお母さんに『なっていく』んです。」
赤ちゃんの存在こそが、自分を母親にしてくれている
私は当時、NICUの看護師さんに勧められて、交換育児日記をつけていました。
面会中に感じたことをメモするノートで、赤ちゃんのふとした仕草やその日の様子、少しずつ見える成長、見守る自分の気持など、いろいろなことを書きました。
そして看護師さんも毎日コメントを書いてくださり、私が面会していない間の娘たちの様子を知ることができました。時には、写真を撮って貼ってくれたりもしました。
私はノートに書くためにしっかり娘たちを観察していましたし、その習慣のおかげで些細な変化にもよく気がつきました。今思うと、そうやって娘たちとしっかり向き合っていたのだと思います。
子どもたちとしっかり関わり、向き合っていく。母性とは、そうしたことの積み重ねを通して「育んでいく」ものなのだと思います。自分が母親だから子どもたちを育てられるのではなく、子どもたちの存在こそが、自分を母親にしてくれるのだと思うのです。
NICUの看護師さんたちは、娘たちの医療的ケアやお世話もしてくださいましたが、同じくらいに「お母さんが、お母さんになっていく」ためのサポートをしてくださっていたのだと思います。
私はNICU通いを始めた当初、帰り際に看護師さんから毎日言われる「お母さん、明日は何時に来ますか?」の言葉をプレッシャーに感じていたこともありました。でも、今ではそう言われていた理由がよく分かりますし、とても感謝しています。
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