全米シニアオープンで怒涛の活躍を見せ、4ホールのプレーオフの末に惜しくも優勝に届かなかった藤田寛之。
3打差単独首位で迎えた最終日の10番ホール終了時点で雷雨接近のためにプレーは中断。翌日月曜日に試合の決着は持ち越されたが、試合の流れとしては、中断さえなければ藤田の優勝を見ることができたと、本人も関係者も思った。
月曜日、11番ホールから再開した最終ラウンドは晴天の元で行われ、最終ホール(72ホール目)で優勝したリチャード・ブランドがボギーを叩いた。難攻不落の18番ホールをパーで上がった藤田との一騎打ちにもつれ込み、最後には藤田を圧倒した。
月曜午前ではあったものの、試合終了時点は午後1時過ぎ。前日まで詰めかけていた大勢のギャラリーの数は5分の1ほどまで減ってはいたものの、藤田、そして優勝したブランドに大きな拍手が送られた。
試合が決まると、18番グリーンではすぐに表彰式が始まったが、藤田を追っていた日本メディアは、もちろん藤田の記者会見に向かう。会見場はクラブハウスのすぐ目の前、18番グリーンからも程近い場所ではあったが、テント内ということで表彰式の様子は見えない。スピーカーからの音だけが伝わってくる。
最近では常識となったオンラインでの記者会見でもあるため、場所は変えられない。一通りの質疑応答が終わると、USGAの職員と思しき人物は、藤田にある箱を渡した。
2位になった選手に与えられるシルバーメダルだ。ただ、手渡された藤田は、一瞬、何をもらったのかわからない。USGAの職員も恭しく手渡すのではなく、笑顔ながら
「はい、これ!」というように突然手渡された。日本人記者の質問を遮らないようにとの配慮があったようだが、あまりにも突然、手渡された箱に藤田はしばらくキョトンとした様子だった。
それでも、箱を開けてメダルを首にかけると、なんとも満足そう。
次こそ、メダルではなく、優勝トロフィーを18番グリーン上でもらってください。
フォトグラファー 田辺安啓(通称JJ)
●たなべ・やすひろ/1972年生まれ、福井県出身。ニューヨーク在住。ウェストバージニア大学卒業後、ゴルフコース、テレビ局勤務を経験し、ゴルフを専門とするフォトグラファーに転身。ツアーのみならず、コースやゴルフ業界全般に関わる取材も行なっている。
取材・写真=田辺安啓
TEXT & PHOTO Yasuhiro JJ TANABE