「夫婦別姓」問題とは、結局何だったのか?
11,377 View夫婦別姓に関する裁判が話題になっていますね。裁判の内容は法律用語も多く、とても分かりにくいのですが、それでもツイッターなどでは「別姓賛成」とか「どうしてそんなに名前にこだわるの?」と意見や反響がたくさん。多くの人が関心ある出来事なのだと思いました。 別姓について、事実婚を選んだ我が家の視点からレポートします。
【3分で知ろう】「夫婦別姓の裁判」で、何が決まったの?
先日、夫婦別姓に関する判決が話題になりました。
夫婦別姓は、夫婦の苗字(姓)が別々のこと。となんとなく想像がつきますが、判決となるとちょっと分かりにくいですよね。
たとえばニュースの見出しを見ても…
夫婦別姓認めない規定 合憲の初判断 最高裁 (NHK News web)
夫婦別姓認めぬ規定「合憲」 最高裁初判断 「家族の姓一つに合理性」(東京新聞)
む、難しいですよね。よく分かりません。
私も法律や裁判の専門家ではないので、捉え方のミスがあるかもしれませんし、訴えを起こした方の思いとズレがあるかもしれませんが、だいぶ意訳して私なりに解釈をすると…
(※専門家の方:ご指摘がありましたら、ご連絡をお願いいたします)
【訴えた人】
夫婦は別姓でありたいと考える、5人の方。
【訴えの内容】
(そもそも…)
日本では「夫婦は、結婚する時におなじ苗字(姓)にしてね」と規定されています(民法:明治時代に施行)
その際、苗字は夫か妻のどちらか一方から選びます。
夫or妻で、自由に選べるけれど、別々の苗字で使い続けることはNG。勝手に新しい苗字をつくってもいけません。
そしてご存知の通り、妻の姓を選ぶ人はほとんどいません。どちらを選んでも良いと言いつつ、検索してみたら実際は96%が「夫の姓」を選んで結婚しているとのデータが出てきました。
(これに対して訴えた人の主張は…)
どちらかの姓しか選べないことによって、私たちには何かと不利益が生じている。
憲法にある、男女平等・個人の尊重・婚姻の自由の考えと合っていない。夫婦の同姓を強制しているこの民法は、憲法に違反しているのでは?
と、最高裁にジャッジを求めました。
正確には国に賠償を求めているのですが、おそらく償いの問題だけではありません。
推測にすぎませんが、訴えた方が本当に言いたかったことは、おそらく合憲どうかではなく、「選択的別姓にしようよ!」だと思います。
憲法がどうのではなく、別姓もOKにしようよ!という働きかけは、なぜ男女不平等を見てみぬふりするの?人が生きたいように生きることに歯止めをかける理由は?という、大きな大きな意見も含まれているのでは、と予想しています。
【結果】
民法の「夫婦は、結婚する時に同じ苗字(姓)にしてね」は、憲法違反ではありません。だから訴えた側の言い分は聞けません(棄却)。ただし、確かに最近いろいろ問題はあるようだから、別姓の件は国会で話してね。
こんな感じの判決になりました。
憲法的には問題ないけど、今後の別姓の件は国会に投げちゃおう!そんな感じです。逃げたな…という気もしますし、確かに裁判で決める内容ではないなとも思います。
補足ですが、棄却とはいえ15人中5人の裁判官が違憲を認めています。
10対5での棄却です。最高裁判所の裁判官は、そもそも全部で15人しかいません。そのうち12人は男性です。
だからどうということもないかもしれませんが、今回、3人の女性裁判官は全員違憲とジャッジ(原告側の言い分にうなずいた側)です。最高裁の裁判官ですから、男性だからとか女性だからとか、ジャッジに影響はないとは思いますが、とはいえ、もしも15人のうち半分が女性でも、結果は同じだっただろうか?なんてことは思ってしまいます。
現在の「夫婦別姓」を希望する場合の選択肢とは
現状、夫婦が別の姓を使いたいと思ったら、2つの方法から選ぶことになります。
(1)籍を入れて結婚をし、戸籍上は同じ苗字に。職場などでは通称として旧姓などを使う。(主に妻が旧姓のケースが多いですよね)
(2)籍を入れずに結婚のテイを取る、事実婚にする。
我が家も夫婦の姓は別がいいなと考えているため、(2)の事実婚で別の姓を使って過ごしています。
夫の戸籍は増田信也
私の戸籍は高沖清乃 です。
戸籍も苗字もバラバラです。つまり、夫と私は、自分たちでは夫婦・家族と思っておりますが、戸籍上は何の関係もない人たちです。(子どもたちの親というつながりはありますが)
2つも選択肢があるなら、裁判までしなくてもいいのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれません。判決文からも「あなたたちが言うほどシビアな状況でもないんじゃないの?」みたいな印象を受けましたが、実際に選択肢である(1)(2)を試してみると、生活のいろいろなシーンで面倒や不具合が起こってきます。だからこそ、5人の方は「なんとかしたい」と訴えを起こしたのだと思います。
事実婚の我が家では、日常生活ではさほどストレスも問題もありませんが、例えば
1.子どもの親権が私にしかない
私たちがうまくいっていればOKなので、日常的には問題なし。私たちの関係が破たんした時の問題ですが…よく考えてみたら、離婚の時も親権は問題なりやすいので、事実婚ならではの問題ではないかもしれませんね。
2.配偶者ではない
夫は私の、私は夫の配偶者ではありません。配偶者控除など税の優遇を受けられないので、場合によっては税金が高くなってしまいます。
おまけに、当然ながら保育園の申込みの際は夫と収入合算して出すので、保育料を決める基準は「夫婦」としての水準になります。ちょっと矛盾があります。
また、どちらかが死亡した時にも、配偶者への相続がありません。遺言をつくっておかなくちゃ。
3.自動的に「夫の子」とならない
籍の入った夫婦に子どもが生まれた際、通常は役場に出生届けを出せば、「お二人の子ども。おめでとう!」と子どもがご両親の戸籍に入りますが、事実婚の場合、パパとママの戸籍がばらばらなので、「我が家に子どもが生まれました」と役場に行くだけでは、父不明になってしまいます。パパが「認知」をしてはじめて、パパの子でもあると認められます。
なんだか夫が気の毒になる瞬間です。息子たちと夫は、顔そっくりなんですけどね。それでも認知が必要です。(見りゃ分かる!といつも思います)
4.養子縁組などの足かせになる
我が家は養子を迎えることに関心がありますが、事実婚夫婦は、養子を迎える家庭としてNGになることが多いです。夫婦や親としていまいちと言われているよう。
5.書類を書く時に、いちいちわからない!
公的な書類を書く時に、私たちは夫婦なのかそうでないか、苗字の欄が1個しかない時にどうすればよいかなど、いちいち面倒です。自分で自分の状態がよくわからない。意外とこれが厄介です(笑)
そして今回のようなジャッジが出ると、「あれ?私たちって、国に夫婦と思われていない?もしや、パートナーシップにおいての悪例?」みたいな気持ちになります。ちょっと凹みます。
夫婦別姓を望む人たちの思いを考えるいくつかの視点
今回の別姓の訴えを起こした方を紹介する際に、テレビやネットで「自分の苗字で死にたかった」というフレーズが多用されたためか、夫婦別姓を希望する人は、「そんなに自分の苗字が大好きなの?」とか「夫の苗字が嫌いなの?」といった印象を持っている方が多くいらっしゃるかもしれません。
けれども、夫婦別姓を望む人や応援する人の想いは様々。「夫の名前が嫌なら結婚するな!」とか「わがままだ」というツイートもありましたが、夫と共によりよく生きていきたいからこその訴えです。なぜ別姓を望むのか、いくつか例をあげてみたいと思います。
【キャリアからの視点】
・苗字が変わることで、せっかく築いてきたキャリアや信頼がゼロになってしまう。旧姓を認めない職場もありますし、公的書類では戸籍の名前が必須(併記もできません)。またたとえば公的論文などは検索でも出てこない場合もあります。
【アイデンティティからの視点】
・生まれてからずっと使ってきた姓が変わることで、自分が自分でない感じや、いわゆるアイデンティティの喪失が起こる。結婚で姓が変わって「嬉しいな」と感じる人もいれば、「しっくりこないな」と感じる人もいるということです。感じ方は人それぞれ。名前は毎日使うものですから、どう感じるかは個人の大きなところですよね。
【跡継ぎからの視点】
・一人っ子どうしの結婚で、どちらかの姓を選ぶとどちらかの姓が途絶えてしまうなど、跡継ぎの問題。
そもそも少子化ですから、こうした問題は必ず起こってきますよね。
【ジェンダー問題からの視点】
・姓を変える側(主に妻)ばかりが、手続きやら面倒。結婚も離婚も、名前が変わるのは女性ばかりです。たとえば男性は、離婚を世間に知られずに済むかもしれませんよね。けれども女性は、離婚後に相手の名を名乗り続けるのはしっくりこないでしょうし、「(離婚で)苗字が変わりました」とか、取引先等にも都度、言わねばならないかもしれず、何かと厄介です。
時代はダイバーシティですから、いろいろな理由から別姓のほうがいいなという人が出てくるのは当たり前。人がそれぞれに懸命に生きていたら、いろんな視点や価値観がどしどし出てくるのは自然の流れでしょう。
我が家の場合「夫婦別姓の事実婚」のケースとは
私がなぜ別姓を選んだかというと、日本はまだ「嫁にもらう」という概念が強く、姓を夫と同じくすることでの、夫の家にもらわれていく感覚が否めない、というのが大きいです。
人はもらわれたりしないものですし、誰かの物でもありませんが、いくら自分がそう考えていても、相手がどう捉えるかはまた別。相手が“嫁をもらった”と思っていればその人は“もらわれた”扱いになると思います。嫁だから飯を炊く、嫁だから酒を注ぐ、嫁だから子を育てる、嫁だから、嫁だから、嫁だから。これだと、個人が全く尊重されていません。
では、夫を妻の姓にすれば良いのでは、と思われるかもしれませんが、それはそれで、息子が取られたと、これまた「もらった」とか「取った」という話になりがち。繰り返しますが、人はもらわれたりしませんし、誰の物でもありません。私は姓を分けることで、そこに、一つ線引きをしておきたい。
さらに、夫や私もまた、姓を同じくすることで互いを尊重するという意識が薄れてしまうような感覚も持っています。同姓になることでチームとしての一体感が出るのはよいかもしれませんが、一歩間違うと、依存につながりそうな気がしています。
家族や夫婦として、愛や信頼を大切にしていきたいのに、妙な安心で相手を尊重できなくなってしまいそう。私たちはそういう自分や相手の弱さを知っています。
だからこそ姓を別にすることで、「私とあなたは違う人」と明確にし、相手を尊重し合うパートナーシップを、日常の中で楽しみながら目指したいと考えています。
長男が生まれる時に、二人でこんな話をして事実婚のまま子どもを育てようと決めました。全部、私の主観や我が家の考えの塊なので、人に押し付ける物ではないと思っています。我が家の場合ということです。
「夫婦別姓」に反対する意見の内容とは
当たり前ですが、別姓に反対意見もたくさんあります。
【反対サイドの意見】
・夫婦の絆や家族の一体感が生まれない・育まれない
・子どもはどうするんだ・子どもがかわいそう
・必要がない・合理性がない
・日本の文化・日本の家族の在り方が損なわれる
・ややこしい
・わがままだ
などなど。私の意見とは違うけれど、そう思う人もいるだろうなと感じています。
ただ、これはちょっと失礼な!?と思うことも。例えば、一部報道では「家族の一体感が失われる」と記述されていました。苗字が違うだけで、一体感を失われるという根拠もなく、決めつけられていることに違和感があります。
反対論としては、竹田恒泰さんのツイートも話題になっていますね。
「初めて夫の姓で呼ばれ、『私は結婚したのか』と思い、頬を赤らめる」 こういうのが幸せな結婚というのだと思う。夫の姓を名乗りたくないと言っている人に限って不幸せに見えるのは気のせいだろうか。
— 竹田恒泰 (@takenoma) December 17, 2015
今後の「夫婦別姓」の動向について
今回の裁判が棄却だからと言って、「別姓」が今後一切認められないわけではありません。
官房長官は今回のジャッジを受けて「(別姓について)国民的な議論を踏まえながら慎重に対応していくことが必要だ」とも言っています。
いま、提案されているのは「選択的夫婦別姓」。
「別姓」を推進する人たちが願っているのはあくまでも、選択的な別姓です。日本中の夫婦を別姓にしたいということではなく、同姓が良い人は同姓、別姓がいいなという人は別姓を“選べる”世の中へ!という話です。
選択的夫婦別姓が導入されることになっても、きっと同姓が良い人にとっては何も変化はないでしょう。世間に別姓の人が現れるだけです。(それすら嫌だ!という方もいらっしゃるとは思いますが)
また、子どもはどうなるかについては、今後議論がなされていくことだと思います。
中には
・パパの姓かママの姓か、親が勝手に選ぶのは良いと思えない
・子どもが混乱する
・教育上、好ましくないことがある(気がする)
といった意見もありますが、そもそも現状でも結婚の時に「どちらかの姓を選択」した瞬間に、未来のベビーの姓も勝手に選ばれているわけですから、そこに問題があるようには思いませんし、子どもが混乱するとされている3歳~4歳の「ママ・パパ大好き!」の段階で、親の苗字が云々なんて分からないと思います。
ママやパパが自分の人生に誇りを持って、笑っていることが何より子どもに好ましいことだと思うんです。
夫婦・家族・親子のかたちに正解はあるのか?
今回、つくづく思ったことを率直に言ってしまうと、家族の在り方について国や他人が、ずいぶんうるさいんだなーということ。どんな家族を育んでいくのかは、その家族が本気で考えていることであって、正しさを他人や国が定義するようなものではないと思います。
国は、人々がゆたかに生きるために、未来が明るいものになるためにと、精いっぱいバックアップするのが仕事で、人の生き方を決めることとは違うと思います。まして、国はここ数年
・ダイバーシティ
・男女共同参画
・女性やママの活躍
と、時代に合ったテーマをたくさん掲げているわけですから、いろんな人がいろんなシーンで活躍できるようにといった視点で、別姓も検討してほしいなと思っています。次の選挙や、国民をコントロールすることを狙うのではなく。
また、私たちも、多様な考え方を認め合えるようになると良いのかなと思います。
これからますますグローバルになり、違う考え方やカルチャーがどんどん暮らしの中にもやってきます。必ずやってきます。それをいちいち「違うから気持ちが悪い」とか「除け者にしよう」とかやっていると、消耗してしまう。それだきりがありません。
私のFacebookに、こんな書き込みをしてくれた方がいらっしゃいます。
色んな人や家族の形があるからこの世は楽しいし素晴らしい!
そうですよね。違っているから人は恋をしたり、うれしくなったりするんですよね。この媒体「コノビー」のコンセプトも
得意不得意、興味関心、好ききらいは、子ども一人ひとり、まったく違う。その子がその子らしく、自分の力で生きられるように、子どもの個性がのびる方向を見つけ、どこまでも伸ばしていく。
家族のかたち、働き方、暮らし方のスタイルは人それぞれ。周りに合わせるのではなく、自分たちらしい子育てスタイルをみつけることで家族が、子どもが、もっとHappyになる。
(コノビーとは より)
別姓という一つの議論ではありますが、違っていることを楽しむ・認め合うというのは、おそらくこれからの子育ての重要なキーワードですよね!
性別とか、年齢とか、国籍とか、背が大きいとか小さいとか、頭がいいとか足が遅いとか、そういうことを全部丸ごと抱きしめて、「あー、わたしの人生って心地いいわー」と感じたり「子どもたちよ、楽しい人生を~!」と願うことは、とても幸福なことのように思います。
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