アニメの結末としてバッドエンドが描かれることは珍しくありませんが、なかでも多くの人に衝撃を与えるのが「全滅エンド」です。作中で活躍してきたキャラクターが、終盤に全員死亡してしまう……。そんな誰も予想できない着地点を迎えたアニメをご紹介します。



画像は、『伝説巨神イデオン』劇場版 Blu-ray(接触篇、発動篇)(flying DOG)

【画像】お色気マンガだと思ったのに! こちらが終盤で地獄絵図に変わった作品です(5枚)

子供向けの玩具販促アニメ……だよね?

 アニメの終盤には、しばしば視聴者に大きな衝撃を与える展開が待ち受けているものです。しかし大体想像できる終わり方ばかりで、「そろそろ見飽きてきた……」と感じている人も多いかもしれません。そんな人にオススメしたいのが、「主要キャラクターが全員死亡する」というトンデモ展開のある問題作です。

※この記事にはキャラの死に関する記述があります。ネタバレにご注意ください。

『伝説巨神イデオン』

 1980年に放送された『伝説巨神イデオン』は、やはり全員死亡アニメを語るうえで外せません。同作は、言わずと知れた『機動戦士ガンダム』の生みの親、富野由悠季さんが総監督を務めたロボットアニメです。当初は、低年齢層をターゲットとした玩具販売促進アニメとして企画されたそうですが、富野監督の黒い部分、いわゆる「黒富野」が発露したことで、子供向けとは思えないシリアスな雰囲気をまとっていくこととなります。

 まずこの物語は、主人公の「ユウキ・コスモ」をはじめとする地球人と、「バッフ・クラン」とよばれる異星人の抗争を描いた作品です。コスモたちは、突如目覚めた伝説の巨神「イデオン」の力を借りて異星人たちに対抗しますが、そもそも彼らの戦争は文化の違いから生じた「誤解」がきっかけでした。

 同作を代表するエピソードに、第6話「裏切りの白い旗」があります。これは戦争を終わらせるべく、主人公たちが白い旗を挙げるも、バッフ・クランで白い旗は「宣戦布告」「徹底抗戦」を意味しており、ますます戦いが加速してしまう……というエピソードでした。この回に代表されるように、同作は全編を通してすれ違いが招いた悲劇、戦争の悲惨さ、相互理解の難しさなどが盛り込まれた、ハードなストーリーです。

 そしてもうひとつ、『伝説巨神イデオン』を語るうえで欠かせない存在が「イデ」とよばれる意思を持った謎の無限エネルギーです。イデは地球人とバッフ・クランを和解させようと、幾度となく両者の命を救ってきましたが、それでも戦争をやめない双方に対し、非情な決断を下します。彼らを見限り、この宇宙をリセットしてしまうのです。主人公のコスモも地球人もバッフ・クランの人びとも四散し、争いの概念がない赤ちゃんだけを生かして物語は幕を閉じました。

『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』

 庵野秀明監督が手がけた『新世紀エヴァンゲリオン』もまた、非常に有名な「全員死亡エンド」の作品でしょう。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』としてリブートされた作品はマイルドな内容になっていますが、1990年代に制作されたオリジナル版は衝撃的な結末を迎えていました。特に伝説として語り継がれているのが、「夏エヴァ」こと『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』のラストです。

 同作はTVアニメシリーズの続編にして完結作にあたり、アニメ史でも稀に見るほどハードで難解なストーリーが描かれています。そのあらすじをひと言でまとめるのは非常に難しいのですが、大まかな流れとしては、ゼーレと敵対したNERVが壊滅的な被害を受けた後、全世界を巻き込んで「サードインパクト」が起きる……というものでした。

 NERV本部に戦略自衛隊が乗り込んでくる様子はまさに虐殺です。戦闘員でもないNERV職員たちがつぎつぎ銃で撃たれていき、「葛城ミサト」も混乱のなかで死亡します。その一方でエヴァ量産機との戦いに挑んだ「アスカ」は、全身を串刺しにされてしまうのでした。

 さらに後半では、サードインパクトの発生によって世界中の人間が「L.C.L.」と呼ばれる液体と化して溶け合っていきます。TVアニメシリーズで親しんできたキャラクターが、「パシャッ」という擬音とともに次々と液体化していくため、その描写がトラウマになったという人も多いのではないでしょうか。

 最終的な結末についての解釈は分かれるものの、全人類規模の「全滅エンド」として、アニメの歴史に大きな爪痕を残しています。



画像は『バビロン』キービジュアル (C)野﨑まど・講談社/ツインエンジン

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「読む劇薬」と呼ばれた衝撃作の結末とは

『バビロン』

 これまで紹介してきた作品と少し毛色が違いますが、令和アニメのなかにも主人公サイドが全員死亡するという、衝撃的な展開を迎えた作品がありました。それが、2019年に放送された『バビロン』です。

 この作品は野崎まど(崎の字は立つ崎)先生の同名小説が原作で、「読む劇薬」と呼ばれるほど過激な内容で知られています。物語の主人公は、東京地検特捜部検事の「正崎善(せいざき ぜん)」です。ある捜査資料のなかから見つけた奇妙な文書をきっかけに、他人を自殺へと追い込む謎の女性と出会い、東京都西部に新たに誕生した「新域」をめぐる巨大な陰謀に巻き込まれていく……というストーリーです。

 同作の見どころといえば、チート級の特殊能力が登場すると同時に、架空の近日本未来を舞台に、政治や財界の欺瞞を描いた社会派SF作品でもあることでしょう。おそらく多くの視聴者は、正崎が現代社会の負の側面を凝縮したような「新域」に、風穴を空けてくれることを期待して物語を見守っていたのではないでしょうか。

 しかし物語が進むにつれて、正崎の前にはどんどんと暗い雲が立ち込めていくようになります。検察官を目指していた若い部下や、ともに事件を追っていた検察事務官、さらには捜査に協力してくれた警察官などが、ひとり残らず犠牲となってしまうのです。

 そして最終回では、ついに正崎が黒幕と直接対決を繰り広げるものの、その結末はあまりにも後味の悪いものでした。実際、視聴者からは「こんなにも後味の悪いアニメは久しぶり」「ちょっと覚悟がいる類いの話かな」「万人にはオススメできない」といった声が数多く寄せられています。

 いずれも大団円で終わらない結末を迎えたアニメですが、だからこそ初めて見たときの衝撃は唯一無二といえるでしょう。はたして「名作」なのか「迷作」なのか……。アニメ史に残る問題作を、あなたはどう評価しますか?