育児と仕事を両立させるポイントとは?地域の支援機関や会社で活用できる制度もご紹介

仕事と育児の現状

近年、共働き世帯が増え育児をしながら仕事する女性が増えています。しかし育児期の男性は長時間労働が多い傾向にあることから、女性の子育てに対する負担が大きいのが現状です。育児と仕事の両立に、多くの女性が悩んでいます。

女性の就業継続率

出産後も働きたいという気持ちをもちながら、働けず家事に専念しなければならないのが女性の現状です。男女共同参画局が発表した
男女共同参画白書 令和4年版によると、第一子出産を機に多くの女性が離職しています。

夫婦ともに働く20代から30代の女性は結婚後約40%いるのに対し、出産後は約28%に減少。女性全体の39%はフルタイムで働きたいと回答しているので、多くの女性が家事と育児の両立がかなわず、働けない状況にあることがわかります。

男性の長時間労働

女性が家事に専念しなければならない状況には、男性の長時間労働が影響していると考えられます。令和2年版過労死等防止対策白書によると、月末1週間の60時間以上の就業者の割合は30代から40代の育児期世代にある男性が最も多い現状です。ほかの性別や世代と比べても高い水準となっており、育児期世代の仕事の負担は高いと考えられます。

一方で男女共同参画白書 令和4年版によると、第一子が産まれたあとの配偶者の働き方について、20代から30代の女性の約42%が家事・育児と仕事を両立してほしいと回答しています。社会的な現状と家庭における理想がマッチしておらず、結果として女性に家事・育児の負担が偏っているといえるでしょう。

育児と仕事の両立のためのポイント【家事編】

育児と仕事を両立するためにはコツがあります。多忙な毎日を効率よくこなすうえで意識したい家事のポイントをご紹介します。

家事は夫婦で分担する

女性が家事と育児を両立させるためには、夫婦の助け合いが不可欠です。まずは最も身近な協力者として、夫と家事の分担をしましょう。家事の内容ややり方が十分に共有されておらず、夫婦間で衝突してしまうこともあります。しっかりと話しあって、お互いが納得する方法を探ることが大切です。

家事の共有では、どのような家事があるかを書き出して見える化するのがおすすめです。そのなかからお互いどの家事をどのタイミングで取り組むのが効率的か話し合います。家事のやり方は人それぞれで異なるので、こだわりのポイントがある場合はあらかじめ伝えておきましょう。

「タオルは畳んだら下のほうにしまい、使うときは上から使う」や「ゴミをまとめて捨てるときは、新しいごみ袋を設置する」など、具体的な指示を心がけてみてください。

家族の協力を得る

夫はもちろん、両親や親戚など、協力を仰げる人を頼ることも大切です。日頃から周囲の人とコミュニケーションをとって頼り合える関係を築いておきましょう。特に仕事を始めたら、子どもの急なアクシデントに夫婦だけでは対応しきれないこともあります。産後、仕事へ復帰する際には家族に声をかけておくとよいでしょう。

また子どもが大きくなったら、自分のことは自分でするよう意識付けすることが大切です。自分の服は自分で畳む、食べた食器は台所へ下げるなど、小さな家事も積み重なれば大きな助けになります。そのためには子どもの見本となるように、あらかじめ夫に相談しておくとよいでしょう。

料理や買い物は時短を意識

料理や買い物は時間短縮を意識して、ときには便利なサービスを活用しましょう。近年ではネットスーパーや食材宅配サービスなど、家事を助ける便利なサービスがあります。ネットスーパーを活用して、冷蔵庫の中身を確認しながらあらかじめ食材を購入し配達してもらえば、移動の時間が削減でき余計なものを購入したりスーパーで悩んだりすることもありません。

また食材の下ごしらえが済んでいる食材宅配サービスを利用すれば、料理の時間を短縮できます。市販の総菜や冷凍食品を活用してもよいでしょう。

便利なサービスを利用することに罪悪感が生じるかもしれません。しかし家族との時間を確保し、忙しい女性がより自分らしく暮らすために必要なことです。負担に感じることを見直して、便利なサービスを活用してください。

便利ロボットを活用する

料理や掃除の負担を軽減する家電も販売されています。食器洗い乾燥機や衣類乾燥機、ロボット掃除機など、家事をサポートする便利な機械を活用しましょう。導入コストが気になりますが、家事にかかる時間を短縮して仕事をしたり家族との時間を確保したりするためには必要な経費です。

大型の機械を導入できない場合は、スマホアプリを探してみるのもよいでしょう。家族のスケジュールを共有できるものや、1週間分の献立を考えてくれるものなどさまざまなアプリが提供されています。自分や家族の生活スタイルにあわせて、便利な機械やサービスを活用してください。

ながら作業を意識

時間の短縮には、ながら作業がおすすめです。簡単な作業は2つ同時にこなすことで、家事の負担を減らします。

たとえば歯磨きをするときは同時に粘着式ローラーで洗面所を掃除したり、入浴後は軽く浴槽を拭きあげたりするだけで、あとから必要になる家事作業の負担が大きく軽減されます。

生活の動作で、ながら作業を意識してみてください。

家事を完璧にこなそうとしない

家事と育児の両立を考える際、大切なのはすべてを完璧にこなそうとしないことです。完璧な計画を立ててその通りに進めようとすると、ストレスや疲労がたまります。計画通りにいかなくても深く考えず「まあいっか」と思える気持ちの余裕が重要です。

家事の予定には休憩や余白を含め、できないことも予定を立てなおしたり諦めたりして柔軟に対応します。やらなければならないことに固執するのではなく、今日やらなくてもよいことを考えると、気持ちが楽になるでしょう。

育児と仕事の両立のためのポイント【仕事編】

企業では働き方改革によって働く女性を応援しています。育児中に活用できる支援制度をご紹介しましょう。制度取得の可否や条件は企業によって異なるので、それぞれ確認してみてください。

育児休業制度

育児・介護休業法に基づいて、育児期間中に取得できる休業制度です。1歳未満の子どもがいる場合には適用対象となります。国が法律で定めた労働者の権利なので、企業に関係なく取得可能です。休業期間中は育児休業給付金として、通常の給料の一定分の手当が雇用保険から支払われます。

派遣や契約社員、パート雇用でも適用されます。ただし1年以上雇用され、1年以上雇用関係が継続する見込みがあって週の所定労働日数が2日以上といった条件があるので、あらかじめ確認することが大切です。また育児休業制度は男性も取得可能です。積極的に取得を推進する企業もあるので、相談してみるとよいでしょう。

短時間勤務制度やフレックスタイム制度を利用した労働時間の短縮

所定の業務時間を減らして、家事・育児にあてることもできます。短時間勤務制度は育児・介護休業法によって定められた制度です。子どもが3歳に達するまで利用でき、1日の所定労働時間を6時間以内に変更できます。派遣や契約社員、パート雇用でも適用可能です。

フレックスタイム制度はあらかじめ定められた総労働時間のなかで、始業・就業時刻と労働時間を従業員自らが決められる制度です。導入は企業に委ねられているため、確認してみるとよいでしょう。フレックスタイム制度を利用すれば、保育園の送迎時間にあわせて始業・就業時刻を調整したり、早朝に出勤して早い時間に帰宅し家事をこなしたりすることが可能です。

育児時間の制度

育児時間とは、1日に30分以上の休憩を2回とることができる制度です。育児中の従業員の所定労働時間を原則6時間とする制度で、2009年に義務化されています。フルタイム正社員でなくても利用できるので、確認してみるとよいでしょう。

育児時間の制度は、もともと女性が授乳するための時間として設けられた制度です。現在では家事や育児に余裕をもたせる目的で、朝や夕方に取得されるケースが多くみられます。

子の看護休暇

子の看護休暇とは、就学前の子どものケガや病気に際して看病するために取得できる休暇制度です。育児・介護休業法によって定められており、1年度につき5日を限度に休みを取得できます。育児休業はまとまった期間での休みを想定しているのに対し、看護休暇はケガや病気などの突発的なアクシデントに対応した制度です。派遣や契約社員、パート雇用でも適用されます。

2021年1月からは、時間単位での取得が可能になりました。これによって始業・就業時間に連続する取得が可能です。一方、就業時間内の取得、いわゆる中抜けを設定することを厚生労働省は義務化していません。しかし配慮を求める現状にあるので、中抜けが必要な場合は企業に相談してみるとよいでしょう。

短時間正社員制度

採用時に短時間勤務での社員契約を行う短時間正社員制度を設けている企業もあります。所定労働時間が短いこと以外は、フルタイム正社員と雇用条件が変わりません。そのため働く女性以外にも、介護中の人や働きながら学校に通う人、定年後に再雇用された人などさまざまな境遇の人が利用しています。

義務化された制度ではないため、未導入の企業もあります。しかし国は制度導入の目標値を定めて導入を推進している現状です。今後ますます一般的になることで、働き方の多様化が期待されます。

時間外労働の免除

時間外労働の免除とは、3歳未満の子どもを育てている場合に残業を免除する制度です。育児・介護休業法で定められており、従業員からの請求があった場合は原則として、所定労働時間を越えて働かせることができません。

派遣や契約社員、パート雇用でも適用されます。ただし入社1年未満だったり1週間の所定労働日数が2日以下だったりする場合、さらに制度を利用できないと定めた労使協定がある場合は適用できません。あらかじめ企業に確認してみましょう。

在宅勤務制度

在宅勤務制度とは、自宅にいながら仕事をしたり、家でできる仕事をすべて在宅で行ったりする勤務形態です。リモートワークやテレワークといわれ、新型コロナウイルス感染症の流行とともに注目されるようになりました。近年ではフルリモートワークの会社員も増え、今後ますます拡大が期待される働き方のひとつです。

在宅勤務制度は育児中の女性にとっても魅力的です。出勤時間が削減され、家事や育児にあてられる時間が増えます。職種や仕事内容によって制限があるものの、在宅勤務制度の活用を視野に入れるのも一手です。

国・自治体・民間が提供する支援サービス

国や自治体によって、地域でも育児を支援しています。地域の育児支援に関わる情報の提供や紹介を行うのが、利用者支援専門員(子育てコンシェルジュ)です。各地域に設置された子育て支援拠点や行政窓口で対応しているので、相談してみてください。以下は行政支援の主な事例です。

保育所・幼稚園

地域の保育所や幼稚園は、働く女性の強い味方でしょう。保育所では子どもを0歳から預けることが可能です。夕方までの時間保育を行うほか、延長保育に対応した保育所もあります。幼稚園では3歳からの子どもに対応。昼過ぎごろまで教育時間を提供し、園によっては午後や土曜日、夏休みなどの長期休業中も預かり保育を実施しています。

保育所と幼稚園では支援範囲が異なります。仕事や介護などで家庭以外での保育の必要がある場合は、保育時間が長く預かり年齢も幅広い保育所の利用がおすすめです。

認定こども園

認定こども園とは、幼稚園と保育所の機能をあわせもった子育て支援施設です。2006年から設置がスタートし、都道府県知事が条例に基づいて認定します。小学校就学前の幅広い年齢の子どもに保育・教育活動を行います。

保育所や幼稚園では保護者の就労状況によって受付が異なりますが、認定こども園に制限はありません。保護者の就労状況が変わっても、子どもは通い慣れた園を引き続き利用できます。夕方までの延長保育を行っているところもあり、働く女性を支える有効な施設です。

地域型保育

地域型保育とは、地域におけるさまざまな保育のニーズに対応し、待機児童を解消することを目的に行われる保育事業です。保育所より少人数単位で、0歳から2歳の乳幼児を預かります。児童福祉法のもと、市町村による認可事業として多様な施設や事業のなかから利用者が選択できる仕組みになっているのが特徴です。地域型保育には以下の4つのタイプがあります。

家庭的保育(保育ママ)
小規模保育
事業所内保育
居宅訪問型保育

少人数によるきめ細やかな保育が行われるので安心です。会社内や自宅での保育にも対応しており、生活スタイルに寄り添った幅広い保育制度といえるでしょう。

ファミリーサポートセンター

地域において、育児や介護の援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児・介護支援を行って助け合う組合組織を運営するのがファミリーサポートセンターです。援助を行う会員を対象に、育児支援のための知識・技術を身につける研修会を実施しているので安心して子どもを預けることができます。

対象は乳幼児や小学生などの児童を持つ育児中の労働者です。子どもの預かりやお迎えを依頼できます。

家事代行サービスやベビーシッター

民間でも家事や育児をサポートするサービスが展開されています。たとえば部屋の掃除や洗濯などは家事代行サービスに依頼したり、ベビーシッターを活用することも方法のひとつです。

1人ですべてをこなそうとすると大きなストレスや疲労がかかります。便利なサービスを利用して、子どもとの時間や自分のストレス解消のために有効活用してください。

育児と仕事を両立できる企業を選ぶ

育児と仕事を両立できる環境を選ぶのも選択肢のひとつです。働き方やワーク・ライフ・バランスに配慮して、国から認定を受けた企業が多くあります。国が行う認定制度をご紹介しましょう。

くるみん認定企業

子育て支援に特化した企業に対し、厚生労働大臣が行うくるみん認定。育児休業のとりやすさをはじめ、認定基準をクリアするべく企業がそれぞれの子育て支援対策を打ち出しています。

くるみん認定は実際の計画と目標達成に基づいているので、信頼度が高い指標です。育児期間中や育児を終えた従業員の前例があるので、安心して働けます。就職や転職活動の際にはチェックしてみてください。

健康経営推進企業

企業が経営理念に基づいて従業員の健康保持・増進に取り組むことで、業績や企業価値の向上を目指す健康経営。健康診断や健康相談の実施といった身体的な健康促進事業はもちろん、スキルアップ研修やワーク・ライフ・バランスを意識した働き方改革など精神的健康を支える取り組みを展開している企業もあります。

育児中の女性をサポートするのも、健康経営の取り組みのひとつです。フレックスタイム制度や短時間正社員制度など国から義務付けられていない制度も積極的に導入したり、産休・育休取得率の向上を目指したりと育児と仕事を両立させたい女性も働きやすい環境が整えられています。企業によって取り組みが異なるので、健康経営認定マークを目印に確認してみるとよいでしょう。

家庭・地域・会社の支援を活用した育児と仕事の両立

育児と仕事の両立のためのポイントと、利用できる制度やサービスをご紹介しました。子育て世帯の増加とともに、女性の育児と仕事の両立は大きな課題となっています。

両立方法は人それぞれ。置かれている状況や目指すべきものが異なるので「こうするべき」や「こうしなければならない」といった理想の女性像にとらわれないことが大切です。今回ご紹介した両立のためのポイントや制度、サービスも参考にしながら、自分なりの育児・働き方を見つけてください。

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共働き世帯が増え、育児しながら仕事をする女性が増加しています。しかし多くの女性が出産後も働きたいという気持ちをもちながら、働けず家事に専念している現状があります。

今回は育児と仕事の両立のためのポイントと、利用できる制度やサービスをご紹介しましょう。