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公開 2016年03月30日  

「どうしたい?」ー小児科医が目指す、子どもに選択肢がある診察室とは【きょうの診察室】

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どんな子どもでも、子どもらしく主張し、成長し、選択する力と権利を持っています。今回は医療現場の子どもに関わる際のヒント「チャイルド・ライフ」から、子どもの力を支え、引き出すコツを一緒に学びましょう!


きょうの診察室:私の診察の始めかた

私は診察の始めかたとして2つ大事にしていることがあります。

1つ目は、子どもたちが診察にきた際、必ず「こころの準備」ができる時間を設けること

それは子どもたちと今を共有する、ということです。

・これから行うことの流れ
・すこし痛いこと
・すぐ終わること
・泣いてもいいこと


子どもが不安や心配を抱いたまま診察が始まることがないよう、こちらが伝えられる情報をきちんと伝え、また子どもがなにか聞いておきたいことがないか心配なことがないかも合わせて聞くようにしています。


そして2つ目は、子どもに「選択肢」のある処置を行うことです。


たとえば注射の場合、

「右のおててがいい?左のおててがいい?〇〇くんが選んでいいよ!」
「〇〇ちゃん、今日は座ってやる?寝てやる?」
「じっと見ていてもいいし、こっちのアンパンマンを見ていてもいいよ!どうする?」


というように、声をかけてから、注射をします。


ここで大切なのは、子どもに選択肢があるということ。

仮に子どもが選べなくても、大丈夫です。


選べなかったら次の提案をスムーズに出します。

「そっか、じゃあ〇〇くんはお箸をこっちで持つから、反対にしとく?」
「じゃあ楽チンなように、寝てみる?」
「見てると心配になっちゃうかもしれないから、アンパンマンとにらめっこにしとくか!」


こうすれば、子どもが自信を無くさないようにサポートすることができる、と考えています。


このようにやむを得ず強制された状況を、自分で選び取った印象に変えるだけで、子どもたちは「自分は大切にされている(権利は守られている)」と感じ、結果驚くほど主体的に診療に協力してくれるようになります。


これはきっと、病気の子どもに限ったことではありません。

苦手な野菜を食べる食器の色。
宿題の順番。
大切な場面で履く靴。

「どっちがいい?」を取り入れることができるきっかけは、お家の中にもたくさんありそうだなと思っています。

子どもの力を引き出す「チャイルド・ライフ」の考え方

このように私が、子どもたちが事前に心の準備ができるようにしたり、子ども自身が選択できるようにしているのは、「チャイルド・ライフ」という思想からきています。

「チャイルド・ライフ」とは、どんな環境にある子どもも、子どもとしての権利(知る、選ぶ、遊ぶ、拒否するなど)を保障されるように、周りの大人や環境が支えるという考え方のことです。

病気のある子どもたちや、病気の家族を持った子どもたちと関わる時、つい「病気」のほうに重きが置かれがちになり、子ども自身の主体性、選択の自由や、発達する権利が見えにくくなるという課題から、医療の現場でうまれました。


私自身、チャイルド・ライフの思想をとても大切にしていて、子どもと向き合う時には、「子ども達は、病人や患者さんの子どもである前に、『ひとりの尊厳ある存在』なんだ」と必ず心に留めています。

日々子どもと向き合っているみなさんは、ふとした瞬間に子どもが発揮する観察力、理解力や、適応力にびっくりすることや、子どもならではの視点や、選択の根拠、創造性に心を動かされることがあると思います。

子どもは本来、力のある存在なのです。

チャイルド・ライフの思想で子どもと接することで、子ども達はどんな環境に置かれても、自分の力を発揮したり、自分は大切な存在だと自覚できるようになります。


押し殺さずに泣いてくれたり、自分から採血のタイミングや姿勢を提案してくれたり、病気について質問してくれる。

子どもの自尊心を支えるお手伝いをすることで、一緒に医療に取り組むことができるようになり、子どもとその周囲の間でよりよい相乗効果が生まれることを日々感じています。


そしてこれは、医療現場に限ったことではありません。

新しいことをする時、知らないところに行く時など、子どもがなにかにチャレンジをする際、チャイルド・ライフから得られるヒントがたくさんあるのではないでしょうか。


「チャイルド・ライフ」を根っこにした診察室の様子、これからもみなさんと共有させてくださいね。

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