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公開 2016年03月09日  

小児科医のわたしがたくさんの相談を受けて今伝えたいこと【きょうの診察室】

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診察室には、さまざまな悩みを抱えたご家族がいらっしゃいます。子どもの「いま」と「もっと」の間で生まれるたくさんの悩み。日々多くの相談を受けるなかで、感じていることをお伝えしようと思います。


きょうの診察室:「今度はしゃべりすぎで心配なんです」

子育てをしていると、毎日たくさんの「悩み」がうまれては消え、うまれては消えが繰り返されていると思います。

それを私たち医師や、第三者に打ち明けてくださるのは簡単なことではない、と思うからこそ、ご家族が発信してくれたことを大切に、小児科医として一緒に向きあっています。

中でもよく相談を受けるのが「ことばの悩み」

・健診で「ちょっとゆっくり」と言われた
・自分の言っていることがわかっているのか心配
・なにか伝えようとしているんだろうけど何を言っているのかわからない
・単語が出ない
・インターネットで調べれば調べるほど、自分の子どもが自閉症に思えてきた


しゃべってほしい、
一緒に話したい、
思っていることを伝えてほしい…

それぞれのご家族は、切実な面持ちでご相談されます。

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その日も何組か「ことばの悩み」の相談が続き、ことばが全然出ないと心配で受診され、「この間、『ぱ』って初めて言ったんです」と嬉しそうに報告してくれたご家族の後に、5歳のAくんの診察がありました。

Aくんのお母さんも、我が子のことばの発達に悩みを抱えていた親御さんのひとりでしたが、その悩みを日々のAくんとの関わり方の工夫に換えてこられたお母さんでした。

今ではAくんはたくさんの言葉を話すようになっています。

そんな過程を知っているからこそ、今日の診察中も楽しそうにたくさんお話をするAくんを見ながら、「Aくん、本当にいい顔をしてお話ししていますね」と伝えると、「そうなんです!」と嬉しそうにお話してくれるかなと思いました。

しかしお母さんは、顔を曇らせてこう言いました。

「しゃべるようになったら次は、場所を選ばずどこにいてもすごくしゃべるから、大丈夫かと心配なんです。」


子どもの健やかな成長を願うからこそ、悩みはつきないものなのかもしれないと感じながら、お母さんに向けてこう問いかけてみました。

「お母さん、Aくんは今までみんなに伝えたい想いがいーっぱいあって、やっと言葉があふれてきたから、伝えたくて伝えたく仕方ないんじゃないかな。お母さんも最初どんなささいな言葉でも嬉しくて「もう一回言わないかな」って思っていたように、Aくんも嬉しい気持ちでいっぱいなのかもしれないですね。

お母さんはハッとして「昔のこと、忘れそうになっちゃいますね」と、Aくんの頭をなでました。

子どもの「いま」に目を向けよう

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しゃべらないということを悩んでいる人もいれば、しゃべりすぎを悩んでいる人もいます。

大切な子どもだからこそ、「もっと、もっと」と望み、その「もっと、もっと」という気持ちが、ご家族に新しい「悩み」を連れてくるのかもしれないと感じた診察となりました。

一生懸命なご家族ほど、ずっと先(未来)に目が行きすぎて、いま、その瞬間に子どもが輝いて達成していることが見えにくくなるのかもしれません。

しかし「もっと○○できるようになってほしい」という気持ちを、
子どもの“いま”に目を向けることで、「こんなにできるようになった!」に変えられるのではないかと思うのです。


いま、あなたの目の前のお子さんが、少し前と比べて、出来るようになったことはありますか?

あんなちっちゃい手と足で、目も開かなかった子が、笑うこと。

ハイハイをしなくて心配したけど、しつこいくらいに駆け寄ってきて気に入ったおもちゃを見せること。

友だちできるか不安だったけど、どろまみれで喧嘩して怒られて帰ってくること。


「もっと」を「こんなに」に変えて、お子さんと向き合う1日にできたら、いいですね。

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